タンパク質製剤および非ウイルス性遺伝子導入製剤の分子運動性に基づく安定性試験法の確立

文献情報

文献番号
200501113A
報告書区分
総括
研究課題名
タンパク質製剤および非ウイルス性遺伝子導入製剤の分子運動性に基づく安定性試験法の確立
課題番号
H16-医薬-011
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
吉岡 澄江(国立医薬品食品衛生研究所 薬品部第二室)
研究分担者(所属機関)
  • 米谷芳枝(星薬科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
7,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
非ウイルス性遺伝子導入製剤としてのリポソーム製剤、及びタンパク質を対象とした凍結乾燥製剤について、分子レベルの運動性を測定し、それに基づいて製剤の安定性を効率的に予測する方法を確立する。同時に、分子運動性の制御による製剤の安定化法を開発する。
研究方法
タンパク質凍結乾燥製剤の安定性を決定する要因としての分子運動性の重要度を活性化エネルギーの重要度と比較し、安定性に対するそれぞれの相対的寄与率を定量的に解析した。また、ゲルのナノキャビティ中にタンパク質を封じ込めて分子運動性を抑制し、タンパク質の保存安定性を確保する技術を開発することを目指して、β-ガラクトシダーゼを内包するポリビニルアルコール(PVA)ゲルについて保存安定性を検討した。さらに、安定性の高いDNA導入製剤の開発を目指して、凍結乾燥再水和法によって調製したDNA封入リポソームについて、リポソームの組成や凍結時に添加する糖の種類がリポソームへの遺伝子封入率等に及ぼす影響を検討した。
結果と考察
インスリン凍結乾燥製剤の安定性は、トレハロースあるいはポリアミノ酸を添加剤として加えることによって著しく改善された。これらの添加剤は製剤マトリックスの分子運動性は高めるが、インスリン分子のβ緩和に相当する分子運動を抑制するため、インスリン分子の運動が分解速度の律速段階になり、分解速度が低下することが明らかになった。また、β-ガラクトシダーゼはPVAゲルのナノキャビティの中に封じ込めることによって、保存時の失活を抑制できることが明らかになった。さらに、添加剤としてisomaltotriose やisomaltoseを用いて調製したDNA封入リポソームは、sucroseと同様の遺伝子導入活性を有することが明らかとなった。
結論
インスリン凍結乾燥製剤の安定性は、インスリン分子のβ緩和に相当する運動を抑制し、β緩和が分解速度の律速段階となるような添加剤を加えることによって、著しく改善されることが明らかになった。また、β-ガラクトシダーゼはPVAゲルに封じ込めることによって安定化できることが明らかになった。さらに、凍結乾燥再水和調製法によるDNA導入製剤は、凍結時にisomaltotriose やisomaltoseを添加することによって安定性の高いリポソームが調製できることが明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2006-04-24
更新日
-