小児における脳死判定基準に関する研究

文献情報

文献番号
199700113A
報告書区分
総括
研究課題名
小児における脳死判定基準に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
竹内 一夫(杏林大学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
平成10(1998)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「臓器の移植に関する法律(平成9年法律第104号)」が平成9年6月17日に成立し、我が国においても脳死体からの移植が所定の条件の下に可能になった。本法立の中では脳死判定については、第6条第4項において、「臓器の摘出に係る第2項の判定は、…(中略)…医学的知見に基づき厚生省令で定めるところにより行う判断の一致によって、行われるものとする。」とされている。厚生省令及び「臓器の移植に関する法律の運用に関する指針」においては厚生科学研究費特別研究事業脳死に関する研究班報告書「脳死の判定指針及び判定基準」(昭和60年)及び、「厚生省「脳死に関する研究班」による脳死判定基準の補遺」に準拠することとされているところである。
しかし、現在のところ、6歳未満の者は本基準では脳死判定の対象とはされておらず、従って臓器提供につながる脳死判定ができないことから、6歳未満の者からの臓器提供は不可能となっているが、この実態については、臓器の移植に関する法律の施行にむけて様々な体制整備が行われる中で、解決を望む社会的要請も非常に強くなっている。
こうした事情に鑑み、本邦における臨床例の収集による検討と共に、海外における小児の脳死判定基準に関する知見も併せて研究し、日本における6歳未満の者の脳死判定基準について作成する事を目的とした。
研究方法
国内の有識者による、検討会を数度重ね、外国の文献等も参考にしながら、昭和60年度厚生科学研究特別研究事業「脳死に関する研究」班による脳死判定基準(いわゆる竹内基準)を基に、6歳未満の小児における脳死判定基準(案)を作成した。
本年度の研究班では、この案を用いて、全国の関連施設に対し、以下のような手順で小児の脳死症例の実態調査を実施することとしている。
結果と考察
6歳未満の小児について、脳神経外科、救急医学等の専門家からなる研究会議を数回開催し、次のような脳死判定基準案を作成した。
また、本案に添って全国の医療施設(1000施設以上)に対し臨床例の調査を行うことから、記入要領、調査票等を作成した。
脳死判定基準(案)
判定対象と除外例
(対象)
本判定基準は、6歳未満の小児を対象とする。
判定の対象は、器質的脳障害により深昏睡および無呼吸を来しており、脳死になりうる原疾患が確実に診断され、それに対する最大限の治療にもかかわらず回復の可能性が全くないと判断される症例とする。
従って、以下は除外例とする
(除外例)
1判定時、深昏睡および自発呼吸の消失の原因病態が不明の場合
2 判定時、深昏睡および自発呼吸の消失の原因病態が可逆性の可能性がある場合
低体温 体温摂氏32度以下
低血圧 年齢不相応の著しい低血圧
著しい低酸素血症 
筋弛緩薬や中枢神経抑制薬による深昏睡及び自発呼吸の消失の可能性がある場合
代謝障害、内分泌障害が深昏睡及び自発呼吸の消失の原因の場合
判定基準
1深昏睡
2瞳孔の両側の中等度以上の散大と固定
3脳幹反射の消失
4平坦脳波
5自発呼吸の消失
この5つの判定基準項目を、以下の通りの年齢に応じた一定の再評価間隔で確認し判定する。
但し、自発呼吸の消失の確認は、毎回の検査の最後に行う。
また、瞳孔の固定とは対光反射の消失のことを指す。
(再評価間隔(観察期間))
判定基準の全5項目を、以下の間隔で2回確認する。
生後28日以内の新生児   48時間
1歳未満の乳児       24時間
1~6歳未満の小児     12時間
判定医
臓器移植に直接関わらない医師が2名以上で判定する。
少なくとも1名以上は、小児の脳死状態に関して経験を積んだ専門医師とする。
他の1名は治療担当医であっても良い。 
(専門医師とは脳神経外科医、小児神経科医、救急医、麻酔・蘇生・集中治療医のいずれかであって、それぞれの学会専門医又は学会認定医の資格を持つ医師とする。)
補助検査  
聴性脳幹誘発反応、脳血管撮影、RI脳シンチグラム検査(SPECT等)、超音波ドプラ検査、Xe-CTなどは有用な情報を提供するが必須ではない。
結論
本判定基準(案)に基づいて全国の医療施設(1000施設以上)に対し臨床例の調査を行うこととしている。
最終的な案の妥当性や判定基準の確定は来年度の研究にて行う予定である。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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