既存添加物等における遺伝毒性評価のための戦略構築に関する研究

文献情報

文献番号
200501050A
報告書区分
総括
研究課題名
既存添加物等における遺伝毒性評価のための戦略構築に関する研究
課題番号
H15-食品-009
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
林 真(国立医薬品食品衛生研究所変異遺伝部)
研究分担者(所属機関)
  • 中嶋 圓(財団法人食品農医薬品安全性評価センター)
  • 長尾 美奈子(共立薬科大学)
  • 田中 憲穂(財団法人食品薬品安全センター・秦野研究所)
  • 葛西 宏(産業医科大学)
  • 佐々木 有(八戸工業高等専門学校)
  • 本間 正充(国立医薬品食品衛生研究所変異遺伝部)
  • 太田 敏博(東京薬科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
13,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品添加物をはじめとする食品関連物質の遺伝毒性試験結果を評価し,解釈するための統一的な戦略を構築することを目的とし,戦略構築のために不可欠なデータを新たな試験を実施することにより入手する.なお,構築された戦略を国際的なものとするため,海外の専門家を含めて議論し,最終結果を国際誌に発表することを最終目的とする.
研究方法
専門家集団である日本環境変異原学会に「食品および食品添加物に関する遺伝毒性の検出・評価・解釈」に関する臨時委員会の協力を得,合同で定期的に会合を持ち,戦略に関する話し合いを続けてきた.さらに,戦略構築上重要と考えられるデータが欠落している場合には,実際の実験を行った.
結果と考察
既存添加物の安全性に関しても,最大の懸念は発がん性である.発がん性が認められた場合,その発生機序に遺伝毒性が関与するか否かによって,安全に対する重みが大きく異なるのが現状である.すなわち,発がんの発生機序が遺伝毒性である場合には閾値は存在しないものと見なされる一方,発がん機序が遺伝毒性でない場合には閾値の存在が仮定され,1日摂取許容量が設定される.遺伝毒性試験の結果を正しく「評価する基準」および「発がん性に繋がる事象か否かを判定するための戦略」が古くから議論されているが,確立されていないのが現状である.
結論
食品関連物質の遺伝毒性の評価,解釈をするための戦略を構築するため,日本環境変異原学会の臨時作業委員会と共同し,研究班の統一的な考え方について検討を続けた.また,議論の途上で必要とされる実験を行い,戦略構築のための基礎資料とした.本年度は閾値問題に焦点を絞り,国際シンポジウムを開催すると共に,遺伝毒性発がん物質にも生物学的な閾値の存在を仮定できることを示唆する結果を得た.

公開日・更新日

公開日
2006-10-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200501050B
報告書区分
総合
研究課題名
既存添加物等における遺伝毒性評価のための戦略構築に関する研究
課題番号
H15-食品-009
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
林 真(国立医薬品食品衛生研究所変異遺伝部)
研究分担者(所属機関)
  • 中嶋 圓(財団法人食品農医薬品安全性評価センター)
  • 長尾 美奈子(共立薬科大学)
  • 田中 憲穂(財団法人食品薬品安全センター・秦野研究所)
  • 葛西 宏(産業医科大学)
  • 佐々木 有(八戸工業高等専門学校)
  • 本間 正充(国立医薬品食品衛生研究所変異遺伝部)
  • 太田 敏博(東京薬科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品添加物をはじめとする食品関連物質の遺伝毒性試験結果を評価し,解釈するための統一的な戦略を構築することを目的とし,戦略構築のために不可欠なデータを新たな試験を実施することにより入手する.なお,構築された戦略を国際的なものとするため,海外の専門家を含めて議論し,最終結果を国際誌に発表することを最終目的とする.
研究方法
日本環境変異原学会の「食品および食品添加物に関する遺伝毒性の検出・評価・解釈」臨時委員会と協力し,本研究と合同の定例検討会議を頻繁に開催した.定例会の課題に応じ,その分野での専門家を招聘し,戦略構築に必要な基礎知識等の蓄積に努めた.また,本戦略を国際的なものにするため国際コンサルテーション会議を開催し,海外の専門家による提案等を受けた.また,必要に応じ,実際の実験を行い,遺伝毒性の情報収集につとめたが,その方法に関してはガイドライン等で定められた標準的な手法を用いた.
結果と考察
食品関連物質の遺伝毒性の評価,解釈をするための戦略を構築するため,日本環境変異原学会の臨時作業委員会と共同し,定例の班会議を原則として毎月開催し,研究班の統一的な考え方について検討を続けた.また,昨年度末の国際コンサルテーション会議の報告書を検討し,海外の指導的立場にある研究者と議論を行っている.閾値論に関しては,生物学的閾値に関する考えを取り込み,DNA直接作用性の遺伝毒性物質についても,現実面での閾値を示唆するような結果を得た.
結論
食品関連物質の遺伝毒性の評価,解釈をするための戦略を構築するため,日本環境変異原学会の臨時作業委員会と共同し,研究班の統一的な考え方について検討を続けた.また,構築する戦略を国際的なものとするため,国際コンサルテーション会議,国際シンポジウム等の開催を行った.閾値論に関しては,生物学的閾値に関する考えを取り込み,DNA直接作用性の遺伝毒性物質についても,現実面での閾値を示唆するような結果を得た.これらの情報をまとめ,遺伝毒性の評価を総合評価に組み込む場合の手法として安全係数による関与を提案した.

公開日・更新日

公開日
2006-10-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200501050C

成果

専門的・学術的観点からの成果
これまで,遺伝毒性には閾値が無いものとの考えの基に食品関連物質始め,多くの化学物質の安全性評価が行われてきた.ただし,暴露量の概念が入っていないため,厳しすぎる評価が行われた可能性がある.今回のプロジェクトで,DNAの修復機構に基づく生物学的な閾値を評価に組み入れる妥当性が評価され,今後の厚生労働行政に果たす役割は大きいものと考える.また,シンポジウム等を繰り返し開催することにより,問題点を一般大衆に対してアピールすることができた.
臨床的観点からの成果
食品添加物等,食品関連物質の安全性評価に関し,現実的側面からより正当な評価が可能となった,と考える.今後は,食品関連物質のみならず,さらに幅広い生活関連物質に適応し,より正当な評価が可能になるものと考える.
ガイドライン等の開発
最近,遺伝毒性の閾値に関する議論が頻繁にされるようになっており,今回の研究で得られた情報は将来の議論に役立つものと考える.医薬品に関しては,ICHの場において遺伝毒性(S2)の見直しが検討され始めている.また,OECDの試験ガイドラインの再検討についても問題提起されており,そのような議論の場において今回の研究は重要な位置を占めるものと考えられる.
その他行政的観点からの成果
現時点においては,直接行政に反映されていないが,食品安全委員会の食品安全モニター会議において,我々の考え方を紹介した.今後,我々の考え方が広く受け入れられるよう,努力を継続する.
その他のインパクト
国際シンポジウム「食品関連物質等のリスクアセスメント戦略-遺伝毒性に閾値はあるのか」2004年2月14日 国際研究交流会館
国際シンポジウム「環境因子,特に遺伝毒性発がん物質の閾値:安全と安心の接点を目指して」2006年3月15-16日 神戸国際会議場
その他,日本環境変異原学会,トキシコロジー学会等で遺伝毒性の閾値に関するシンポジウムを開催

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
17件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
18件
学会発表(国際学会等)
12件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
4件
シンポジウム4件(内、国際シンポジウム2件)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
林真,長尾美奈子,祖父尼俊雄,他
「食品及び食品添加物に関する遺伝毒性の検出・評価・解釈」に関する臨時委員会の活動中間報告
Environ. Mutagen Res. , 26 , 275-283  (2004)
原著論文2
長尾美奈子,日本環境変異原学会臨時委員会
リスクアセスメントの現状と展望-食品添加物の立場から
Environ. Mutagen Res. , 26 , 193-198  (2004)
原著論文3
祖父尼俊雄,能美健彦,林真,他
遺伝毒性:DNA直接作用物質に閾値は存在するのか?!
Environ. Mutagen Res. , 27 , 61-73  (2005)
原著論文4
Asano, N., Torous, D., Hayashi, M. et al
Practical threshold for micronucleated reticulocyte induction observed for low doses of mitomycin C, Ara-C and colchicine.
Mutagenesis , 21 (1) , 15-20  (2006)
原著論文5
Ishikawa, S., Sasaki, Y. F., Kawaguchi, S. et al
Characterization of Genetoxicity of Kojic Acid by Mutagenecity in Salmonella and Micronucleus Induction in Rodent Liver.
Genes and Environment , 28 (1) , 31-37  (2006)
原著論文6
Koyama, N., Sakamoto, H., Hayashi, M. et al
Genotoxicity of acrylamide and glycidamide in human lymphoblastoid TK6 cells.
Mutat. Res. , 603 , 151-158  (2006)
原著論文7
Torous, D., Asano, N., Hayashi, M. et al
Performance of flow cytometric analysis for the micronucleus assay - a reconstruction model using serial dilutions of malaria infected cells with normal mouse peripheral blood.
Mutagenesis , 21 , 11-13  (2006)

公開日・更新日

公開日
2013-05-27
更新日
-