産業現場における情報伝達の齟齬が災害発生機序に及ぼす影響に関する研究

文献情報

文献番号
200501017A
報告書区分
総括
研究課題名
産業現場における情報伝達の齟齬が災害発生機序に及ぼす影響に関する研究
課題番号
H17-労働-011
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
石田 敏郎(早稲田大学 人間科学学術院)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
12,521,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
産業現場では複数人で作業をする場面が多く,コミュニケーションの不成立が災害発生につながる可能性がある.本研究では建設業のコミュニケーション・エラー(以下CE)を取り上げた.先行研究において「独断作業型」「設備不備型」「計画不備型」「媒体型」「理解型」の5つのエラーパターンを指摘した.本研究の目的はこのエラーパターンの分類及び背後要因について質問紙調査を行い,実態を探ることである.
研究方法
質問紙の内容は,コミュニケーションの現状,先行研究による5つのCEの現状,これまでのヒヤリハット経験,及び,労働災害を減少させるために望むこと,属性とした.建設作業現場の管理者から作業員までの1143名を対象に調査を行い,1092部を回収した(回収率95.5%).本報では属性の性格に関する質問以外に回答した849名を有効データとした.
結果と考察
コミュニケーションの現状:コミュニケーションの重要性,頻度は評価が高く,CEの頻度,ヒヤリハット経験頻度はあまり評価が高くなかった.また,コミュニケーションの重要性と頻度,CEの頻度とヒヤリハット経験頻度に有意な正の相関があった.これらよりコミュニケーションを重要だと認識する人は頻繁にコミュニケーションをとると考えられ,CEの頻度は高くはないが,CEが増加するとヒヤリハットにつながる可能性が高くなると言える.
先行研究による5つのCEの現状:「設備不備型」が頻度,ヒヤリハット経験頻度,危険度において他のパターンよりも評価が高かった.背後要因は全パターンとも「作業前の打ち合わせ不十分」「確認不足」が大きな割合を占めたが,各パターンで異なる傾向も見られた.また「計画不備型」以外のパターンの頻度と危険度に有意な負の相関が,全パターンの頻度とヒヤリハット経験頻度に有意な正の相関があった.これらより各パターンのCEを多く経験する人は危険度を低く評価する傾向にあり,また,ヒヤリハットを多く経験していると言える.エラーが増加するとヒヤリハットにつながる可能性が高くなると考えられる.
結論
建設作業現場でのコミュニケーションの重要性,頻度,CEの頻度,ヒヤリハット経験頻度との関係,及び,先行研究による5パターンのCEの背後要因,頻度,ヒヤリハット頻度,危険度が明らかになった.今後,詳細な分析を進め,コミュニケーション,及び,CEの実態をまとめた上で,CEの実証的な実験を行う予定である.

公開日・更新日

公開日
2007-06-22
更新日
-