輸血用血液及び細胞療法の安全性に関する研究

文献情報

文献番号
200501123A
報告書区分
総括
研究課題名
輸血用血液及び細胞療法の安全性に関する研究
課題番号
H17-医薬-064
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
星 順隆(東京慈恵会医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 藤井 康彦(山口大学医学部 講師)
  • 浅井 隆善(静岡赤十字血液センター 所長)
  • 佐竹 正博(東京都赤十字血液センター 副所長)
  • 塩原 信太郎(金沢大学医学部 助教授)
  • 甲斐 俊朗(兵庫医科大学 教授)
  • 前川 平(京都大学医学部 教授)
  • 浜口 功(国立感染症研究所 血液安全性研究部 室長)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
以下の3つの柱について調査し、安全な輸血に寄与する対策を提言する。 柱1:重篤な輸血副作用の実態を正確に把握する。細菌感染症、TRALI(輸血関連急性肺障害)、アナフィラキシー反応などを前方視的に調査する。柱2:アフェレシス、ドナーの副作用調査を行い安全性を確認するとともに管理基準を策定する。柱3:造血幹細胞数の品質評価の標準的方法を確立する。
研究方法
柱1:輸血副作用監視指定施設による正確な調査体制を整備し、細菌感染症(TRALIを含む)等の調査を実施した。 調査は原因製剤の回収基準に合致する重症輸血副作用の製剤番号の登録と確定診断の報告を前方視的に行なった。柱2:アフェレーシスドナーの安全管理に関するアンケート調査を行なった。柱3:造血幹細胞に特異的に発現する分子を同定し、遺伝子発現をもとに定量化を試みた。
結果と考察
柱1:副作用調査体制に必要な要件、急性輸血副作用対応手順書を作成し、参加施設に整備を促した。輸血副作用発生時に輸血専門医によるコンサルテーションの実施、原因製剤の回収方法を決定し周知した。細菌感染症(TRALIを含む)等の前方視的調査で、19症例に発生した22副作用と原因となった26製剤が登録された。柱2:造血細胞ドナーの副作用調査を全国規模で行い、ドナーアフェレーシスの登録、副作用把握のための定点モニタリングおよびドナーへの説明と同意は患者主治医以外の医師が関与する必要があることを明らかにした。柱3: HE4を用いた臍帯血中の造血幹細胞の定量で幹細胞含有率が極めて少ないサンプルにおいても、鋭敏に定量できることを示し、標準的品質評価を可能にした。
結論
本研究により、輸血部門で取り扱う3種の異なった業務に関して、安全性の確保を確立するために必要な課題を抽出することができた。すなわち、輸血医療においては、副作用を正確に把握するための施設整備と人材育成が必要であることが明らかになった。本研究で構築された、副作用調査体制は、今後の輸血医療の変遷に伴い変化する、輸血医療のリスク評価に貢献するものと思われる。
細胞治療では、ドナーの安全を保証するための、体制整備とともに倫理規定の早急な策定が必要なことが明確となった。造血細胞の安全性の保証には、ひと(専門医)、もの(施設および指針)、こころ(ドナー、患者の安心感)が大切である。実施体制の標準化と倫理指針の整備が求められる。

公開日・更新日

公開日
2009-04-20
更新日
-