新規培養細胞系を用いたアレルゲン性評価試験法に関する研究

文献情報

文献番号
200501059A
報告書区分
総括
研究課題名
新規培養細胞系を用いたアレルゲン性評価試験法に関する研究
課題番号
H17-食品-014
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
中村 亮介(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
3,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、アレルギー反応において重要な役割を果たすマスト細胞が発現する高親和性IgE受容体(FcεRI)の架橋に基づくユニークな活性化メカニズムに着目し、単純にIgEとアレルゲンとの結合を調べる従来の試験法とは全く異なる原理に基づいた新しいアレルゲン性評価試験法を開発し、これにより食品の加熱・消化等の加工によるアレルゲン性の変化を定量的に解析できる系を確立することで、食品の安心・安全確保に貢献しようというものである。
研究方法
ラット培養マスト細胞株RBL-2H3細胞にヒトFcεRIα鎖遺伝子を導入し、薬剤選択および限界希釈法により安定発現株RBL-hEIa-2B12細胞を樹立した。この細胞のIgE架橋による活性化を、β-hexosaminidase酵素の放出を指標とする脱顆粒反応、ならびにfura-2 AMによるカルシウム応答により解析した。IgEは、精製IgEおよびアレルギー患者血清中IgEを用いた。次に、ヒト上皮増殖因子受容体(EGFR)cDNAをRT-PCR法によって得、FcεRIαとのキメラ受容体遺伝子を作製した。転写因子Elk1によりレポーター分子ルシフェラーゼの発現が誘導されるHeLa細胞(HLR-Elk1細胞)に上記遺伝子を導入し、共焦点レーザ顕微鏡ならびにフローサイトメトリーによりヒトIgEの結合を解析した。また、デュアルレポーターアッセイによりElk1活性を測定した。
結果と考察
RBL-hEIa-2B12細胞は細胞膜上にヒトFcεRIαを安定的に発現し、精製ヒトIgEおよび抗ヒトIgE抗体により受容体を架橋することによって、脱顆粒反応およびカルシウム応答を誘導できることが分かった。また、補体を非働化したアレルギー患者血清で18細胞を時間感作してこれを抗ヒトIgE抗体で架橋すると、脱顆粒反応が惹起された。これに基づいて血清中IgE量を測定したところ、酵素免疫法によって得られた値とよく相関する結果を得た。一方、キメラ受容体遺伝子を作製しHLR-Elk1細胞に発現させたところ、細胞表面へのヒトIgEの特異的な結合が観察され、感作IgE量に応じたルシフェラーゼの発現が認められた。
結論
ラットおよびヒトの培養細胞を用いた、受容体の架橋を検出することのできる新しいアレルゲン性評価試験法の基礎を確立した。次年度における条件の最適化と患者血清を用いた系への応用が望まれる。

公開日・更新日

公開日
2006-10-10
更新日
-