医療IT化による医療の安全性と質の改善の評価に関する研究

文献情報

文献番号
200501356A
報告書区分
総括
研究課題名
医療IT化による医療の安全性と質の改善の評価に関する研究
課題番号
H17-医療-046
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 友紀(東邦大学医学部社会医学講座医療政策・経営科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 飯田 修平(全日本病院協会)
  • 柳川 達生(練馬総合病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
①IT技術の導入が、医療の質と安全についてどのような影響を及ぼすことが想定されるかについて概念を整理する、②医療へのIT技術の導入についての各国政府の対応を明らかにする、③国内外の代表的な医療分野におけるIT投資、IT技術の導入が、医療の質・安全・効率にもたらした影響について事例検討を実施する。
研究方法
①②については文献調査および現地調査、専門家パネルによる検討を実施した。③については約400病院を対象にしたアンケート調査、および医療施設調査、患者調査のデータを用いて解析を行った。
結果と考察
韓国では、電子請求は1996年から導入され、2005年には全レセプトの96%がEDIと呼ばれる電子請求方式で行われている。電子化は医療の様々な場面に影響をもたらしつつある。特に2004年からは、支払データをデータウエアハウスとして、政府の管理する他のデータベースとリンクしての利用を可能にすることで、二次利用を制度として促進する試みを行っている。米国においてプライバシー保護と医療情報の標準化を目的に2002年に全面導入されたHIPPAが、医療情報の標準化を促進した。2004年にはBush大統領のEHR(電子カルテ構想)の発表後、医療IT化を図るための大型投資計画の発表が相次いでいる。日本では、2005年には、今後5年以内にレセプトオンライン請求を原則とする政府の方針が発表され、今後は、①どのようなタイムスケジュールでオンライン請求を進めるかについての技術的な検討、②電子的に蓄積されるデータの二次利用の方法と、特に利用ルールの策定、③データウエアハウス構築のための具体的な検討課題の明確化、が重要な検討課題である。医療施設、患者調査を用いた検討では、オーダリングシステムを有する病院では、有しない病院に比較して、主要疾患において在院日数が短いことが示され、IT化が医療の効率化をもたらしている可能性が示唆された。今後、電子カルテの導入が一般的になるにつれて、導入に伴い医療内容を検証する必要があると考えられる。
結論
医療の質向上には、IT化と質に基づく支払方法の導入・開発は不可欠である。IT化の推進には、政府の役割が大きい。政府の役割が発揮されるときに関連組織も大規模なIT化計画を発表し、IT関連投資が増加することで促進した。また一部の国では既にIT化によりデータウエアハウスの構築など、新たな社会的インフラの構築を試行しつつある。医療のIT化促進には政策目標での位置づけを明確にすることが重要である。

公開日・更新日

公開日
2006-10-03
更新日
-