ヒト胚性幹細胞を利用した分化誘導培養による人工血液の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200501099A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト胚性幹細胞を利用した分化誘導培養による人工血液の開発に関する研究
課題番号
H16-医薬-033
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
辻 浩一郎(東京大学 医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 河崎裕英(東京大学 医科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ヒト胚性幹細胞(ES細胞)から血液細胞(人工血液)への分化誘導法を開発、確立し、安全な輸血用血液の安定的供給に資する。特に本年度は、昨年度の研究成果により開発されたマウス胎仔肝由来ストローマ細胞を用いた、ヒトES細胞の血液細胞への分化誘導法をより詳細に解析し、そのシステム化を目指した。
研究方法
ヒトES細胞をマウス胎仔肝由来ストローマ細胞と共培養し、RT-PCR、フローサイトメトリー、血液細胞コロニー形成法などにより、血液細胞への分化を、検討した。また、その分化を担う分子を同定するために、マウス胎仔肝由来ストローマ細胞の性質を、免疫細胞染色、フローサイトメトリー等を用いて解析した。
結果と考察
(1)ヒトES細胞を胎生14?15日のマウス胎仔肝由来ストローマ細胞と共培養すると、培養11日には、赤血球系前駆細胞、骨髄球系前駆細胞、さらには、複数の血液細胞に分化可能な多能性造血前駆細胞に、安定的に分化誘導でき、培養13日目以降には、未分化なES細胞の残存はほとんど認められなかった。本方法によりヒトES細胞から分化誘導された造血前駆細胞の多くは、成人血液と同じ二次造血を起源とし、成人型ヘモグロビンを合成する成熟赤血球の産生も可能であったことより、輸血用血液の新たな供給源となり得ると考えられた。
(2)マウス胎仔肝由来のストローマ細胞には、少なくともヘパトサイトと内皮細胞が混在しており、それらの細胞の協同作用によりヒトES細胞は血液細胞に分化誘導されると推測された。今後、さらにマウス胎仔肝由来ストローマ細胞のcharacterizationを進めることにより、ヒトES細胞から血液細胞への分化誘導を担っている分子を同定し、異種動物のストローマに依存しない、ヒトES細胞からの血液細胞産生法の確立が望まれる。
結論
本研究により開発された、マウス胎仔肝由来ストローマ細胞との共培養法により、ヒトES細胞から血液細胞への分化誘導が、安定的に可能となった。これらの血液細胞は、成人血液と同じく、二次造血を起源する細胞で、成人型ヘモグロビンを合成する成熟赤血球の産生も認められた。本培養系においては、培養13日目以降には、未分化なES細胞が残存する可能性は低く、安全な輸血用血液の安定的な供給源となることが示された。

公開日・更新日

公開日
2009-04-23
更新日
-

文献情報

文献番号
200501099B
報告書区分
総合
研究課題名
ヒト胚性幹細胞を利用した分化誘導培養による人工血液の開発に関する研究
課題番号
H16-医薬-033
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
辻 浩一郎(東京大学 医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 河崎裕英(東京大学 医科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ヒト胚性幹細胞(ES細胞)から血液細胞(人工血液)への分化誘導法を開発、確立し、安全な輸血用血液の安定的供給に資する。
研究方法
種々のマウス胎仔の造血組織からストローマ細胞を樹立し、ヒトES細胞をそれらのストローマ細胞と共培養し、RT-PCR、フローサイトメトリー、血液細胞コロニー形成法などにより、血液細胞への分化を、検討した。また、その分化を担う分子を同定するために、ヒトES細胞から血液細胞への分化誘導能を有するストローマ細胞の性質を、免疫細胞染色、フローサイトメトリー等を用いて解析した。
結果と考察
(1)ヒトES細胞を胎生14?15日のマウス胎仔肝由来ストローマ細胞と共培養すると、培養11日には、赤血球系前駆細胞、骨髄球系前駆細胞、さらには、複数の血液細胞に分化可能な多能性造血前駆細胞に、安定的に分化誘導でき、培養13日目以降には、未分化なES細胞の残存はほとんど認められなかった。本方法によりヒトES細胞から分化誘導された造血前駆細胞の多くは、成人血液と同じ二次造血を起源とし、成人型ヘモグロビンを合成する赤血球や、脱核した成熟赤血球の産生も可能であったことより、安全な輸血用血液の新たな安定的供給源となり得ると考えられた。
(2)マウス胎仔肝由来のストローマ細胞には、少なくともヘパトサイトと内皮細胞が混在しており、それらの細胞の協同作用によりヒトES細胞は血液細胞に分化誘導されると推測された。今後、さらにマウス胎仔肝由来ストローマ細胞のcharacterizationを進めることにより、ヒトES細胞から血液細胞への分化誘導を担っている分子を同定し、異種動物のストローマに依存しない、ヒトES細胞からの血液細胞産生法を確立が望まれる。
結論
本研究により開発された、マウス胎仔肝由来ストローマ細胞との共培養法により、ヒトES細胞から血液細胞への分化誘導が、安定的に可能となった。これらの血液細胞は、成人血液と同じく、二次造血を起源する細胞で、成人型ヘモグロビンを合成する赤血球や脱核した成熟赤血球の産生も認められた。本培養系においては、培養13日目以降には、未分化なES細胞が残存する可能性は低く、安全な輸血用血液の安定的な供給源となることが示された。

公開日・更新日

公開日
2009-04-23
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200501099C

成果

専門的・学術的観点からの成果
これまでヒト胎児における造血の発生・発達を解析するシステムが確立されていなかったため、その解明はほとんど進んでおらず、同じ哺乳類であるマウスの結果から類推されるのみであったが、マウスとヒトの胎生期造血は多くの点で異なっていることが指摘されていた。本研究成果として開発されたヒト胚性幹細胞から血液細胞への分化誘導系は、ヒト胎生期造血を詳細に解析するための有効なツールとなると考えられ、ヒト発生学、胎児学の発展に資するものと期待される。
臨床的観点からの成果
本研究成果として開発された培養法によりヒト胚性幹細胞から分化誘導された血液細胞は、成人血液と同じ二次造血を起源としており、成熟血液細胞への分化も可能であった。また、分化誘導系に未分化なままのヒト胚性幹細胞が残存する可能性も低いことが確認されたため、今後本分化誘導法により産生された血液細胞の輸血用血液細胞としての機能が検証され、異種動物の血清、細胞に依存しない培養法を確立することにより、安全な輸血用血液の安定的供給に資するものと期待される。
ガイドライン等の開発
本研究成果は、ガイドライン等の開発には関連していない。
その他行政的観点からの成果
本研究成果は、現在の行政施策には反映されていないが、将来的に輸血行政に資することが期待される。
その他のインパクト
平成18年2月11日に開催された厚生労働省科学研究(医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究事業)平成17年度研究成果発表会(公開)「人工血液をつくる(6)」において、本研究成果を発表した。また、平成18年4月4日には、本研究成果について、読売新聞社の取材を受け、近日中に新聞掲載の予定である。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
7件
その他論文(和文)
13件
著書、総説など
その他論文(英文等)
1件
総説
学会発表(国内学会)
10件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
米国プロビジュアル出願(60/728,665)
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
成果発表会1件、新聞取材1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yoshitoshi Ohtsuka, Atsushi Manabe, Kohichiro Tsuji, et al.
RAS-blocking bisphosphonate zoledronic acid inhibits the abnormal proliferation and differentiation of juvenile myelomonocytic leukemia cells in vitro
Blood , 106 (9) , 3134-3141  (2005)
原著論文2
Feng Ma, Wang Dan, Sachiyo Hanada, et al
Novel method for efficient production of multipotential hematopoietic progenitors from human embryonic stem cells
Blood, in press  (2006)

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-