地衛研の連携による危機的健康被害の予知及び対応システムに関する研究

文献情報

文献番号
199700126A
報告書区分
総括
研究課題名
地衛研の連携による危機的健康被害の予知及び対応システムに関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
江部 高廣(大阪府立公衆衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
O-157汚染などの重大な健康被害を及ぼす事件、また重油流出事故などの生活環境をおびやかす事件は、いずれも公衆衛生上の危機であり、住民に大きな不安感を与えるものである。
地衛研は地域保健の科学的・技術的中核機関として原因究明や疫学解析により迅速な解決を行うことはもとより、事件の発生を未然に防止しなければならない。
本研究は、地衛研の専門力を集結し過去の経験を活かして、今後起こりうる健康被害の予知を試みるとともに発生した時の対応システムの検討を行うものである。
研究方法
1.健康被害事例の収集:73の全国地方衛生研究所に対し、アンケート形式により昭和40年以降に経験した健康被害事例の調査を行った。記述項目は、健康被害の件名、発生時期、地域、患者数、死亡者数、原因及び被害に関する特筆事項とした。
2.健康被害データベース資料の作成:収集した事例の中から特に重要と思われるものを選出し、背景、地研の対応、行政の対応、原因究明と診断、地研の連携、国との連携、教訓、現状、今後の問題点等について記述した報告書を作成し、共有化データベースのソースとする。
3.情報基盤の整備:全国の各ブロック代表として本研究に参加協力する6地衛研に対し、NTTがプロバイダを行うOCNを導入し、インターネットのメールやデータ送信機能を活用して緊急時の対応を効率化させる。
また、厚生省、国立感染症研究所及び国立医薬品食品衛生研究所との情報連携を密にする。
4.リスク評価対象の抽出:衣・食・住レベルでのリスクの高い病原体汚染物質等を検索し、今後起こり得る可能性も含め量と質の両面からそのリスクを評価し重大性のランク付け検討を行った。
結果と考察
1.健康被害事例の収集:全国地衛研から約640件の事例回答があった。これらの事例を分析すると、被害や汚染域が全国的な大きさであったため、同じ事例の回答が複数地衛研から送られている広域的事例(一覧表参照)が多数みられる一方、その地域にのみ発生した事例も数多くみられた。これらの事例についてとりまとめを行った。
2.健康被害データベース資料の作成:収集した事例約640件の中から特に重要と思われるもの約120件を選出し、その事例の背景、地研の対応、行政の対応、原因究明と診断、地研の連携、国との連携、教訓、現状、今後の問題点等、計18項目についてとりまとめを行った。これらは、最終的には各種危機管理マニュアル等と合わせてデータベース化し、全国地方衛生研究所、厚生省、国立試験研究機関および関連行政部局や保健所等が活用できるイントラネット様システムに発展させる予定である。
3.情報基盤の整備:研究協力者の6地衛研にOCNを導入し、情報連携の基盤を整備した。また、全国的な連携を図るための準備として、全国地方衛生研究所のインターネット導入状況を調査した。その結果、所としての情報交換が可能な機関は、73機関中25機関で約34%と低率であった。
4.リスク評価対象の検討:化学物質、微生物及びその他の3種に分けて以下の対象を一時的に選出した。
1)化学物質:ダイオキシン類、PCB、内分泌かく乱物質(EDS)、農薬、防虫剤、殺虫剤、プラスチック可塑剤、ホルマリン、パラゾール、トリハロメタン、家庭用品、スプレー(テフロン)、アスベスト、アフラトキシン、マリントキシン、オカダ酸、フモニシン、重金属類、重油など
2)微生物:インフルエンザ、エイズ、SRSV、出血熱、プリオン病、コレラ、結核、ペスト、STEC、サルモネラ、ボツリヌス、クリプトスポリジウム、クモ など
3)その他:放射能、電磁波、低周波、花粉、事故・テロ(毒物)サリン・タブン・VXなど リスク評価の方法としては、化学物質については、毒力と侵淫度(使用量、生産量、輸入量)及び急性毒性、慢性毒性(ADI)を基に、微生物については、感染力、重篤度、侵淫度を指標として考え、極めて重要、相当重要、重要の3段階に分類する。
なお、発ガン物質は別扱いとして検討する。
健康被害広域的事例: 1. バリ島コレラ 2. O-157以外腸管出血性大腸菌 O26 3. レジオネラ菌(24時間風呂 4. エコーウイルス 30 無菌性髄膜炎 5. ムンプスウイルス MMRワクチン 6. 風 疹 1975年大流行 7 インフルエンザ 8. 手足口病 9. コクサッキーウイルス A24 10. C群ロタウイルス 11. ゴルフ場農薬 12. ダイオキシン 13. 有機スズ 14. 魚貝中のクロルデン 15. チリ産ぶどうシアン 16. CNP 17. オーストラリア産牛肉の農薬 18. 防カビ剤OPP 19. チェルノブイリ原発
結論

公開日・更新日

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