抗毒素製剤の効率的製造方法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200501106A
報告書区分
総括
研究課題名
抗毒素製剤の効率的製造方法の開発に関する研究
課題番号
H16-医薬-075
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 元秀(国立感染症研究所細菌第二部)
研究分担者(所属機関)
  • 佐々木次雄(国立感染症研究所細菌第二部)
  • 岩城正昭(国立感染症研究所細菌第二部)
  • 野崎周英(財)化学及び血清療法研究所 第一研究部)
  • 黒澤良和(藤田保健衛生大学総合医科学研究所免疫学部門)
  • 向本雅郁(大阪府立大学大学院生命環境科学研究科獣医学専攻)
  • 千葉 丈(東京理科大学 基礎工学部 基礎工学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
12,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現行のウマ抗毒素抗体であるボツリヌスウマ抗毒素および人血液由来の破傷風免疫グロブリン製剤に替わる安全で高い中和力価を持つヒト型抗体の開発を目指し、短期間で大量の製剤を製造するための基礎的研究を行うものである。
研究方法
ヒト化マウスモノクローナル抗体やハイブリドーマ法により作製された完全ヒトモノクローナル抗体などと、染色体改変(ヒト抗体産生)マウスを用いて作製されたポリクローナル抗体の有効性を毒素中和能試験により高い力価を有する抗体組み合わせの検討を行った。また、抗毒素製剤の品質管理に用いるフロキュラシオン法は、従来の抗原抗体複合体の形成を肉眼観察から機器利用(レーザー粒径測定型デバイス)による自動化を検討した。
結果と考察
ボツリヌス毒素対する人型抗体では、ヒト化マウスモノクローナル抗体法で得られた抗Eおよび抗A型キメラ抗体のH鎖とL鎖のシャッフル発現実験を行った結果、組み合わせにより結合活性、中和活性が認められた。また、A型ボツリヌストキソイド免疫人リンパ球から作製した抗体ライブラリーからボツリヌス毒素に対する中和活性を示す2種の抗体を得たが、ヒトIgGに変換・混合により中和能の増強は認められたが、完全中和は確認されなかった。
破傷風毒素に対する完全型ヒト抗体産生トランスクロモマウスから得られたヒトモノクローナル抗体も単独よりも数種の組み合わせにより中和活性の上昇が認められた。
 フロキュラシオン法による抗原・抗体の定量法の改良は、レーザー粒径測定型デバイスを用いる事により、(1)高い客観性、(2)測定時間の短縮、(3)測定結果の数値化・統計処理による高い定量性を達成することができた。今後、製造・品質管理の現場での応用・活用が期待される。
結論
ボツリヌス毒素はバイオテロに使用されることも警告されており、緊急時に適当な予防策はない。そのため、毒素を中和する抗毒素抗体による治療は不可欠と考える。本基礎的研究の成果を基盤にして、短期間で大量の製剤を恒常的に製造するための検討がさらに必要である。

公開日・更新日

公開日
2007-04-09
更新日
-

文献情報

文献番号
200501106B
報告書区分
総合
研究課題名
抗毒素製剤の効率的製造方法の開発に関する研究
課題番号
H16-医薬-075
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 元秀(国立感染症研究所細菌第二部)
研究分担者(所属機関)
  • 佐々木次雄(国立感染症研究所細菌第二部)
  • 岩城正昭(国立感染症研究所細菌第二部)
  • 野崎周英((財)化学及び血清療法研究所 第一研究部)
  • 黒澤良和(藤田保健衛生大学総合医科学研究所免疫学部門)
  • 向本雅郁(大阪府立大学大学院生命環境科学研究科獣医学専攻)
  • 千葉 丈(東京理科大学 基礎工学部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現行のウマ抗毒素製剤であるボツリヌスウマ抗毒素および人血液由来の破傷風免疫グロブリン製剤に替わる安全で高い中和力価を持つヒト型抗体の開発を目指し、短期間で大量の製剤を安定して製造するための基礎的研究を行うものである。さらに、国際的に認可されているこの種の製剤の安全性確保についても検証した。
研究方法
ヒト化マウスモノクローナル抗体やハイブリドーマ法により作製された完全ヒトモノクローナル抗体と染色体改変(ヒト抗体産生)マウスを用いて作製されたポリクローナル抗体について、組み合わせによる高力価標品作製のため毒素中和試験で試験した。またボツリヌス菌、破傷風菌は有芽胞菌であるために、医薬品製造に関しては芽胞形成菌取扱い施設に対する規制があるため国内外の規制要件を整理した
結果と考察
トキソイド免疫で13種の抗A型神経毒素中和マウス抗体と10種の抗E型完全中和抗体を得た。抗A型抗体4種と抗E型抗体1種のV領域遺伝子を単離し、キメラ抗体を作製した。さらにH鎖L鎖シャッフリング発現実験の結果から4種H鎖と1L鎖を持ったミックスキメラ抗体が1個の細胞で産生可能であり、中和力価の向上と開発及び製造時のコスト低減に期待される。作製した抗体ライブラリーからボツリヌス毒素に対する中和活性を示す2種の抗体を得た。さらに、ヒトIgGに変換・混合により中和能の増強は認められたが、完全中和は確認されなかった。トランスクロモマウスの系では、得られたヒトモノクローナル抗体は破傷風毒素に対する中和活性が確認された。さらに、中和活性を持たない抗モノクローナル抗体の混合により中和活性の上昇が顕著であった。
有芽胞病原菌取り扱い施設としては、構造壁で仕切った専用施設にする必要はなく、他の製剤製造施設内にアイソレータやP3施設を設置することで十分であり、現行省令GMP規定から少なくとも有芽胞病原菌取り扱い施設は、規制対象から外すことを提案する。
結論
ボツリヌス毒素はバイオテロに使用されることも警告されており、緊急時に適当な予防策はなく、治療には毒素を中和する抗毒素抗体による治療は不可欠と考える。本基礎的研究の成果を基盤に短期間で大量の抗毒素製剤を恒常的に製造するために、さらなる検討が必要である。

公開日・更新日

公開日
2007-04-09
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200501106C

成果

専門的・学術的観点からの成果
遺伝子組み換え技術を利用してボツリヌスA型およびE型毒素に対するヒト化抗体をマウスハイブリドーマV遺伝子とヒト抗体産生細胞C遺伝子を結合して両毒素に対して中和能を有する抗体を作製した。現行ボツリヌス治療に用いられるウマ抗毒素に替わる製剤の開発の基盤を樹立した。
臨床的観点からの成果
ウマ抗毒素製剤はウマ免疫血清の入手(菌培養、トキソイド、ウマ免疫、血清精製)に時間を要するし、動物血清中の未知ウイルス制御等の問題があった。大量にヒト化抗体が安全かつ持続的に製造できることは、ボツリヌス、ジフテリア、破傷風患者の治療に大きく貢献する。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
従来ガスえそウマ抗毒素製剤は液状品が製造されていたが、生物学的製剤基準に掲載されていた乾燥製剤は、実製造されていなかった。研究班での議論、製造所での努力および基準変更を含めて有効期間が10年間の凍結製剤の製造を可能とした。ボツリヌスウマ抗毒素の製造量は限度があるために、海外で製造所からウマ血清を輸入して国内製造所GMP施設で最終製剤化し、国内基準にあわせた品質管理試験に合格したため、緊急時の対応策が検証された。
その他のインパクト
遺伝子組み換え技術を利用してボツリヌスA型およびE型毒素に対するヒト化抗体をマウスハイブリドーマV遺伝子とヒト抗体産生細胞C遺伝子を結合して両毒素に対して中和能を有する抗体を作製した。現行ボツリヌス治療に用いられるウマ抗毒素に替わる製剤の開発の基盤を樹立した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
特許出願 整理番号 JP483、国際特許分類C12N 15/13  A61K 39/395、    発明の名称 組換え抗ボツリヌス神経毒素抗体
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
fukuFukuda T., Iwaki M, Takahashi M et al.
Standardization of Regional Reference for Mamushi(Gloydius blomhoffii) Antivenom in Japan, Korea, and China.
Jpn.J.Infect Dis. , 59 , 20-24  (2006)

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-