ハーブに関する安全性の研究

文献情報

文献番号
199700118A
報告書区分
総括
研究課題名
ハーブに関する安全性の研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
高仲 正(昭和大学薬学部)
研究分担者(所属機関)
  • 佐竹元吉(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 大浜宏文(ネイチャーズサンシャイン株式会社)
  • 石橋達也(日本大衆薬工業協会)
  • 稲垣尚起(日本健康栄養食品協会)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ハーブ(生薬等)は、比較的や薬理作用の緩和なものから、医薬品として疾病の治療に用いられるものまで広範囲に存在する。我が国において、主要なハーブはその成分をもって医薬品として取り扱われるか、又は、カプセル等の医薬品的な形状を用いた場合には医薬品として取り扱われている。一方、海外の状況は、欧州主要国においてはハーブは主として医薬品として扱われているのに対して、米国では食品としての取り扱いが可能である。また、FAO/WHO合同食品規格委員会(コーデックス)において、その取り扱いを現在検討している段階である。このように、ハーブの取り扱いについての国際的な動向は未だ定まっていないものの、近年の健康志向の高まりよる需要の増加、海外からの規制緩和の強い要望がある。また、実際、これまで我が国において全く未知であるハーブが輸入され流通している実態があり、今後ますます増加することが十分に予想される。よって、新たな取り扱いが求められている。一方、医薬品として取り扱っているハーブを食品として取り扱うこととなった場合には、食品として食される場合と異なり、その抽出物や乾燥物を医薬品的な形状(カプセル等)を用いて服用するため、その成分が大量に摂取されることとなる。また、実際、米国の食品のハーブで安全性の警告がでていることなどから、その対応には、安全性についての十分な注意が不可欠である。また、覚醒作用等をもつ物質が多く存在するため、その使用目的にも十分に留意しなければならない。よって、現行医薬品として取り扱っているハーブ及び国内に存在しないハーブを対象に、その安全性について、文献データを基にして科学的な検討を行う。また、必要に応じてハーブの成分分析・解析して検討を行う。これらの結果に使用目的も含めてハーブの安全性の研究を総合的に行うものである。
研究方法
ハーブの規制、流通、栄養所要量の実態について文献調査を行うとともに、文献等を基に、安全性に関する検討を行った。また、文献等の検索においては、適切かつ評価に耐えうる文献であることに留意した。検討には、臨床医、地方行政官、関係業界団体の代表者に参加を求め各立場からの意見が反映されるよう配慮した。
今回の文献等により安全性に関して評価を行った資料には、個々のハーブの安全性を食品として取り扱ったものはなく、医薬品的に取り扱ったものにより評価を行った。○エキナケアの使用部位は根(及び地上部)であり、得られた文献からは、免疫機能についての作用を研究したものが多い。検討した文献からは、主な安全性情報として、皮膚アレルギー症状、不快な味覚がある。○エゾウコギは、使用部位は根、根茎であり、中国、旧ソ連及び日本では医薬品として使用経験がある。検討した文献からは、主な安全性情報として、特に副作用等はなかった。○パウダルコは、西インド諸島、南アメリカなどの原住民により伝統的に民族薬として使用されていた。樹皮、葉を使用部位としており、木部はほとんど使用されていない。しかし、伝統的な使用における安全性に関する情報は見いだせていない。○ノコギリヤシは、ヨーロッパでは医薬品として広く承認され、前立腺肥大症の治療薬に使用されており、アメリカでも以前は米国薬局方に収載されていた。今回検討した文献では、前立腺肥大患者に医薬品製剤として投与したデータが多い。検討した文献より、主な作用安全性情報としては、頭痛、胃腸障害等がある。○マリアアザミは、伝統的に葉の部分はヨーロッパで食用にされており、種子は肝障害等の治療に用いられてきた。種子の部分には「シリマリン」というフラボノリグナン類の混合物が4~6%含まれている。検討した文献ではシリマリンを抽出した製剤を使用している例がほとんどである。検討した文献より、主な安全性情報として副作用等はなかった。○イチョウ葉:イチョウ葉は、中国では伝統的に葉の部分を医薬品として取り扱っており、喘息等の治療に使用されていた。使用部位としては葉を用いる。検討した文献より、主な安全性情報として胃腸障害、頭痛、不眠等の副作用が現れた。○セイヨウオトギリソウ:セイヨウオトギリソウの使用部位は、花を含む地上部であり、抗うつ剤としての研究がされている。検討した文献より、主な安全性情報として、光毒性、胃腸障害、アレルギー反応、疲労感等の副作用が認められた。○メマツヨイグサ(月見草):メマツヨイグサは、使用部位は種子であり、入手した文献はいづれも種子油を使用したデータであるので、種子に限定して評価を行った。検討した文献より、主な安全性情報として副作用は認められなかった。
○ゴールデンシールは、伝統的に健胃薬、洗眼薬として使用されていた。また、リウマチ痛や筋肉痛の治療薬、として使用されてきた。現在は市販の殺菌洗眼料の原料に用いている。使用部位は根、根茎とされている。検討した文献より、主な安全性情報として、嘔吐、下痢等の副作用がある。○キャッツクロウは伝統的には南アメリカで内蔵炎症、悪心、悪寒などの治療に樹皮の部分を用いていた。米国の国立癌研究所の調査研究の結果では抗癌及び免疫刺激作用が確認されている。
結果と考察
結論
エキナケアは医薬品として使用されている実態はあるが、作用としては弱く、問題となる毒性データは認められない。○エゾウコギは、調査した範囲において、作用はあるが、問題となる毒性データは認められない。○パウダルコ は、全体的に安全性に関する資料が不足している。ただし、Tabebuia種の木部(wood)には主にナフトキノン類であるラパコールが含まれており、これは、低用量で吐き気や嘔吐を生じる等の強い毒性が報告されている。○ノコギリヤシは、医薬品として使用実態がある作用は弱いと認められる。○マリアアザミは、調査した範囲において、医薬品としての使用実態はあるが、作用としては弱いと認められる。○イチョウ葉は、調査した範囲において、イチョウ葉抽出物は医薬品としての使用実態があり、作用が認められる。○セイヨウオトギリソウは、調査した範囲において、医薬品としての使用実態があり、作用が認められる。○メマツヨイグサ(月見草)は、調査した範囲において、種子油を投与したデータでは、安全性上特に注意すべき作用は現れていない。○ゴールデンシールは、調査した範囲において、安全性上、危惧される作用があると認められる。○キャッツクロウ は、一般的にはアルカロイドは免疫刺激効果、抗高血圧効果、利尿効果、平滑筋弛緩及び局所麻酔効果があると報告されているが、全体的に安全性に関する資料が不足している。

公開日・更新日

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