免疫学的輸血副作用の把握とその対応に関する研究

文献情報

文献番号
200501090A
報告書区分
総括
研究課題名
免疫学的輸血副作用の把握とその対応に関する研究
課題番号
H17-医薬-053
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
高本 滋(愛知医科大学医学部輸血部)
研究分担者(所属機関)
  • 清水勝(杏林大学医学部臨床検査医学)
  • 倉田義之(大阪大学医学部輸血部)
  • 岡崎仁(日本赤十字社血液事業本部中央血液研究所)
  • 半田誠(慶応義塾大学医学部輸血細胞療法部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は輸血副作用の全国的な報告体制を確立すると共に、特に輸血関連急性肺障害(TRALI)などの免疫学的副作用について実態を把握し、対応することを目的とする。
研究方法
 輸血副作用について、1)全国216施設、2)限定4施設に対し調査を行い、保存前白血球除去導入前後の比較を行った。3) 免疫学的輸血副作用と抗血漿蛋白抗体との関連を検討した。TRALIについて、1)症例を確診、疑診例に分け、臨床症状、検査などについて検討した。また、発症機序を探るため、培養系を用い基礎実験を行った。2)抗白血球抗体に関し、FITC-ヤギ抗ヒトIgGで染色後、FCMで測定する新検出系の構築を試みた。3) TRALI診断基準としてのPaO2/FiO2比について有用性を検討した。
結果と考察
 輸血副作用について、1) 全国調査よりバッグ当りの頻度は約1.4%であり、製剤別では赤血球製剤(RC)0.8%、血小板製剤(PC)4%、新鮮凍結血漿(FFP)0.6%とPCで有意に高かった。種類ではPCによる蕁麻疹が3.3%と最も高く、他は1%以下であった。2) 4施設の調査で頻度は1.6%と導入前の2.0%より有意に低く、特に、PCで前5.1%から後3.6%と有意に減少した。即ち保存前白血球除去が副作用軽減に有効と判断された。3) 抗血漿蛋白抗体は一部症例に検出されたが副作用との相関はなかった。TRALIについて、1)発症時間は2時間以内が多く、確診例の年齢中央値は66才、男女比は3:2などより詳細な臨床情報が得られた。基礎実験からは、classⅡ抗体を抗原陽性単球と肺毛細血管内皮細胞と共培養すると有意にLeukotriene B4の遊離が見られ、好中球の遊走促進が示された。2)新検出系は低バックグラウンドを実現し、5系統細胞を同時解析できるため、抗体の特異性同定に極めて有用と考えられた。3) PaO2/FiO2比は術後低下例、300mmHg以下の例も多数あり、単独での有用性は低いと考えられた。
結論
 輸血副作用頻度について明らかに低い施設もあり、全国集計には各施設の観察力向上の必要がある。PCに対する保存前白血球除去導入により4施設で有意な減少が認められ、今後、RC、FFPへの導入による副作用軽減が期待される。TRALIに関して臨床上のより詳細な情報が得られた。抗白血球抗体の特異性同定に有用な新検出系が構築され、今後の有用性が期待される。

公開日・更新日

公開日
2007-04-13
更新日
-