200V配線推進に伴う感電災害・電気火災等の予防に関する研究

文献情報

文献番号
200501010A
報告書区分
総括
研究課題名
200V配線推進に伴う感電災害・電気火災等の予防に関する研究
課題番号
H16-労働-008
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
冨田 一(独立行政法人産業安全研究所 研究企画調整部)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋健彦(関東学院大学 工学部 )
  • 本山建雄(独立行政法人産業安全研究所 物理工学安全研究グループ )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
2,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
需要家が直接負荷機器を接続して使用できる電圧(以下、使用電圧という)が200Vに昇圧されたときを想定して、感電災害の危険要因を明確にし、接地、漏電遮断器、安全管理体制の確立などの必要な対策手法を検討する。

研究方法
感電災害事例を分析して、災害発生要因を明らかとし、今後解決すべき課題と研究の方向性を明らかとする調査を実施した。災害事例について事業規模、現場のハザード、リスクを低減するために必要と考えられる感電防止対策、現場で使用された機器等について漏電等の障害の有無を分析した。これらの結果から、感電災害防止対策における課題を明らかとした。また今後感電防止及び電気火災対策を進めていく上で有効な対策に関して、既に200V化が完了した韓国及び台湾を調査した。感電防止のための接地については、変電所等において歩幅電圧低減を目的に使用される砂利について、表面にシリコンを塗布した砂利を開発し、これの抵抗率を算出するための手法も開発した。
結果と考察
本年度の調査、研究によって得られた主な結果は次の通りである。
(1)溶接作業の感電災害では全体の35%で主に溶接棒ホルダーの損傷がみられた。保守、点検作業や修理作業においては災害発生現場で使用された機器等に損傷等の問題は無かった。ケーブル接続、研磨等の電気関連作業、その他では約1/4のケースで主に使用機器の漏電がみられた。
(2)感電を誘発するハザードとしては高温環境、受変電設備、被修理機器、クレーン、送電線が主なものであった。
(3)災害発生現場において、実際の作業時において更なる感電リスク低減策を検討した結果、絶縁用保護具の着用や絶縁用防具の装着、交流アーク溶接機用電撃防止装置の使用などの基本的な対策が必要なことが分かった。
(4)感電災害防止手法としてシリコン加工砂利の利用を考慮し、数値シミュレーションによって、接触、歩幅電圧の低減対策としての有意性を明らかとなった。
(5)接地極付コンセントシステムについて、有意性を明らかにし、普及のための課題を抽出できた。
(6)韓国/日本とも230/200Vでの感電災害が100Vよりも多発しており、昇圧による感電災害増加の影響がある。しかし、韓国のデータから感電防止用漏電遮断器の使用は感電災害防止に効果があると推定された。
結論
災害事例分析の結果からは基本的な対策が確実に実行される安全管理体制の整備が重要であることが明らかとなった。使用電圧の昇圧に伴う感電災害防止対策としては、接地極付きコンセント、感電防止用漏電遮断器の普及が有効であることが推定された。

公開日・更新日

公開日
2007-06-22
更新日
-

文献情報

文献番号
200501010B
報告書区分
総合
研究課題名
200V配線推進に伴う感電災害・電気火災等の予防に関する研究
課題番号
H16-労働-008
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
冨田 一(独立行政法人産業安全研究所 研究企画調整部)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋健彦(関東学院大学 工学部)
  • 本山建雄(独立行政法人産業安全研究所 物理工学安全研究グループ)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
需要家が直接負荷機器を接続して使用できる電圧(以下、使用電圧という)が220Vに昇圧化される場合を想定して、我が国の感電災害防止対策の現状と今後の課題を明確にする。接地については、接地抵抗推定方法を開発する。また、昇圧の影響を人体のインピーダンスから検討する。主な昇圧化の影響を明確にし、影響を低減する主な対策を提案する。
研究方法
過去の感電災害事例を基に、今後の感電防止対策の方向性を調査する。
接地については、形状係数という新概念を導入して接地抵抗を推定した。シリコン加工砂利の抵抗率の推定についても測定装置を試作して検討する。
昇圧化が感電に及ぼす影響については、人体のインピーダンスと電圧との関係を求める。
昇圧に伴う電対策については、韓国の資料と我が国の比較を行い、有効な対策手法を検討する。
結果と考察
(1)災害事例分析
災害発生現場において、絶縁用保護具の着用や絶縁用防具の装着などの基本的な対策が必要なことが分かった。
(2)接地システム・等電位ボンティングシステムに関する検討
 IEC-TC64(電気設備と感電保護)の規格の審議動向等の研究成果をもとに整理、分析してまとめた。
(3)韓国における実態調査
接地極付コンセントが普及していることがわかった。このことが感電死亡事故の減少に大きく寄与している。
(4)台湾における実態調査 
接地極付コンセントが普及していることがわかった。
(5)形状係数法による接地抵抗の推定
 形状係数という概念を導入し,あらゆる形状の接地極を推定する手法を見い出した。
(6)住宅基礎の接地抵抗の推定
 住宅基礎の代用接地極の実用化を目指した研究であるが,実用化の目途がたった。
(7)シリコン加工砂利の抵抗率
 抵抗率測定手法を開発し,シリコン加工砂利が高い抵抗率をもつことを確認できた。このことは接触・歩幅電圧の低減対策に大きく寄与する。
(8)人体インピーダンスは電圧依存性があり、結果として、通電個所によっては有害な影響が出る電流の領域に達する可能性がある。
(9)昇圧による感電災害増加の影響がある。対策として、感電防止用漏電遮断器の使用は感電災害防止に効果があると推定された。

結論
感電災害事例分析の結果、安全管理体制の確立が昇圧化に伴う感電防止対策にも不可欠と考えられる。有害な影響の現れる領域は人体を流れる電流の大きさ、通電部位、通電時間に依存するものの、昇圧による致命的な影響を受ける機会が増加すると考えられる。また、感電災害、電気火災に対する配線電圧昇圧に対する対策として、漏電遮断器の設置が有効であると推定された。

公開日・更新日

公開日
2007-06-22
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200501010C

成果

専門的・学術的観点からの成果
接地システム・等電位ボンティングシステムについては、IEC-TC64(電気設備と感電保護)の規格の審議動向等ををもとに整理、分析してまとめた。接地抵抗については形状係数という概念を導入し,あらゆる形状の接地極を推定する手法を見い出した。人体インピーダンスは電圧依存性があり、結果として、人体を流れる電流は、単純に昇圧比に比例した値よりも大きくなり、通電個所によっては有害な影響が出る電流の領域に達する可能性がある。
臨床的観点からの成果
感電災害発生現場においては、取り扱う機器等に漏電、絶縁不良がみられたケースは全体の17%と比較的少ない割合であった。これらの課題は交流アーク溶接機の溶接棒ホルダーの損傷、電動工具等の漏電が主なものであった。災害発生現場において、実際の作業時において更なる感電リスク低減策を検討した結果、絶縁用保護具の着用や絶縁用防具の装着、交流アーク溶接機用電撃防止装置の使用などの基本的な対策が必要なことが分かった。
ガイドライン等の開発
IEC-TC64(電気設備と感電保護)の規格の審議動向、ビーゲルマイヤー博士(オーストリア)の研究成果をもとに整理、分析してまとめた。この成果は(社)電気設備学会の委員会の審議結果に反映した。
その他行政的観点からの成果
接地極付コンセント普及の研究成果は、内線規程に反映された。
その他のインパクト
アース付コンセントに関する高橋健彦教授の記事が平成17年10月9日の毎日新聞にとりあげられた。

発表件数

原著論文(和文)
3件
形状係数法という概念を導入して接地抵抗を推定する方法を開発した。今後代替接地極として使用される住宅基礎の接地抵抗を推定した。砂利表面にシリコンを塗布した感電保護用砂利の抵抗率を算出した。
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
8件
感電災害事例分析、昇圧化による人体への影響、接地抵抗の推定法、トラッキング現象、電気災害の日韓の比較結果について発表
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
山川修平、高橋健彦
形状係数法による接地抵抗の推定
電気設備学会誌 , 25 (6) , 59-64  (2005)
原著論文2
右田理平、北村健司、高橋健彦
戸建住宅基礎の接地抵抗の推定
電気設備学会誌 , 25 (5) , 64-71  (2005)
原著論文3
坂間博樹、高橋健彦
シリコン加工砂利の抵抗率
電気設備学会誌 , 26 (4) , 55-56  (2006)

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-