地域保健等のデータのデジタル化・規格化に関する研究-地方衛生研究所試験検査ネットワークを活用事例として

文献情報

文献番号
199700122A
報告書区分
総括
研究課題名
地域保健等のデータのデジタル化・規格化に関する研究-地方衛生研究所試験検査ネットワークを活用事例として
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
石川 直久(愛知医科大学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地域保健活動推進のかなめの1つは、異なった国あるいは地方あるいは民間の機関相互に密接に連携することである。 コンピュータネットワークの構築は、そのような連携の1つの手段である。 本研究の目的は、?全国各地でそれぞれのネットワークが容易に構築されること、?情報あるいはデータベースがどのような個別のシステムでつくられようとも又どのようなデータ情報であろうとも県あるいは国に集約できるようにすることを目標としてその方策を検討することである。 これを実現させる最も費用対効果の高い方法は、データ項目や属性の定義とファイル間の関係等データ処理に必要な情報(管理情報)について記述の統一化を図ることである。 この新しい方法に基づく特徴は、(1)情報やデータと共に、管理情報が提供されるので、ハードやソフトが異なってもデータ処理が可能となること、(2)管理情報に基づくデータ処理は自機関のデータベースなどの資源を利用して実行可能であるので、システム開発を必要としないこと、(3)規格化された管理情報を利用する自機関のデータベースなどの資源による処理と対応づけるために必要なプログラム(インターフェースプログラム)の作成が容易なことである。
研究方法
平成9年度には、(1)管理情報の詳細設計と規格化の方法を比較検討した。 また、(2)地方衛生研究所が使用しているデータベースの種類と利用しているシステムを調査した。 更に、(3)東海及び北陸地方衛生研究所の有する幾つかの検査情報について、利用者である研究者にとって最も利用しやすいデータベースの仕様を調査した。 今後、平成10年度には、検査情報についての管理情報を作成し、それぞれの機関にマッチした情報システムの構築を試行して規格についての評価を行い、必要な管理情報について再検討を加える。 平成11年度には、市町村や保健所が所有する公衆衛生情報のデータベースを構築し、利用しやすさ、信頼性、処理速度等の総合評価を行う。 平成9年度に行なった研究方法を以下に示す。
(1)管理情報を一括管理するファイル(管理ファイル)に入れる様々な定義に対応して、データベースに蓄積されるデータの内容が部外者にも理解できることが必要である。 そのため、まず管理ファイルの定義について検討した。 その大部分は既に愛知県衛生研究所保健情報室にて作成し利用した結果のものであるが、さらにいろいろなケースに対応できるように充足を図った。 その一部は、下記に示す地方衛生研究所食品汚染モニタリング及び情報の担当者の会議からそれに関する意見を求めた。 また、その定義の仕方、即ち規格化は、データの定義情報が現在世界で使われている様々なコンピュータのハード面(オペレイティングシステムを含む)とデータベースのソフト面の両面から見て全て受け入れられ、なお且つ作成しやすいように設定されることが必要である。従来管理ファイルとして、愛知県衛生研究所では市販の表計算ソフトを使ってデータの定義情報を書き入れ、固定長形式のテキストファイルを作成してきた。このファイルを読み込んでデータベースを作成できるプログラム開発を行なってきており、そして他方ではオペレイティングシステムもハードも異なるコンピュータ上で統計解析等にも利用されてきた。この基盤からさらに保健情報全般に対応できるようにするため、その他のファイル形式例えば tags-file 形式の有用性や可能性を実際に作って比較検討した。
(2)既に、全国の地方衛生研究所を対象にして、コンピュータのハード・ソフトの多種多様性の根拠とするだけではなく実際に使われているコンピュータシステムの仕様を明確にして今後の具体的な方針を策定するため、アンケート方式で調査を行なってきたところである。調査項目は、情報部門設置状況及び業務内容、所内LAN、所有しているデータベース及び統計解析ソフト等であった。 さらに、東海及び北陸の地方衛生研究所の間で情報ネットワークを試行するため、検査部門毎の所内 LAN 活用状況やオペレイティングシステムとデータベース仕様などについて利用状況調査を行なった。
(3)利用者相互の情報ネットワークを構築する場合、それぞれが自由にデータベースを作り、相手のデータベースのデータを利用できるようにしなければならない。それには利用者側から積極的な参加と実用面での使いやすさの判定が示されることが必要であり、あてがいぶちに供与されることをできるだけ避けたいものである。むしろ利用者が容易に作成できる規格化が完了すれば安定したシステム開発が可能となり、費用もほとんどかからないことが期待できる。このような理由によって、次年度に予定している東海北陸地域地方衛生研究所検査担当者の実務的利益(自らのデータベース作成と国立医薬品食品衛生研究所の食品汚染モニタリングの情報提供)の期待に沿えるネットワークの試験的遂行のため、利用者である検査担当者及び情報関係担当者の連絡調整会議を行なった。
結果と考察
(1) 管理ファイル(tags 形式)の詳細設計と規格化について検討した結果、データベースファイル、レコード、フィールドの3個に大きく分類し、それぞれを細分類した項目について名称、tag名、フィールド長、オペランド(略語を含む)、デフォルト、備考を設定した(以下括弧内、tag名、field長(N:数字、C:文字)を示す)。まず、データベースファイルについては、ファイル番号(FLNO,N3)、名称(FLN,C12)、形式(FLORG,C10)、レコード長(FLRL,N5)、フィールド数(FLNF,N4)と分離記号(FLFS,C5)、ブロック化の有無(FLBF,N3)とサイズ(FLBS,N5)とサイズの単位(FLBSU,C4)、キーの位置(FLKP,N5)と長さ(FLKL,N3)と属性(FLKA,C6)、コード(FLCD,C10)、圧縮の有無(FLCP,C30)、アプリケーションプログラム名(FLAP,C30)、オペレイティングシステム名(FLOS,C30)、所有者の氏名(FLON,C20)と作成日付(FLWD,C10)と日付分離記号(FLDS,C2)と日付フォーマット(FLDF,C6)である。 レコードについては、番号(RDNO,N3)、名称(RDN,C8)と別名(RDAN,C30)、レコードの種別(RDT,C6)、欠損値の表示方法(RDONV[n},C5)、画面・印刷フォームの名称(RDFN,C12)と別名(RDANF,C30)、利用許可権利(RDAR,C8)である。 フィールドについては、表の番号(FDTN,N3)とフィールド番号(FDNO,N3)、フィールドの名称(FDN[n],C8)と別名(FDAN[n],C30)、フィールドの属性(FDA[n],C9)とキー項目の有無(FDK[n],N1)と属性番号(FDAO[n]とカテゴリーとして取り扱うかどうか(FDC[n],N1)、フィールド長(FDL[n],N9)、有効桁数(FDSF[n],N2)、測定値の単位(FDU[n],C10)、デフォルト値(FDDV[n],C30)、有効範囲(FDSR[n],C30)、参照先テーブルの名称(FDRT[n],C8)と参照しているフィールド名(FDRF[n],C8)と出力先のフィールドの名称(FDOF[n],C8)、計算式の値の挿入(FDFN[n],C58)、被表示項目の指定(FDS[n],C3)である。 管理情報をテキストファイル形式で記述するためのこの規格から市販データベースソフトを使ったデータベース作成のためのインターフェースソフトを開発している。 これは広く希望者に配布する目的で、著作権の履行を破棄している。
(2) 東海及び北陸の地方衛生研究所(7県)における部局毎の調査で、市販データベースソフトはどの部局もAccessが最も多く、次いで桐、d-BASEであった。 また、何らかの表計算ソフトとワードプロセッサーソフトが利用されており、他方統計解析ソフトの利用は少なくまた部局により差があった。 既に行なった結果であるが、全国の73地方衛生研究所の調査でも使用されている市販データベースソフトは、全く種々雑多でありOracleとAccessが比較的多くそれぞれ12、14%であった。 利用されている業務内容を多い順に並べると、感染症サーベイランス33%、大気汚染19%、食品検査15%、水質汚染14%、食中毒や人口動態いずれも8%、花粉症5%等であった。 特に、データベースソフトとして使われている率の高さから、そのソフトと管理ファイルを結ぶインタフェースプログラム開発の優先度を選ぶ場合に今後の参考にできる。
(3) 国立医薬品食品衛生研究所を中心とする食品汚染モニタリングのネットワークにリンクし、かつ各衛生研究所独自のデータベースを作成する。 東海及び北陸の地方衛生研究所の食品化学検査従事者を対象として利用しやすいデータベースの仕様を決定するため、意見交換のための会議(32名参加)を行なった。 実際にVisual Basic言語にて優先度が最も高かったデータベースソフト(Access)と管理情報ファイルを結ぶインタフェースプログラム及びそれを作成するプログラムを作成した。 これを各対象者に配付して、それぞれの利用目的に従って使ってみることになった。 今後の評価に当たって必要な項目即ち相互のネットワーク或いは独自の業務への利用等を行なった時の利用価値や使いやすさ等を報告してもらうことになった。 また、一部の研究協力者から最終年度に予定している地域保健に関するデータベース作成の方針についても賛同を得て、次年度の計画策定に協力の意向が得られた。
結論
地方衛生研究所における情報活動の進展度は、その地域におけるそのネットワークの発展を暗示するものである。 今回行なった調査結果を見ると所内LANの設置は約半数に見られ、相当な必要性があること即ち衛生行政業務にも情報ネットワークを基礎とする業務連携の必要性が高まってきたことを示している。 しかし、これは一致したコンピュータのハード・ソフトを基盤とするものであり、異なったシステム同士ではまだ今後の検討課題である。 今年度の研究成果は、まだ様々なコンピュータのハード・様々なデータベースソフトの利用が見られ、本研究の必要性を如実に示している。 また、今年度情報の規格化の方法を検討したが、実際に利用してはじめて追加・改定が求められるため、次年度における試験的遂行がより一層の本研究の充実に導くものである。 このように東海・北陸の地方衛生研究所の食品化学担当者及び情報担当者の協力を得ることが出来たため、さらに最終年度に市町村支援の目的に沿うべく保健情報の規格化を定着させることが可能である。
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