幹細胞を利用した分化誘導培養による人工血液の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200501097A
報告書区分
総括
研究課題名
幹細胞を利用した分化誘導培養による人工血液の開発に関する研究
課題番号
H16-医薬-031
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
白井 睦訓(山口大学医学部医学科生殖・発達・感染医科学講座微生物学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
造血幹細胞が多系列分化能を保持しながら自己複製できるメカニズムの解明は、人工血液開発に非常に重要である。本研究では人工血液の一部であるリンパ球の増殖分化制御技術の開発を目指している。
研究方法
1)各種レトロウイルス発現cDNA発現ライブラリー導入Pax5欠損ProB細胞を利用し、造血・免疫系再生分化制御因子をvitroで探索して、機能を解明する。さらに探索遺伝子導入同ProB細胞をRAG2欠損マウスに移植して分化制御を解析し、多分化能維持と組織再構築技術の開発を行う。2)造血・免疫系で幹細胞の自己複製能と多分化能を維持できるサイトカインを同定し、培養技術を開発する。 3)DNAマイクロアレイでの多分化能関連遺伝子探索。4)探索した再生分化制御候補遺伝子の改変マウスを作製、解析する。
結果と考察
Pax5遺伝子欠損マウス由来ProB細胞は多分化能を保持し造血幹細胞株として利用可能であった(特許出願)。Pax5遺伝子欠損マウス由来ProB細胞は長期in vitro培養後多分化能、T細胞分化能を失うが、培養液中LIF添加時のみ長期培養後にT細胞分化能が高く維持された。この効果はLIFによるProB細胞でのGATA3遺伝子発現上昇に依存する。LIF処理したProB細胞はin vitro培養後NK細胞にも分化できるが、マクロファージへは分化しなかった。Pax5欠損ProB細胞に各種遺伝子ライブラリーや探索分化制御遺伝子候補を導入・発現させ解析して、Erk5、Rac1、RhoHなどのT細胞の正負選択への関与を見つけた。これら遺伝子導入Pax5欠損ProB細胞を、RAG2欠損マウスに移植、解析し、in vivo造血・免疫系多分化能維持と組織再構築技術を開発した。解析成果をもとに遺伝子改変マウス;RhoHコンディショナルノックアウトマウス、RhoHトランスジェニック(Tg)マウス、ドミナント・ネガティブRac1 Tgマウス作製に着手し、うち後者2種でRac1,RhoHのT細胞分化への関与が解明でき、さらに解析中である。本成果は今後、生体由来の造血幹細胞を希望の系列の血球へと優先的に分化させて患者に供給する医療の実現を可能にするものである。
結論
幹細胞複製に必須の未分化性維持にLIFによるGATA3活性化、T細胞Lineage分化制御でのRac1,RhoHなどの関与が解明できた。

公開日・更新日

公開日
2009-07-23
更新日
-