文献情報
文献番号
200501102A
報告書区分
総括
研究課題名
救急・災害医療に利用可能な人工赤血球の開発に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H16-医薬-069
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
四津 良平(慶應義塾大学医学部外科)
研究分担者(所属機関)
- 外 須美夫(北里大学医学部麻酔科)
- 坂本 篤裕(日本医科大学麻酔学教室)
- 相川 直樹(慶應義塾大学医学部救急部)
- 堀之内 宏久(慶應義塾大学医学部外科)
- 小松 晃之(早稲田大学理工学総合研究センター)
- 大鈴 文孝(防衛医科大学校第一内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
救急・災害医療において輸血は必要不可欠な治療手段であり、患者の予後を決定する場合が多いので、長期保存が可能で、時と場所を選ばずに使用できる人工赤血球の実現は、次世代医療に重要な意義を持つ。平成17年度は前年度に引き続き救急・災害医療で想定される問題について、人工赤血球(ヘモグロビン小胞体: HbV、アルブミン-ヘム)の有用性を検討した。
研究方法
体外循環補填液としてのHbV の有用性をビーグル幼犬モデルで検討した。出血性ショック蘇生液としての有用性は、腹腔内出血合併ラットモデル、家兎モデルにより検討した。虚血性疾患に対する効果は、心筋・脳の虚血-再灌流モデルにより検討した。投与HbVを循環血液中から分離除去する方法を遠心分離法と限外濾過法により検討した。ハムスター皮下微小循環観測モデル、有茎皮弁モデルを用い、虚血領域の酸素分圧改善に必要なHbVの最適物性値を検討した。HbVの機能劣化を遅延するL-Tyr/metHb添加系の反応機序を検討した。アルブミン-ヘムをPEG修飾し、溶液物性値、機能半減期を検討した。
結果と考察
体外循環回路補填液としてHbVを使用した場合の循環動態は、輸血と同等で、脳血流も維持されたと考えられた。腹腔内出血合併モデルでは、循環動態、サイトカイン産生は対照群と有意差を認めなかった。多臓器酸素分圧と血管透過性、血行動態から、HbVの蘇生効果と臓器機能の保持効果を得た。虚血性疾患モデルでは、HbVの心筋保護効果を認めた。脳虚血では、梗塞巣の拡大を抑制できる投与条件が示された。投与HbVを循環血液中より分離除去する方法が開発され、適応の拡大が期待された。有茎皮弁の虚血領域の微小循環が、酸素親和度・血液粘度が共に高いHbVの投与で改善、壊死細胞数も減少し、皮弁生着の促進が期待された。更に、酸素親和度の高いHbVによる血液希釈では、皮下組織血流の保持、酸素供給の増大を認めた。HbVの機能劣化を低減するmetHb/L-Tyr共存系の反応機序を解明した。アルブミン-ヘムにマレイミド型PEG修飾を行い酸素親和度、滞留時間、膠質浸透圧、粘度が適度の値に調節できた。
結論
第一期(H15-17年度)最終年度として、臨床応用を踏まえた基礎検討が進展し、人工赤血球が救急・災害医療に利用可能であることを明示でき、当初の目標を完了させた。
公開日・更新日
公開日
2009-04-23
更新日
-