同種血輸血安全性向上に伴う自己血輸血適応の再検討

文献情報

文献番号
200501096A
報告書区分
総括
研究課題名
同種血輸血安全性向上に伴う自己血輸血適応の再検討
課題番号
H16-医薬-021
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
佐川 公矯(久留米大学 医学部附属病院・臨床検査部)
研究分担者(所属機関)
  • 大澤哲雄(新潟市民病院(泌尿器科))
  • 面川 進(秋田大学(医学部附属病院輸血部))
  • 小堀 正雄(医療法人菊名記念病院(麻酔科))
  • 坂本 久浩(医療法人茜会昭和病院)
  • 鷹野 壽代(聖マリア病院(輸血部))
  • 高橋 孝喜(東京大学(医学部附属病院輸血部))
  • 種本 和雄(川崎医科大学(外科学(胸部心臓血管外科学)))
  • 脇本 信博(帝京大学(医学部附属病院整形外科))
  • 丹生 恵子(福岡大学(医学部附属病院輸血部))
  • 樋口 富士男(久留米大学(医学部附属病院医療センター整形外科))
  • 古川 良尚(鹿児島大学(医学部附属病院輸血部))
  • 松﨑 浩史(松山赤十字病院(心臓血管外科))
  • 松崎 道男(虎ノ門病院(輸血部))
  • 森澤 雄司(自治医科大学(感染制御学))
  • 吉田 雅司(鹿児島大学(医学部附属病院口腔顎顔面センター))
  • 稲葉 頌一(神奈川県赤十字血液センター)
  • 佐竹 正博(東京都赤十字血液センター)
  • 佐藤 博行(福岡赤十字血液センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
同種血輸血の安全性が向上し、自己血輸血が最も安全な輸血と言い切れなくなっている。本研究では、自己血輸血を実施する際の様々なリスクについて再検討を行い、自己血輸血の適応の見直しを行いたい。
研究方法
1.アンケート調査
調査期間は2005年1月1日から12月31日までの1年間。佐川班、髙橋班および日本輸血学会が全国の主要1355施設にアンケート調査を行い、自己血輸血の実態を調査した。
2.多施設共同研究における自己血の細菌汚染の前方視研究
細菌汚染の培養検査を実施した。
3.自己血輸血ガイドラインの改訂版の作成
1994年版「自己血輸血:採血及び保管管理マニュアル」を上記1,2の結果を踏まえ改訂する。
結果と考察
1.アンケート調査
857施設より回答が(回答率63.3%)あった。全施設の自己血輸血の2005年実施量の平均は、全血輸血実施施設で252単位、135袋であり、MAP輸血実施施設で355単位、182袋であった。857施設の2005年の自己血輸血の実績推定値は205,448単位、106,739袋であった。この実績は2000年からほとんど変化はなく、全国的にも自己血輸血はほぼ普及していると考えられた。2005年1年間での自己血の細菌汚染の報告症例は6症例で、そのうち2例に自己血が患者に投与され、発熱症状が観察されたが、重篤な結果には至らなかった。最近汚染の頻度は、106,739袋中6袋であり、1.8万袋に1袋の割合と推定された。
2.多施設共同研究による自己血の細菌汚染の前方視研究
11施設で2005年10月より共同研究を開始し、2006年3月15日現在での集計では、合計765件の細菌培養実験が終了し、すべて陰性であった。
3.自己血輸血ガイドラインの改訂版の作成
現在、作成中である。内容は2部構成とし、第1部は基礎編で、従来どおりのガイドラインの記載を行い、第2部では、フローチャート、図、クリニカルパスなどのビジュアル化によって、初心者でも安全で適正な自己血輸血が実施できる構成とする。
結論
アンケート調査では、自己血輸血細菌汚染の頻度が1.8万本に1本の割合という結果であったが、日本赤十字血液センターの同種血の細菌汚染の頻度が数千本に1本であることと比較して低い頻度である。これは、自己血の細菌汚染が臨床的に把握されていないことを示唆している。今後、自己血輸血の全数または抜き取り調査により輸血前に細菌汚染の有無を検査するシステムを構築することが必要である。ただし、検査としては簡便で安価でしかも短時間で結果を判定できる方式が開発、改良される必要がある。

公開日・更新日

公開日
2007-04-13
更新日
-