文献情報
研究課題名
医薬品等の市販後における有効性、安全性の評価方法に関する研究
研究代表者(所属機関)
竹内 正弘(北里大学薬学部臨床統計部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究報告書(概要版)
研究報告書(紙媒体)
文献情報
研究課題名
医薬品等の市販後における有効性、安全性の評価方法に関する研究
研究代表者(所属機関)
竹内 正弘(北里大学薬学部臨床統計部門)
研究分担者(所属機関)
- 矢後 和夫(北里大学病院薬剤部)
- 水口 和生(徳島大学病院薬剤部)
- 森口 博基(徳島大学病院医療情報部)
- 木平 健治(広島大学病院薬剤部)
- 森下 秀樹(国立循環器病センター薬剤部)
- 吉野 信次(国立国際医療センター診療部)
- 青木 誠(国立病院東京医療センター診療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究報告書(概要版)
研究目的
我が国での市販後調査の中でも、特に使用成績調査は治験とは異なり、患者の条件を規定しない適正使用情報を提供する重要な情報源である。これらの情報は安全性について緊急を要する場合を除いては、承認後4-10年後に再審査結果として公表されるのみで、迅速に医療現場に役立つ情報源として活かせていない。医療機関の電子化された処方箋情報、検査情報、患者情報、診療情報を有機的に連携し解析することにより、これまでより迅速かつ効率的に適正使用情報を医療現場に提供することが可能となる。本研究では、解析ツールの開発、当該ツールのバリデーションを、国内の公的病院を中心とした病院(拠点病院)において実施する。電子化された医療情報を効率的に収集・解析する方法について調査し、各医療機関で利用するとともに、多施設の情報を集積することにより、国内でよりよい医療を推進することを目的とするものである。
研究方法
初年度は、情報システムフォーマット・データ統合方法・電子化されていない情報の電子化等の現状問題を把握するため、全国の病院へアンケート調査を行うとともに、協力6施設の実態調査を実施した。第2年度は、高脂血症治療薬をモデル薬剤として、各施設内で必要な情報が電子的に収集可能かを検討し、システム構築を検討するプロトコルの原案を作成した。最終年度は協力施設の倫理委員会の承認を得たうえで各施設の医療情報データ抽出を行い、主任研究者の下でデータ統合・解析を行った。
結果と考察
初年度のアンケートにより、医師の所見・有害事象報告等人が判断した結果が電子的に保存されていない傾向が明らかになった。また最終年度のデータ統合にあたり、本研究の場合には、各施設内で電子的に統合された個人情報を共通化し多施設間で統合するための共通変換を行うことで、異なる医療情報管理システムでも抽出した医療情報を統合することが可能となった。但し医療情報のコード化が相違している場合は、統合が不可能であるという問題点が判明した。また、現時点においては疫学研究において電子的データ利用に関する倫理指針が明記されていないため、倫理指針の解釈が施設間で異なった。
結論
多施設における電子化情報の収集・解析を行うためには医療情報の共通コード化が必要となる。また疫学研究の倫理指針は施設間で同じ様に解釈・運用がなされる必要があり、IRBの共通審査体制が早急に求められる。施設の承認時期が異なることにより、有効性はあるが副作用で問題のある新薬に関して、医療現場への医療情報還元に時間がかかり、ひいては患者の安全対策が遅れることが懸念される。
研究報告書(紙媒体)
行政効果報告
成果
専門的・学術的観点からの成果
本研究の目的は、医療機関において既存する患者情報・処方箋情報、診察情報等の電子化情報を検証
し、これら情報を医療機関間で連結し、医薬品の適正使用情報を効率的かつ迅速に評価できる情報収集・解析システムを構築することにある。本研究では、高脂血症治療薬をモデル薬剤に選択しパイロット研究を行い、実際に協力5施設の患者医療情報を電子的に統合しデータ解析を行い、有効性のデータを収集することができた。
臨床的観点からの成果
本研究では、有効性として総コレステロールが解析項目に選定し、線形混合効果モデルを応用したデータ解析の結果、投薬による総コレステロール値の時系的な減少、総コレステロール値に影響を及ぼす重要な因子が推察された。この結果よりモデル薬剤の臨床現場での効能、投薬によって恩恵を受ける患者層が推察された。臨床現場に携わっている関係者、患者にとっては、非常に有益な情報であると考えられる。
その他行政的観点からの成果
市販後調査としては、使用成績調査、特別調査、市販後臨床試験が実施されてきた。しかしながら、承認後4-10年後に再審査結果として公表されるのみで、迅速に医療現場に還元できる情報源とは言い難い。本研究で提言したように多施設間で電子化された医療情報が統合できるシステムが構築できれば、第三者(医師または企業)の判断を介せず、直接医療現場からのデータが収集・解析できることになる。また、集計、解析された結果は随時医療現場に還元できることになり、国内におけるよりよい医療の推進の一助となるものと考える。
発表件数
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
特許
主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)