食品中化学物質の複合毒性に関する実験的研究

文献情報

文献番号
200501031A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中化学物質の複合毒性に関する実験的研究
課題番号
H16-食品-008
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
広瀬 雅雄(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
研究分担者(所属機関)
  • 原田孝則(残留農薬研究所 毒性部)
  • 中江 大(佐々木研究所 病理部)
  • 大野泰雄(国立医薬品食品衛生研究所 副所長)
  • 白井智之(名古屋市立大学大学院医学研究科 実験病態病理学)
  • 中澤裕之(星薬科大学 薬品分析化学)
  • 川西正祐(三重大学医学部 衛生学)
  • 松元郷六(残留農薬研究所 遺伝毒性学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品中化学物質の複合毒性の実態を総合的に明らかにし、ヒト健康への影響を評価するための資料とする。
研究方法
1.NaNO2とエピガロカテキンガレート(EGCG)あるいはアクリルアミド(ACR)の複合遺伝毒性を検討した。2.組織中ニトロチロシン分析法を構築し、アセトアミノフェンを投与したマウスの肝で測定した。3. NaNO2と茶カテキンの複合による発がん実験を行い、さらにラット逆流性食道炎モデルを作成し、NaNO2とAsAを32週間複合投与した。4.in vitroの系で銅と食品中化学物質の複合反応による酸化的DNA傷害について検討した。5.グルコン酸銅と茶カテキンの単独あるいは複合影響について、ラット中期多臓器発がん試験法を用い検討した。6.ヒトPXR及びCYP3A4レポーター遺伝子発現マウスを用い、2種の農薬のCYP3A4誘導能を評価した。7.肝中期発がん試験法を用い、MeIQxの代謝活性化酵素であるCYP1A1/2を誘導するナフトフラボン類をMeIQxと複合投与した。8.有機リン系(MPP)、有機塩素系(DDT)およびカーバメート系(MPMC)の殺虫剤を組み合わせて幼若ラットに投与し、臨床症状、コリンエスステラーゼ活性などについて検索した。
結果と考察
NaNO2とEGCGによりDNA損傷と染色体異常が誘発されたが、ACRでは陰性であった。ニトロチロシン/チロシン比により、タンパクのニトロ化が測定可能であった。NaNO2とEGCGの複合投与はラット前胃発がんを促進した。ラット前胃粘膜に細胞障害並びに8-OHdGが増加し、これら複合投与による発がん促進にはDNA酸化的損傷が関与している。逆流性食道炎モデルでは、NaNO2とAsAの投与で食道粘膜に過形成や乳頭腫が発生し、食道に発がん標的を示す可能性が示された。プロシアニジンB2とキノコの成分であるヒドラジン誘導体はin vitro銅の存在下で酸化的DNA傷害を誘発した。食添のグルコンサン銅は300ppm以上群で、肝前癌病変であるGST-P陽性細胞巣が増加し、発がん性が示唆されたが、カテキンの複合はそれを抑制した。ヒトPXRの発現によりCYP3A4が著明に誘導され、ヒトCYP3A4誘導を予測する有効な系になり得る。一方、in vivoでは、CYPの誘導とMeIQx肝発がん修飾作用との直接の相関性はみられず、予測のためには他の代謝系を総合的に検討する必要性がある。ラットへのMPPとMPMCの複合投与で相加的毒性効果が発現し、その影響は幼若ラットより顕著であった。
結論
食品中化学物質同士の反応等、種々の複合作用の一端を明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2006-10-10
更新日
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