生殖医療技術の法的規制状況等の各国比較に関する研究

文献情報

文献番号
199700119A
報告書区分
総括
研究課題名
生殖医療技術の法的規制状況等の各国比較に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
勝島 次郎(三菱化学生命科学研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
1,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
体外受精、出生前診断といった生殖医療関連技術の研究と実施に対して、わが国でも医療関係者や関係団体などから倫理規定や法的規制制度の検討を要望する声が上がっていることに鑑み、すでにそうした倫理規定や法制度を設けている欧米主要国の現状について正確に把握し、日本における今後の検討の土台を提供する。
研究方法
イギリス、ドイツ、スイス、フランス、スウエーデン、アメリカ合衆国及び国際機関における、生殖関連技術に対する取り組みについて最新の動向を調査・分析し、比較する。
結果と考察
各国の法規制の特徴は、およそ次の四つに分類できる。まず許される範囲が厳しく限られていて「禁止的規制」といえる国。ドイツ、オーストリアがこれにあたる。次いで、実施項目はそれほど厳しく限られてはいないものの、実施施設の許可制などと併せ制限的な側面の強い「慎重な規制」を敷く国。フランス及び北欧諸国がこれにあたる。さらに、実施制限は最小限度にして、一件ごとの審査と監査でコントロールを行おうとする「リベラルな規制」をとる国。イギリスがその代表である。最後に、当事者・関連医学界の自主規制に委ね、国家としては「自由放任 レッセフェール」を方針とする国。アメリカ合衆国がその最たるもので、ヨーロッパではイタリアがそうだった(イタリアは1997年のクローン論議の後、生殖技術と併せた包括的な規制立法を行うと宣明したが、まだ実現に至っていない)。
規制の個々の内容で、自由放任以外の主要国間で一致しているのは以下の点である。まず第三者の精子提供はほぼ全ての国で認められている。非商業化の原則も全ての国で守られている。代理出産契約もほとんどの国で(アメリカでもいくつかの州で)無効とされている。さらに、ほとんどの国で実施施設の許可制が敷かれている。
主要国間で対応に違いがあるのは、以下の点である。まず、生殖補助医療により生まれた子供に、提供者などの情報へのアクセスを認めるかどうか。ドイツ、イギリスはこれを広く認めるが、フランスは主治医を介した匿名の、医療情報のみしか認めない。次いで、受精卵及び卵の提供を認めるかどうか。受精卵の実験利用をどこまで認めるか。これらの点では、ヨーロッパ主要国の間ですら、コンセンサスは得られそうにない。
結論
以上、欧米主要国の生殖技術の法的規制状況をみてみると、フランスやイギリスのような、実施施設の許可制と活動報告=評価制による行政管理を主体にした規制が、関連医学・技術の進展を不必要に妨げることなく社会的なコントロールを可能にする、最も適正な国の関与のあり方だと思われる。

公開日・更新日

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