安全な血液製剤を確保するための新興・再興感染症等の診断、除去・不活化法の研究

文献情報

文献番号
200501093A
報告書区分
総括
研究課題名
安全な血液製剤を確保するための新興・再興感染症等の診断、除去・不活化法の研究
課題番号
H16-医薬-017
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 義昭(国立感染症研究所血液・安全性研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 池田 久實(北海道赤十字血液センタ-)
  • 佐藤 博行(福岡赤十字血液センタ-)
  • 高崎 智彦(国立感染症研究所ウイルス1部)
  • 武田 直和(国立感染症研究所ウイルス2部)
  • 田代 眞人(国立感染症研究所ウイルス3部)
  • 米山 徹夫(国立感染症研究所ウイルス2部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
16,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新興・再興感染症等の血液製剤の安全性に脅威となっているウイルスの診断、不活化・除去法の研究を行い、安全な血液製剤の確保を目指す。特に、実際のウイルスを用いた評価を行い、モデルウイルスとの相違を明らにする。また、新しいウイルス不活化法の開発も行う。
研究方法
パルボウイルスB19(B19)、HAV、SARSコロナウイルスのS/D処理(界面活性化剤)による不活化の評価を行った。また、3つのHAV培養株に対する加熱処理による不活化の効果を評価した。WNVでは特異性を維持した状態でWNVの遺伝子の多様性に対応可能な検出法の開発を行った。B型肝炎ウイルス(HBV)では、有用な不活化を評価する系がなかったが、HBVをノイラミニダ-ゼ処理することによって肝癌細胞株HepG2に吸着させると、2重鎖の cccDNAが形成される系を開発し、加熱処理とメチレンブル-処理によるHBVの不活化を評価した。E型肝炎ウイルスでは構造タンパクをバキュロウイルスの系で発現させたところウイルス様の粒子を形成したので、その性状を解析した。また、食品の分野で既に実用化されている滅菌法を血液製剤のウイルス不活化法として応用できるか検討した。
結果と考察
S/D処理によるウイルス不活化の効果は、モデルウイルスから予想されていた結果と一致した。エンベロ-プを持たないB19やHAVに対して全く効果が認められなかった。一方、SARSウイルスは5log以上の不活化法効果があった。また、60℃2時間の加熱処理によっても5log以上不活化された。これらからSARSウイルスは現状のウイルス不活化法によって容易に不活化されることが明らかとなった。異なるHAV株を用いた加熱処理による不活化では、株間で2logの抵抗性の差が認められ、用いた株によっては過剰に評価してしまう危険性があることを明らかにした。HBVのin vitro感染系では60℃10時間の加熱処理によって3logの不活化が認められた。これまでHBVの評価系がなかったので有用な系に発展する可能性がある。食品の滅菌法を血液に応用した結果、血漿が変性しない条件下でB19、麻疹ウイルス、マウスレトロウイルス等が不活化された。特に、B19では他の方法より著明に不活化された。
結論
B19、HAV、SARS、HBVなど評価することが困難なウイルスの不活化を評価した。また、食品に用いられている滅菌法が血液製剤の新しいウイルス不活化法に発展する可能性が示された。

公開日・更新日

公開日
2007-04-09
更新日
-