畜水産食品中の残留動物用医薬品の安全性に関する研究

文献情報

文献番号
200501029A
報告書区分
総括
研究課題名
畜水産食品中の残留動物用医薬品の安全性に関する研究
課題番号
H16-食品-006
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
三森 国敏(東京農工大学大学院共生科学技術研究部動物生命科学部門)
研究分担者(所属機関)
  • 渋谷 淳(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
  • 梅村 隆志(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
  • 九郎丸 正道(東京大学大学院 農学生命科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
13,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
申請者らは前年度までの研究で、ジサイクラニル(DC)の肝発がん機序の一部に酸化的ストレスの関与を示唆する情報を得ている。甲状腺発がんを促進させるサルファジメトキシン(SDM)について発がん過程早期における特異的な発現変動遺伝子群の解析を進めてきた。フェンベンダゾール(FB)が肝発がんを促進させる情報を得ている。しかし、いずれも不明な点が残されている。本研究では、これらについて解明し、非遺伝毒性発がん物質として考えられていた当該動物用医薬品の安全性再評価へ重要なデータを提供することを目的とし研究を行った。また、BSE対策部会において特定危険部位に指定された牛脊髄神経節の完全除去が技術的に可能か否かについて調査した。
研究方法
本年度、DCについては、マウス肝発がんモデルへの26週間投与で得られた肝について解析を進め、さらに、13週間投与したgpt deltaマウスの肝における酸化的DNA損傷と変異誘発作用について評価した。SDMについては、昨年同定した甲状腺発がん過程早期特異的遺伝子の代表的な遺伝子について発現レベルの検証を行った。FBについては、ラット肝発がんモデルでの発がん過程早期に特異的遺伝子群のプロファイリングを実施した。神経節除去に関しては、2005年1月から2006年2月までの計1385検体について除去率を調査した。
結果と考察
DC投与後の肝では、酸化的ストレス関連遺伝子の発現増強、ならびに経時的で有意な酸化的DNA損傷マーカーの上昇が認められた。また、gpt deltaマウスの肝でも酸化的DNA損傷マーカーが上昇し、雌ではgpt遺伝子突然変異頻度が上昇した。SDMによる甲状腺発がん過程早期で同定されたcyclin B1、およびaurora kinase Bは前がん病変に陽性像が集中していた。FB投与後の肝では、TGF-βないしWnt経路を介した細胞抑制に関する遺伝子に発現変動が認められた。神経節の平均除去率は約84%であり、牛の品種・性・月齢別除去率に差は認められなかった。
結論
以上、DCの発がん機序には酸化的ストレスを介したDNA損傷、点突然変異の関与が示唆された。SDMの発がん過程早期の標的遺伝子ならびに腫瘍性増殖形質獲得へ関与する遺伝子群の同定、およびFBの発がん過程早期での特異的遺伝子群のプロファイリングに成功した。神経節の完全除去は現時点の技術では困難であり、技術改良が必要である。

公開日・更新日

公開日
2006-10-10
更新日
-