幹細胞を利用した分化誘導培養による人工血液の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200501098A
報告書区分
総括
研究課題名
幹細胞を利用した分化誘導培養による人工血液の開発に関する研究
課題番号
H16-医薬-032
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
千葉 滋(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 小川 誠司(東京大学 医学部附属病院)
  • 黒川 峰夫(東京大学 医学部附属病院)
  • 神田 善伸(東京大学 医学部附属病院)
  • 鈴木 隆浩(東京大学 医学部附属病院)
  • 熊野 恵城(東京大学 医学部附属病院)
  • 湯尾 明(国立国際医療センター)
  • 高橋 孝喜(東京大学 医学部附属病院)
  • 十字 猛夫(日本赤十字社中央血液研究所)
  • 高梨 美乃子(東京都赤十字血液センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
34,906,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
体性造血幹細胞を用い、体外で増殖・分化させ大量の血球細胞を産生する方法の開発を行い、供血者に依存する輸血医療の再構築を目指す。同時に、ヒトES細胞からの血球分化の基礎的研究にも着手する。
研究方法
①ヒト臍帯血造血幹細胞体外増幅系を、NOD/SCIDおよびNOGマウスへの移植により評価した。京都大学で樹立されたヒトES細胞からの未熟造血細胞および好中球分化誘導を評価した。
②マウス骨髄CD34陽性細胞を培養して得た好中球の活性酸素産生能を測定した。ヒト臍帯血CD34陽性細胞をNOGマウスに移植し、炎症巣に集積するヒト好中球を解析した。
③抗血栓性が期待されているフッ素添加ダイヤモンドカーボンへの血小板接着状態につき、動的条件で検討を加えた。
④東京都赤十字血液センター臍帯血バンクにおいて臨床用にストックされない臍帯血ユニットの研究用使用についてシステムを構築した。
結果と考察
①ヒト臍帯血からの磁気ビーズ選択は、CD133選択がCD34選択の4.5倍多く造血幹細胞を回収したことから、CD133磁気ビーズ選択法は臨床的にも優れた方法であると推察された。Delta1-Fcを用いてヒト臍帯血CD133陽性細胞を培養することによりT細胞への分化能も有する完全な造血幹細胞が増幅されており、本培養法の優位性が確認された。京都大学で樹立されたヒトES細胞であるKhES-3細胞から未熟造血細胞および好中球の誘導が示されたことから、知的財産形成への寄与が期待される。
②体外で産生させたマウス好中球は十分な活性酸素産生能を有していることを確認し、体外好中球産生法開発が前進した。ヒト臍帯血CD34陽性細胞をNOGマウスに輸注することにより炎症巣にヒト好中球が確認され、造血幹細胞の生体内分化評価系確立が期待される。
③フッ素添加ダイヤモンドカーボンの付着血小板の付着量および活性化抑制効果は、動的環境でも優れていた。人工血液機能保存剤として期待される。
④血液バンクに保存されず基礎検討/廃棄対象となる臍帯血の75.8%が研究者に譲渡され、有効に活用されている。
結論
CD133磁気ビーズによるヒト臍帯血造血幹細胞選択法とDelta1-Fcを用いた増幅法により効率的な造血幹細胞増幅が可能である。機能的好中球を体外で作成し得る。京都大学で樹立されたヒトES細胞から血球を誘導し得る。ヒト造血細胞の好中球への分化評価系を確立した。フッ素添加ダイヤモンドカーボンは動的環境でも優れた抗血栓性を持つ。臍帯血バンクの受入臍帯血の中で保存できない譲渡対象のうち75.8%を研究者に譲渡した。

公開日・更新日

公開日
2009-04-23
更新日
-