血液脳関門破綻に基づく医薬品副作用の予測系の確立に関する研究

文献情報

文献番号
200501119A
報告書区分
総括
研究課題名
血液脳関門破綻に基づく医薬品副作用の予測系の確立に関する研究
課題番号
H16-医薬-025
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
大野 泰雄(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 片岡 泰文(福岡大学薬学部 医療薬学)
  • 小泉 修一(国立医薬品食品衛生研究所 薬理部)
  • 楠原 洋之(東京大学大学院薬学系研究科 分子薬物動態学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
7,520,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
病態時のBBB機能に注目し、薬物の中枢性有害作用発現予測システム及び中枢性副作用を回避するシステムを構築する。
研究方法
血液脳関門再構成系in vitro のBBBモデル及び一過性脳虚血モデル、インフルエンザ脳症マウス、ABCトランスポーターBCRP発現系を用いたin vitro輸送モデル、及びBCRPノックアウト動物を用いて検討した。
結果と考察
脳微小梗塞周囲部―血液脳関門モデルにHypoxia/reoxygenation負荷後、再構成7日目においてrhodamine 123細胞内取込量は有意に増加し、P-gp蛋白量は減少し、また、CsAによりBBB透過性とrhodamine 123細胞内取込量が著明に増加した。38.5-41℃での培養で温度依存的にNa-FとEvans blue albumin透過係数は亢進した。本結果は、薬物による中枢性有害作用の危険因子の探索とその回避対策に関する実験証拠を提供するものとして興味深い。
培養血管周皮細胞を各種ATPアナログで刺激すると、P2Y2受容体を介して顕著な[Ca2+]i上昇を起こした。血管周皮細胞をATPで刺激すると、P2Y2受容体依存的に細胞の収縮、bleb形成、及びMMP9産生を起こした。インフルエンザウィルス感染マウスでは感染後3日目から脳組織に顕著な毛細血管の肥大が観察され、血管周囲のアストロサイト肥厚と血管周皮細胞消失が観察された。外傷、炎症、虚血時に放出されるATPは血管周皮細胞のP2Y2受容体を活性化し、血管周皮細胞の機能低下さらにはBBB障害が引き起こす可能性が示唆された。
発癌物質であるPhIPの脳内濃度は、BCRPノックアウトマウスで増加し、脳分布容積は約3倍に増加した。同様にBCRP基質であるpitavastatinとニューキノロン系抗生物質ではBCRPノックアウトの影響は見られなかった。
結論
in vitro BBB病態モデルは中枢性有害作用の予測に有用である。インフルエンザ脳症マウスの脳では毛細血管及びそのnicheの病変が脳炎・脳症に重要な役割を果たす可能性が示唆された。病態時のBBB機能を考える際に血管周皮細胞のP2Y2受容体の制御が重要である可能性が示唆された。BBBにおける排出輸送系として、BCRPが異物排泄に働くことを明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2006-06-19
更新日
-