発酵性食品、特に味噌の生体調節機能に与える影響に関する研究

文献情報

文献番号
199700123A
報告書区分
総括
研究課題名
発酵性食品、特に味噌の生体調節機能に与える影響に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 明弘(広島大学原爆放射能医学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 藤本成明(広島大学原爆放射能医学研究所)
  • 丸山聡(広島大学原爆放射能医学研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成7(1995)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
味噌及びその関連物質は日本人の食生活の中で大切な役割を果たし、諸外国でも関心を集めつつある。とりわけ、日本食が健康に適した食事であることが疫学的にも裏付けられつつあることが原因である。本研究では、これら味噌関連の食品のがんの化学予防への効果について実験的研究を行う。
研究方法
ラット:7週齢の雌SDラットを用いて、これにN-methyl-N-nitrosourea(MNU)の50mg/kg体重を1回静注した。これらの動物に対し、以下の検体を含んだ餌を全実験期間経口投与した。 実験群は1)10%味噌食,、2)2%大豆、3)10%大豆、4)10mg/kgバイオカニンA、5)50mg/kgバイオカニンAの5群とした。これらの飼料を18週間投与した後、全動物を屠殺して、乳腺腫瘍の発生率、発生個数、サイズなどを評価した。
味噌餌:オリエンタル社製のMF基礎飼料に10%の乾燥赤味噌(中央味噌研究所提供)を加え、固型飼料としてマウスに自由摂取させた。なお、飲料水は水道水を自由摂取させた。
結果と考察
1.体重変化:実験開始7週齢での平均体重は170-180gであり、9週齢で200gに達し、15週齢で250g、実験終了時には300gに達した。対照を含め、各検体間での差異は認められなかった。但し、バイオカニンA 50mgで軽度の体重増加抑制を認めたが、有意差は示さなかった。又、肝、子宮、卵巣、副腎などの臓器重量も対照群との間に差を示さなかった。
2. 乳腺腫瘍発生率:乳腺腫瘍の発生率(%)、平均腫瘍数は、対照群で80、2.2、 2%大豆で72、1.6、10%大豆で61、1.1、10%味噌で60、1.2、バイオカニンA 10mgで58、0.7、バイオカニンA 50mgで32、0.5、とバイオカニンAで最も強い抑制効果を認め、対照群との間に有意差を認めた。
味噌が原爆被爆者の語疾患に好影響をもたらすことは、長崎のある医師の体験記録、及びそれに基づく旧ソ連でのチェルノブイリ原子炉爆発事故で大量の味噌が用いられたことで知られている。但し、科学的実証は本研究まで一報も成されていなかった。我々の研究グループは昭和63年頃より本研究の着手にかかり、現在の成果をみるに至っている。昨年の研究報告では、急性放射線障害に対する味噌の効果を記した成果である。今年度はラット乳腺腫瘍を実験系として、これに味噌、大豆及びこれらに含有されるフラボン体の一つバイオカニンAについて、発がんに対する効果を検討した。その結果、いずれも種々の程度に乳腺腫瘍の発生を抑制し、がんの化学予防として有用であることが明らかとなった。
結論
味噌及び大豆は平均的日本人が日常食している食物である。これらの食品は、決して毒性を示さないことより千年以上も食品として用いられて来た経緯がある。その生物効果が現在種々の形で明らかにされつつある。更に広範な領域での研究成果が期待される。

公開日・更新日

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