適正な放射線医療を確保するための評価基準の指標に関する研究

文献情報

文献番号
199700116A
報告書区分
総括
研究課題名
適正な放射線医療を確保するための評価基準の指標に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
澤田 純一(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 古賀佑彦(藤田保健衛生大学医学部放射線学教室)
  • 菊池透(自治医科大学RIセンター)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国際放射線防護委員会(ICRP)1990年勧告の国内関係法令の取り入れについて放射線審議会で審議され、中間報告が提出された。放射線業務従事者である放射線診療従事者の線量限度の引き下げに加えて、放射線管理区域境界の線量規制の基準値を現行法令の1/3に引き下げる内容となっている。この基準値は、放射線施設、管理区域設定に関して遮へい設計に活用されるものである。したがって、エックス線発生装置などにおける線量算定方式については、科学的根拠に基づく適正かつ現実的な遮へい算定評価法の構築が重要である。現行法令の過大な安全側評価は、過剰な設備投資のみならず放射線医療の不安を惹起するものであり、国民の保健医療にとって好ましくない。本研究は、診療用エックス線発生装置における遮へい計算モデル、算定に用いる適正なパラメータの選択などについて検討し、合理的な線量評価算定方式の再構築を目的とする。
研究方法
病院内における診療用エックス線発生装置室の管理区域の外側における線量測定と理論的算定方式の比較検討を行い、併せてエックス線診療室の遮へい計算で線量評価する場合における現状と問題点、遮へい計算の基本的な考え方、遮へい線量の算定評価のためのパラメータの選択、線源の条件および被ばく者の条件などを考慮した合理的な遮へい計算モデルなどを検討した。
結果と考察
健政第383号に基づく理論的算定方式による診療用高エネルギー発生装置管理区域の線量は、13施設の全てが現行法令の1/3を超えると算定されたが、実測値は1施設のみがこの基準値を超えた。したがって、現行法令に基づく算定方式は過大に安全側で評価されていた。このため、合理的な線量算定方式を構築する場合に留意すべき事項、および評価のポイントについて検討した結果を以下のようにまとめられる。
1 外部放射線防護に用いるための換算係数:外部被ばくのモニタリング線量には、1cm線量当量が用いられるが、現行の1cm線量当量から実効線量への換算係数として、光子エネルギー不明の場合に1.74倍が適用されている。この値は、ICRP Publ. 51(1987)に基づいたものであり、光子エネルギー60keV付近の最大換算係数を用いている。実測値から推定されるように、この換算係数は過大評価されていた。本研究における山口らのモデルを用いた検討では、1.43がより現実に近い係数として評価した。だだし、この値は、放射線が100%が身体影響の最も大きい正面から被ばくされたとの仮定に基づく評価である。したがって、放射線作業時の行動などを加味した係数を採用する。
2 エックス線発生装置の稼働条件:届け出算定の条件として、装置の最大出力を発生源の基本にしている。しかしながら、実稼働の条件は、最大出力よりも低い負荷で操作されており、現実の算定条件としては過大評価されている。したがって、病院などの利用の条件を基本にして評価すべきである。また、電圧の条件、電流、発生時間等の変化も考慮する必要性を提起した。
3 遮へい計算に用いる場所と距離:エックス線発生源から線量評価を行う場所は、装置が隣接する最短距離の壁面での評価が義務づけられている。しかし、実際に人が被ばくする可能性があり、多く滞在する場所での評価が放射線の人への影響として重要である。また、外側画壁の境で計算することになっているが、現実的には壁に密着して滞在することはあり得ない。したがって、人が行動する距離を考慮する。 
4  遮へい計算モデルの再構築:健政第383号における遮へい計算は、管理区域の週間線量限度300μSv/週を担保することを基本として、遮へいの材質、厚さ等を確保するための算定式である。現実の病院内は、放射線種の異なる複数の装置が混在している。したがって、これらを複合的評価が可能な遮へい計算方式が必要となる。そのために、1~3を含めた新しい遮へい計算モデルの再構築が次の課題となる。
結論

公開日・更新日

公開日
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更新日
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研究報告書(紙媒体)