ICUで使用可能な人工赤血球およびME技術の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200501141A
報告書区分
総括
研究課題名
ICUで使用可能な人工赤血球およびME技術の開発に関する研究
課題番号
H17-医薬-050
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
武田 純三(慶應義塾大学医学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
人工赤血球の臨床応用を考えた場合には、集中治療室(ICU)において合併症を併発した状態においての使用が多く想定される。本研究ではICU管理と密接な関係のある合併症や管理方法に人工赤血球投与が及ぼす影響について検討した。
研究方法
本研究ではICU管理と密接な関係にある合併症や管理方法の中から、人工呼吸器管理、出血性ショック、膜型人工肺回路による管理における人工赤血球、Hb小胞体の使用を想定し、それぞれ動物モデルを用いた検討を行った。また、血液中の人工赤血球を血漿から分離し、血漿を用いた検査の可否を検討した。
結果と考察
①人工呼吸器管理に伴い人工換気それ自体が肺障害を惹起する可能性が指摘されている(ventilator induced lung injury: VILI)。本研究ではウサギにおけるVILIモデルに人工赤血球、Hb小胞体の投与を行った。検討した範囲ではHb小胞体投与のVILIへの影響は明らかではなかった。
②ICU管理を要する症例は様々な合併症を併発している場合が多く、包括的概念の一つとしてSystemic Inflammatory Response Syndrome(SIRS)がある。出血ショックはSIRSを惹起する代表的な病因の一つである。本研究では、その簡便な評価方法としてラット腸間膜リンパ節の採取および培養方法を検討した。本研究の条件では出血ショック蘇生後のラット腸間膜リンパ節の培養はHb小胞体群、5%アルブミン群ともに陰性であった。今後培養方法と侵襲のレベルを検討する。
③膜型人工肺回路へのHb小胞体の応用を検討するため、幼若ビーグル犬を用いた人工心肺モデルの確立を試みた。全身麻酔および人工心肺装着に関して技術的に習熟する必要があった。人工心肺の還流は可能であったが還流条件の設定をさらに変更する必要があった。
④Hb小胞体(粒径250 nm)は微粒子であるため、血球の遠心分離条件で沈降させるのは実用上困難であり、Hb小胞体の血漿あるいは血清へ浮遊は検査の障害となる。本研究では高分子凝集剤として高分子量デキストランを収容した採血管の使用により、Hb小胞体投与後の採血液でも従来と同じ遠心分離法により透明な血清や血漿が得られ、通常実施される血液生化学検査項目の大部分に適合した。また沈降占有容積率からHb濃度の換算が可能となった。
結論
更なる検討を要するが、本研究よりICUにおける人工赤血球の臨床使用への可能性が期待される。

公開日・更新日

公開日
2009-04-23
更新日
-