認識部位担持リポソーム・アルブミン重合体の安全性と止血効果の評価

文献情報

文献番号
200501100A
報告書区分
総括
研究課題名
認識部位担持リポソーム・アルブミン重合体の安全性と止血効果の評価
課題番号
H16-医薬-067
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
池田 康夫(慶應義塾大学医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 武岡真司(早稲田大学大学院)
  • 半田誠(慶應義塾大学医学部)
  • 後藤信哉(東海大学医学部)
  • 鈴木英紀(東京都臨床医学総合研究所)
  • 鎌田徹治(慶應義塾大学医学部)
  • 梶村眞弓(慶應義塾大学医学部)
  • 村田満(慶應義塾大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
55,661,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
血小板の機能を代替し、血小板減少時の止血治療や予防に十分な効果を発揮し得る人工産物(人工血小板/血小板代替物)として開発された人工微粒子(認識部位担持リポソーム・アルブミン重合体)の安全性と止血機能を評価する。
研究方法
①フィブリノーゲンのγ鎖C末端アミノ酸配列(HHLGGAKQAGDV: H12)を担持させたアルブミン重合体(H12-polyAlb)、②アデノシン5’-二リン酸(ADP)を内包させたリポソーム(小胞体)(H12(ADP)小胞体)、等を対象とした。 血小板凝集計やFCMによる血小板凝集、フローチェンバー等による流動条件下血小板血栓形成への影響をin vitro検討し、血小板との相互作用を電子顕微鏡により超微形態学的に解析した。人工微粒子の静脈内投与による止血効果を血小板減少ラットの出血時間を測定して解析した。また、大型動物モデルとして血小板減少ウサギの出血時間測定系を確立し、人工微粒子の止血効果を評価した。
結果と考察
H12-polyAlbの安全性と止血効果:明らかな急性毒性を示さず、血小板減少ラットの出血時間を用量依存性に短縮した。また、新たにウサギ血小板減少モデルを確立し、大型動物においてもin vivo止血効果を確認した。大きさや形状、表面処理の状態、担持分子の密度などのパラメータを用いた微粒子の最適化がさらに必要である。H12(ADP)小胞体の開発と止血効果:生理的な血小板刺激物質のADPを内包させたH12(ADP)小胞体は、自身は血小板刺激作用を持たずに、アゴニトス惹起血小板凝集の増強作用を示した。さらに、血小板減少ラットの出血時間を短縮させ、その効果はH12小胞体に比べ大幅に増強された。小胞体は血小板凝集に際し血小板間に存在し、活性化した血小板同士の相互作用を仲介することで、その止血増強作用を発揮することが示唆された。ADPなどの内包物質の選択により、止血機能を自由に修飾できる可能性が示された。
結論
人工血小板の有力な候補として、H12-polyAlbと同等の機能を有するH12(ADP)小胞体が新たに創製された。in vitroのみならずin vivoにおいても、過剰な血栓の誘発など安全性への危惧を惹起させる結果は認められなかった。多方面からの安全性評価とともに微粒子の止血機能の最適化を行い、人工血小板の実用化を目指してゆく。

公開日・更新日

公開日
2009-04-23
更新日
-

文献情報

文献番号
200501100B
報告書区分
総合
研究課題名
認識部位担持リポソーム・アルブミン重合体の安全性と止血効果の評価
課題番号
H16-医薬-067
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
池田 康夫(慶應義塾大学医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 武岡真司(早稲田大学学術院理工学部)
  • 半田誠(慶應義塾大学医学部)
  • 後藤信哉(東海大学医学部)
  • 鈴木英紀(東京都臨床医学総合研究所)
  • 鎌田徹治(慶應義塾大学医学部)
  • 梶村真弓(慶應義塾大学医学部)
  • 村田満(慶應義塾大学医学部)
  • 末松誠(慶應義塾大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
血小板の機能を代替し、血小板減少時の止血治療や予防に十分な効果を発揮し得る人工産物(人工血小板/血小板代替物)としてデザインされた人工微粒子(認識部位担持リポソーム・アルブミン重合体)の安全性と止血機能を評価し、その最適化を図る。
研究方法
人工血小板の候補として、①フィブリノーゲンのγ鎖C末端アミノ酸配列(HHLGGAKQAGDV: H12)を担持させたアルブミン重合体(H12-polyAlb)とリポソーム(小胞体)(H12小胞体)、②生理的血小板刺激物質のアデノシン5’-二リン酸(ADP)を内包させたリポソーム(H12(ADP)小胞体)、及び③GPIbα結合リポソーム・アルブミン重合体(rGPIb-小胞体・rGPIb-polyAlb)を検討した。in vitro評価系は血小板凝集計や流動条件下血小板血栓解析システムを用いた。in vivo評価系として血小板減少ラットモデル、ラット動脈血栓モデル、ウサギ血小板減少モデル、ラット腸間膜微小循環を用いた止血血栓評価システムを用いた。
結果と考察
H12-polyAlbとH12小胞体はともに、血小板減少動物の出血時間を短縮し、血小板凝集を補助できる微粒子であることを明らかにした。ポリエチレングリコール表面処理により、微粒子の生体内寿命を大幅に延長することに成功した。動物への単回投与による急性毒性は一切観察されなかった。H12(ADP)小胞体は、in vitro血小板活性化作用を持たずにアゴニスト惹起血小板凝集補助作用を示し、血小板減少ラットの出血時間を短縮させ、その効果はH12小胞体に比べ大幅に増強された。ADPなどの内包物質の選択により、止血機能を自由に操作できる可能性が示された。GPIb結合微粒子は止血部位へ特異的に集積するが明確な止血効果を示さなかった。しかし、H12結合微粒子と共存すことで、in vitro止血機能を持つことを明らかにした。
結論
人工血小板の候補微粒子(認識部位担持リポソーム・アルブミン重合体)の安全性と止血効果を検討した結果、H12-polyAlbとH12(ADP)小胞体は、急性毒性を示さず、効果的な止血作用を有することを明らかにした。開発された基盤システムや取得された基礎知識に立脚して、多方面からの安全性評価とともに微粒子の止血機能の最適化を行い、人工血小板の実用化を目指してゆく。

公開日・更新日

公開日
2009-04-23
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200501100C

成果

専門的・学術的観点からの成果
活性化血小板膜上のGPIIb/IIIa複合体蛋白を特異的に認識するペプチド(フィブリノゲンγ鎖ドデカペプチド、H12)を担持したリポソーム、アルブミン粒子を作成し、vin vitro、in vivo評価を行った。血小板減少ラット、ウサギへの投与では、急性毒性を示さず、出血時間を短縮させた。特にH12担持リポソームでは、ADPを内包させたところ、in vitroで血小板凝集の増強、in vivoで出血時間の短縮が顕著となった。
臨床的観点からの成果
血小板減少時の出血管理に血小板輸血が必須であるが、血小板輸血は感染症のリスク、同種抗体産生などの問題があり、また、血小板製剤の保存期間が72時間と短い為に、これらの問題を克服出来る血小板代替物(人工血小板)の創製が血液行政面からも強く望まれている。今回の研究成果は、H12(ADP内包)リポソームが血小板代替物として臨床上有用である可能性を示唆し、今後の開発研究の進展に大きな一歩となった。
ガイドライン等の開発
無し
その他行政的観点からの成果
血小板代替物(人工血小板)創製研究により、急な入手に困難が伴う血小板濃原液に代わって臨床で使用が可能になれば、血液事業の上からも大きなインパクトを与える事になる。
その他のインパクト
平成18年2月11日(土・祝)13:00?17:00、日本科学未来館7FみらいCANホールにおいて、
公開シンポジウム「人工血液をつくる」にて「人工血小板をつくるーこれまでの研究成果と今後の課題」を主任研究者の池田康夫が発表した。
日刊工業新聞:2005年9月5日「7時間使える人工血小板」
日経産業新聞:2006年2月16日「寿命10倍の人工血小板」

発表件数

原著論文(和文)
1件
「図解 高分子新素材のすべて」武岡真司 邦猛豊喜監修、工業調査会 P98-101
原著論文(英文等)
1件
Takeoka S著 
その他論文(和文)
1件
臨床麻酔29, 721-726,2005.
その他論文(英文等)
6件
主なもの:JBC 208, 24775-13782, 2005. Transfusion 45, 1221-1228, 2005. et al
学会発表(国内学会)
12件
主なもの:第12回日本血液代替物学会年次大会にて
学会発表(国際学会等)
12件
主なもの:XXth Congress of Int'l Soc of Thromb & Haemost, Sydney
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
武岡真司 他:薬物運搬体 特願2005-75663 武岡真司・半田誠・池田康夫「薬物運搬体」特願2006-001916
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Okamura Y, TAkeoka S, Ikeda Y et al
Hemostatic effects of fibrinogen-γ chain dodecapeptide-conjugated polymerized albumin particles in vitro and in vivo.
Transfusion , 45 , 1221-1228  (2005)
原著論文2
Kamata T, Handa m, Ikeda Y, et al
Membrane-proximal α・β stalk interactions differentially regulate integrin activation
J Biol Chem , 280 , 24775-24783  (2005)
原著論文3
Okamura Y, Handa M, Ikeda Y et al
Hemostatic effects of phospholipid vesicles carrying fibrinogen-γ chain dodecapeptide in vitro and in vivo
Bioconjugate Chem , 16 , 1589-1596  (2005)

公開日・更新日

公開日
2017-05-22
更新日
-