熱媒体の人体影響とその治療法に関する研究

文献情報

文献番号
200501036A
報告書区分
総括
研究課題名
熱媒体の人体影響とその治療法に関する研究
課題番号
H15-食品-001
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
古江 増隆(九州大学 大学院医学研究院皮膚科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 赤峰 昭文(九州大学 大学院歯学研究院口腔機能修復学講座歯内疾患制御学研究分野)
  • 飯田 隆雄(福岡県保健環境研究所 保健科学部)
  • 飯田 三雄(九州大学 大学院医学研究院病態機能内科学分野)
  • 石橋 達朗(九州大学 大学院医学研究院眼科学分野)
  • 石丸 忠之(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科生殖病態生理学)
  • 今村 知明(東京大学 医学部附属病院企画情報運営部)
  • 岩本 晃明(聖マリアンナ医科大学 泌尿器科)
  • 片岡 恭一郎(福岡県保健環境研究所 管理部情報管理課)
  • 岸 玲子(北海道大学 大学院医学研究科予防医学講座公衆衛生学分野)
  • 隈上 武志(長崎大学 医学部・歯学部附属病院眼科)
  • 古賀 信幸(中村学園大学 栄養科学部)
  • 佐藤 伸一(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科皮膚科学)
  • 谷脇 考恭(九州大学 大学院医学研究院脳神経病研究施設神経内科)
  • 辻 博(北九州津屋崎病院 内科)
  • 徳永 章二(九州大学 大学院医学研究院予防医学分野)
  • 中西 洋一(九州大学 大学院医学研究院附属胸部疾患研究施設)
  • 中野 仁雄(九州大学)
  • 中堀 豊(徳島大学 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部分子予防医学分野)
  • 中山 樹一郎(福岡大学 医学部皮膚科)
  • 長山 淳哉(九州大学 医学部保健学科)
  • 山田 英之(九州大学 大学院薬学研究院分子衛生薬学分野)
  • 吉村 健清(福岡県保健環境研究所)
  • 吉村 俊朗(長崎大学 医学部保健学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
131,273,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
患者の多くは徐々に症状が軽快しているが、いまだ症状が顕著な患者も多数存在しており、また有効な薬剤がない現在、臨床応用可能な薬剤の臨床試験が望まれている。PCBやPCDF等のダイオキシン類が曝露後長期間経過した場合にどのような影響を人体にもたらすのかは明確ではなく、今後も検診を継続し、注意深い観察と検討が必要である。現在の患者像を把握し、それに基づいて健康を増進することを目的とする。
研究方法
油症検診の実施と検診結果の全国集計を行い、油症患者の皮膚科、眼科、内科、歯科症状について詳細な診察を行い、各検査項目、検診項目について統計学的に解析し、経年変化の有無や変化の傾向について調査する。油症患者体内に残存するPCBs, PCQや PCDFを含めたダイオキシン類を把握するために、血中濃度分析を行う。また基礎的研究を行い、油症発症とその毒性軽減の方法を検討する。患者の健康相談を行いながら、検診を受診していない患者の健康状態を把握するために、油症相談員事業を継続する。患者の油症症状を軽減する目的で漢方療法の臨床試験を開始する。
結果と考察
血中ダイオキシン、PCB濃度といくつかの検診項目(症状、検査項目)との間に統計学的に有意な関連を示し、油症原因物質が、37年経過した現在でも油症患者の健康状態に影響を与えている事が示された。基礎的研究ではPCB/ダイオキシン類はarylhydrocarbon recepotor (AhR)を介する経路で酸化ストレスを引き起こすことが明らかとなり、また抗酸化作用を有するとされる食品成分をダイオキシン類と共に曝露すると、酸化ストレスは低下することが示された。またポリフェノールの一種であるレスベラトロールが、ダイオキシン毒性を一部軽減し得ることが動物実験において明らかになった。研究を通じて明らかになった様々な事実については論文化し、日本語、英語でホームページに掲載し、また油症新聞を創刊した。油症患者に漢方薬による臨床試験を開始し、今までのところ重大な副作用は認められず、今後、対象患者を拡大し、継続する予定である。
結論
今後も、本研究を通して、PCB/ダイオキシン類による健康障害を明らかにし、その治療法を確立し、患者の健康増進に務める。

公開日・更新日

公開日
2006-10-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200501036B
報告書区分
総合
研究課題名
熱媒体の人体影響とその治療法に関する研究
課題番号
H15-食品-001
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
古江 増隆(九州大学 大学院医学研究院皮膚科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 赤峰 昭文(九州大学 大学院歯学研究院口腔機能修復学講座歯内疾患制御学)
  • 飯田 隆雄(福岡県保健環境研究所 保健科学部)
  • 飯田 三雄(九州大学 大学院医学研究院病態機能内科学分野)
  • 石橋 達朗(九州大学 大学院医学研究院眼科学分野)
  • 石丸 忠之(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科生殖病態生理学)
  • 今村 知明(東京大学 医学部附属病院企画情報運営部)
  • 今村 直樹(長崎大学 医学部眼科)
  • 岩本 晃明(聖マリアンナ医科大学 泌尿器科)
  • 大八木 保政(九州大学 大学院医学研究院脳神経病研究施設神経内科)
  • 片岡 恭一郎(福岡県保健環境研究所 情報管理部情報管理課)
  • 片山 一朗(大阪大学 大学院医学系研究科皮膚科)
  • 岸 玲子(北海道大学 大学院医学研究科予防医学講座公衆衛生学分野)
  • 隈上 武志(長崎大学 医学部・歯学部附属病院眼科)
  • 古賀 信幸(中村学園大学 栄養科学部)
  • 佐藤 伸一(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科皮膚科学)
  • 谷脇 考恭(九州大学 大学院医学研究院脳神経病研究施設神経内科)
  • 辻 博(北九州津屋崎病院 内科)
  • 徳永 章二(九州大学 大学院医学研究院予防医学分野)
  • 中西 洋一(九州大学 大学院医学研究院附属胸部疾患研究施設)
  • 中野 仁雄(九州大学)
  • 中堀 豊(徳島大学 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部分子予防医学分野)
  • 中山 樹一郎(福岡大学 医学部皮膚科)
  • 長山 淳哉(九州大学 医学部保健学科)
  • 古谷 博和(国立病院機構大牟田病院 神経内科)
  • 増田 義人(第一薬科大学)
  • 宮村 紀毅(国立病院機構長崎医療センター 眼科)
  • 山口 直人(東京女子医科大学 衛生学公衆衛生学第二教室)
  • 山田 英之(九州大学 大学院薬学研究院分子衛生薬学分野)
  • 吉村 健清(福岡県保健環境研究所)
  • 吉村 俊朗(長崎大学 医学部保健学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
PCBやPCDF等のダイオキシン類が曝露後長期間経過した場合にどのような影響を人体にもたらすのかは明確になっておらず、今後も検診を継続し、注意深い観察と検討が必要である。また有効な薬剤がない現在、臨床応用可能な健康食品を含めた薬剤の臨床試験が望まれている。
研究方法
油症検診を実施し、油症患者の症状、各検査項目、検診項目について統計学的に解析する。油症診断基準の再評価のために「油症診断基準再評価委員会」を開催し、検討する。未認定者に対して、全国班診定委員会を開催し、総合的に評価し、診定を行う。油症相談員制度を継続する。油症の次世代に及ぼす影響に関する検討や油症発症機序や油症原因物質の体外排泄促進に関する基礎的研究を行う。本研究を通じて得られた知識で、情報公開可能なものについては極力情報公開につとめる。パンフレット、ホームページを開設し、新聞を発行する。漢方方剤を用いた臨床試験をスタートさせる。
結果と考察
油症はPCBとPCDFの混合中毒であり、2004年9月29日にPCDFに関する項目を追加した新しい診断基準を作成した。油症発生後30年以上が経過した現在でも多くの検診所見、検査項目と相関がみられた。油症相談員による聞き取り調査を行い、統計学的に解析した結果、油症においては他の曝露例のような出生男女比の低下は認められなかった。油症の発症機序についての基礎的研究を行い、ダイオキシン類の酸化ストレスの誘導経路が明らかになった。ダイオキシンの生殖器の異常についてもその要因の一つが明らかになった。また、油症の症状を緩和する目的で油症患者を対象に漢方療法の臨床試験が2005年から始まり、順調に進んでいる。
結論
血中PCDFを診断基準に加え、従来の診断基準では認定し得なかった25名が新たに認定された。PCB, PCDFは複数の検査項目や検診所見と強い相関を示しており、油症がPCBとPCDFの混合中毒であることが改めて明らかとなった。本研究を通してPCB/ダイオキシン類による健康障害は相当部分が明らかになりつつあるが、ダイオキシン排泄に関する治療法について、更なる検討を加え、臨床試験を継続して、治療法を確立し、患者の健康増進に務める必要がある。

公開日・更新日

公開日
2006-10-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200501036C

成果

専門的・学術的観点からの成果
油症認定者の血中ダイオキシン類濃度の微量定量を成功させ検診項目に加えることを実現させた。そのことによって、油症認定者のさまざまな臨床症状や検査異常とダイオキシン類との関連を明らかにすることが初めて可能となった。汚染されたカネミ油を摂食した1968年当時の血中濃度を推定できるようになり、PCBやダイオキシン類の人体からの排泄機構の全容を解明できる道筋ができた。

臨床的観点からの成果
油症認定者の血中ダイオキシン類濃度の微量定量によって診断基準の改訂が可能となり、16・17年度に新たに25名の認定者を見出した。ダイオキシン類を含めた検診結果のデータベースを充実させた。油症相談員制度の充実によって、認定者の協力を得ながら健康状態の正確な把握が可能となりつつある。ダイオキシン類の人体への長期的影響を明らかにする道筋をできた。また、漢方薬による臨床試験を開始した。
ガイドライン等の開発
血中ダイオキシン類(血中2,3,4,7,8-pentachrolodibenzofuran (PeCDF)濃度)を追加することによって診断基準を改訂した。油症そのものの全容を解明する道が拓けたばかりでなく、新たな認定者を発掘できる可能性が大きくなった。
その他行政的観点からの成果
大量のダイオキシン類を摂食した認定者のフォローは、ダイオキシン類の長期的な人体影響を明らかにする上で、極めて重要な課題である。血中ダイオキシン類濃度の微量定量が検診に加わったことは、その課題を明らかにする上で極めて重要な進歩であった。またダイオキシン類による症状や体内濃度を低下させる薬剤の開発の道筋が拓けた。また油症ニュースを発刊し、認定者への情報提供を開始した。
その他のインパクト
血中ダイオキシン類(血中2,3,4,7,8-pentachrolodibenzofuran (PeCDF)濃度)を追加した診断基準の改訂、漢方薬による臨床試験の開始などは大きく新聞報道された。油症に関する著書(邦文、英文)、最近の取り組み(英文)、油症検診の手引き(邦文)はすべてホームページに掲載し、世界に向けて公開している。

発表件数

原著論文(和文)
9件
原著論文(英文等)
31件
その他論文(和文)
14件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
M.furue, T.Uenotsuchi, K.Urabe, et al.
Overview of Yusho
Journal of Dermatological Science Supplement  (2005)
原著論文2
Y.Masuda
Behavior and toxic effects of PCBs and PCDFs in Yusho patients for 35 years
Journal of Dermatological Science Supplement  (2005)
原著論文3
T.Todaka, H.Hirakawa, T.Hori, et al.
Improvement in dioxin analysis of human blood and their concentrations in blood of Yusho patients
Journal of Dermatological Science Supplement  (2005)
原著論文4
H.Tsuji, Y.Ito
Blood chemistry, alpha-fetoprotein and hepatitis B surface antigen in Yusho
Journal of Dermatological Science Supplement  (2005)
原著論文5
Y.Nakanishi, S.Tokunaga, K.Takayama, et al
Cardiac, pulmonary and renal function in Yusho
Journal of Dermatological Science Supplement  (2005)
原著論文6
H.Furuya, T.Yamada, Y.Ohyagi, et al
Neurological signs and symptoms in patients with chronic PCB poisoning(Yusho accident)for more than 36 years
Journal of Dermatological Science Supplement  (2005)
原著論文7
T.Yoshimura, J.Nakano, M.Okita, et al
Complete blood cell counts and blood chemistry in Yusho
Journal of Dermatological Science Supplement  (2005)
原著論文8
T.Nakamura, M.Miyazaki, Y.Ohnishi, et al
Ophthalmic findings in Yusho
Journal of Dermatological Science Supplement  (2005)
原著論文9
I.Hashiguchi, A.Akamine
Oral mucosa and dental findings in Yusho
Journal of Dermatological Science Supplement  (2005)
原著論文10
T.Uenotsuchi, J.Nakayama, M.Furue, et al
Dermatological manifestations in Yusho:correlation between skin symptoms and blood levels of dioxin, such as polychlorinated dibenzofurans(PCDFs) and polychlorinated biphenyls(PCBs)
Journal of Dermatological Science Supplement  (2005)
原著論文11
T.Uenotsuchi, Y.Iio, S.Tadakuma, et al
Sex ratio in the children of Yusho patients
Journal of Dermatological Science Supplement  (2005)
原著論文12
Y.Kanagawa, T.Imamura
Relationship of clinical symptoms and laboratory findings with blood levels of PCDFs in patients with Yusho
Journal of Dermatological Science Supplement  (2005)
原著論文13
S.Tokunaga, T.iida, M.Furue
The concepts of the new criteria for Yusho poisoning
Journal of Dermatological Science Supplement  (2005)
原著論文14
T.Ishida, M.Hori, Y.Ishii, et al
Effects of dioxins on stress-responsive systems and their relevance to toxicity
Journal of Dermatological Science Supplementsi  (2005)
原著論文15
清水和宏, 佐藤伸一
油症認定患者尿中Acroleinの検討
福岡医学雑誌 油症研究報告 第20集   (2005)
原著論文16
上ノ土武,古江増隆,中山樹一郎,他
2003,2004年度の福岡県年次健診による皮膚症状
福岡医学雑誌 油症研究報告 第20集   (2005)
原著論文17
堀 就英,飛石和大,芦塚由紀,他
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)及び高分解能ガスクロマトグラフィー/高分解能質量分析法(HRGC/HRMS)による血中PCB異性体別分析
福岡医学雑誌 油症研究報告 第20集   (2005)
原著論文18
芦塚由紀,中川礼子,平川博仙,他
油症検診における血液中ポリ塩化クアテルフェニルの分析
福岡医学雑誌 油症研究報告 第20集   (2005)
原著論文19
太田千穂,原口浩一,加藤善久,他
2,3',4,4'5-五塩素化ビフェニル(CB118)のモルモット肝ミクロゾームによる代謝
福岡医学雑誌 油症研究報告 第20集   (2005)
原著論文20
J.Nagayama, T.Takasuga, H.Tsuji, et al
Promotive Excretion of Causative Agents of Yusho by One Year Intake of FBRA in Japanese Peaople
Fukuoka Acta Medica  (2005)

公開日・更新日

公開日
2013-05-27
更新日
-