プラスティック製医療用具の適正使用に関する研究

文献情報

文献番号
200501075A
報告書区分
総括
研究課題名
プラスティック製医療用具の適正使用に関する研究
課題番号
H16-医薬-022
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
中澤 裕之(星薬科大学薬品分析化学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 山本 章博(日本医療器材工業会)
  • 荻野 純一((株)東レリサーチセンター有機分析化学研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
15,024,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療機器に使用されるポリ塩化ビニル(PVC)から溶出するフタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP)及びその分解物であるフタル酸モノ-2-エチルヘキシル(MEHP),フタル酸(PA)の一斉分析法を構築し,種々の滅菌処理がDEHP等の溶出挙動に与える影響を解明することを目的とした.また,ポリカーボネート(PC)製三方活栓の破損原因を追究することを目的に,医薬品の添加剤や樹脂の分子量が破損に与える影響及び傾向を検討し,医療機器の適正使用に資する科学的データの取得を目指した.
研究方法
滅菌方法の異なるPVCシートから溶出するDEHP, MEHP, PA量をLC-MS/MSを用いて検討した.さらに,ガンマ線照射滅菌を施したPVCシートの弾性率・硬さを測定し,滅菌操作が材質表面に与える影響を調査した.
 一方,PC製三方活栓に生じる破損は,医薬品の添加剤成分,PC樹脂の分子量等の条件を検討し,破損発生の原因を追究した.
結果と考察
本研究では,PVCシートから医薬品を介してDEHPだけでなく,MEHP及びPAも溶出することが確認された.本来,DEHPからMEHPへの変換原因と考えられていた代謝酵素が存在しない状況で,MEHPさらにPAまで検出されたことにより,ガンマ線照射等の物理的な要因による分解経路が存在することが示唆された.また,市販の医療機器に施される滅菌の種類により,DEHP及びMEHP,PA溶出量に顕著な差を生じ,PVC材質の変化が示唆された.
PC製三方活栓のクラック発生には,三方活栓に与える強度,添加剤の種類及びPC樹脂の分子量が影響することが明らかとなった.
結論
MEHPはDEHPよりも毒性が強いことが懸念されている.滅菌処理によりDEHPだけでなく,MEHP,PAが溶出されることが明らかとなったことより,今後は溶出量と毒性を考慮した総合的なリスク評価が望まれる.一方,PC製三方活栓の破損発生の原因には,PC樹脂の分子量が大きく関与し,破損の発生リスクを低減することが示唆された.本研究により得られた研究成果は,より安全性の高い医療用具の開発及び適正使用に寄与するものと期待される.

公開日・更新日

公開日
2006-06-19
更新日
-

文献情報

文献番号
200501075B
報告書区分
総合
研究課題名
プラスティック製医療用具の適正使用に関する研究
課題番号
H16-医薬-022
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
中澤 裕之(星薬科大学薬品分析化学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 山本 章博(日本医療器材工業会)
  • 荻野 純一(東レリサーチセンター有機分析化学研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療機器に使用されるポリ塩化ビニル(PVC)から溶出するフタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP)及びその分解物であるフタル酸モノ-2-エチルヘキシル(MEHP),フタル酸(PA)の一斉分析法を構築し,種々の滅菌処理がDEHP等の溶出挙動に与える影響を解明することを目的とした.また,ポリカーボネート(PC)製三方活栓の破損原因を追究するために,三方活栓の使用条件,適用する医薬品添加剤や樹脂の分子量が破損に及ぼす影響を検討し,医療機器の適正使用に資する科学的データの取得を目指した.
研究方法
滅菌方法の異なるPVCシートから溶出するDEHP,MEHP,PA量をLC-MS/MSを用いて測定した.又、PVCシート中での深さ方向のDEHP存在量を加熱脱着GC-MS法で測定した.さらに,透過型電子顕微鏡,フーリエ変換赤外分光法,X線光電子分光法,原子間顕微鏡を利用し,各種滅菌操作によりPVC材質の表面変化を解析した.他に,ガンマ線照射滅菌を施したPVCシートの弾性率・硬さを測定し,滅菌操作が材質表面に与える影響を調査した.一方,PC製三方活栓に生じる破損は,医薬品の添加剤成分,接合強度,接合回数,接合時間,PC樹脂の分子量等の影響を検討し,破損発生の原因を追究した.
結果と考察
本研究では,PVCシートから医薬品を介してDEHPだけでなく,MEHP及びPAも溶出することが確認された.本来,DEHPからMEHPへの変換原因と考えられていた代謝酵素が存在しない状況で,MEHPさらにPAまで検出されたことにより,ガンマ線照射等の物理的な要因による分解経路の存在が示唆された.また,市販の医療機器に施される滅菌の種類により,DEHP及びMEHP,PA溶出量に顕著な差を生じ,PVC材質の変化が示唆された.PC製三方活栓のクラック発生には,接合強度,接合回数,接合時間,添加剤の種類及びPC樹脂の分子量が影響することが明らかとなった.
結論
滅菌処理によりDEHPだけでなく,MEHP,PAが溶出されることが明らかとなったことより,今後は溶出量と毒性を考慮した総合的なリスク評価が望まれる.一方,PC製三方活栓の破損発生の原因には,PC樹脂の分子量が大きく関与し,破損の発生リスクを低減することが示唆された.本研究により得られた研究成果は,より安全性の高い医療機器の開発及び適正使用に寄与するものと期待される.

公開日・更新日

公開日
2006-06-19
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200501075C

成果

専門的・学術的観点からの成果
医療機器に施される滅菌方法の違いにより、DEHPやその分解物であるMEHPやPAの溶出量が顕著に異なってくることが分かった。この成果は、国内外から反響があり、特に米国食品医薬品局(FDA)において強い関心が得られ、現在、共同研究が進行している。
また、三方活栓の破損を引き起こす原因(薬剤との接触時間や、締め付ける力)が、明らかとなった。
臨床的観点からの成果
医療機器から溶出する可塑剤及びその分解物の一斉分析法を構築したことより、今後、本分析法を利用した、暴露量評価を行うことが可能となった。
また、三方活栓破損の要因が明らかとなったことより、使用する際の注意点が挙げられる。これらは、医療機器の安全性確保や適正使用に大きく寄与するものと思われる。
ガイドライン等の開発
ポリ塩化ビニル製医療機器から溶出する可塑剤DEHP及びその分解物の一斉分析法を構築した。これまではDEHP量のみを把握して、暴露量評価を行っていたが、DEHPよりも毒性の高いMEHPも生成してくることが明らかとなったことより、本分析法を利用した溶出量の把握が可能となる。
その他行政的観点からの成果
三方活栓は、ポリカーボネート樹脂の分子量が小さいほど割れやすくなるということが明らかとなった。このことより、医療機器メーカーに樹脂の分子量を大きくすることを要求・提案することで、三方活栓の破損頻度が低くなると思われる。
その他のインパクト
滅菌処理によるDEHPの分解物生成が明らかとなったことより、MEHPの詳細な毒性評価を必要とすることが明らかとなり、今後、医療機器の安全性を評価する上での方向性を示すことができた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
10件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
米国FDAとの共同研究に繋がった

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Takatori S, Nakazawa H, Hori S. et al.
Determination of di(2-ethylhexyl)phthalate and mono(2-ethylhexyl)phthalate in human serum using liquid chromatography-tandem mass spectrometry.
Journal of Chromatography, B: Biomedical Applications. , 804 (2) , 397-401  (2004)
原著論文2
Haishima Y, Tsuchiya T, Nakazawa H. et al.
Development of the simple method for predicting the levels of di(2-ethylhexyl)phthalate migrated from PVC medical devices to pharmaceutical solutions.
International Journal of Pharmaceutics. , 288 , 177-183  (2005)
原著論文3
R. Ito, F. Seshimo, H. Nakazawa et al.
Reducing the migration of di-2-ethylhexyl phthalate from polyvinyl chloride medical devices.
International Journal of Pharmaceutics. , 303 , 104-112  (2005)
原著論文4
R. Ito, F. Seshimo, H. Nakazawa et al.
High-throughput determination of mono- and di(2-ethylhexyl)phthalate migration from PVC tubing to drugs using liquid chromatography-tandem mass spectrometry.
Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis. , 39 , 1036-1041  (2005)
原著論文5
R. Ito, F. Seshimo, H. Nakazawa et al.
Effect of sterilization process on the formation of mono(2-ethylhexyl) phthalate from di(2-ethylhexyl) phthalate.
Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis. , 41 (2) , 455-460  (2006)

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-