診療ガイドラインの適用と評価に関する研究

文献情報

文献番号
200501351A
報告書区分
総括
研究課題名
診療ガイドラインの適用と評価に関する研究
課題番号
H17-医療-041
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 友紀(東邦大学医学部社会医学講座 医療政策・経営科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 長谷川 敏彦(国立保健医療科学院)
  • 小泉 俊三(佐賀大学医学部総合診療部)
  • 葛西 龍樹(カレスアライアンス・北海道家庭医療学センター)
  • 武澤 純(名古屋大学大学院医学研究科救急医学)
  • 平尾 智広(香川大学医学部医療管理学講座)
  • 和田 ちひろ(HCRM研究会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
EBM手法の確立にともない診療ガイドラインは科学的な根拠を得るにいたりそのごの普及が促進された。医療の質に対する関心の増大とともに、診療ガイドラインは、医療のプロセスレベルでの質を確保するためのツール、患者参加を促進するためのツール、地域の医療計画の策定および実施状況をモニターするツールにと変貌しつつある。本研究では、近未来の医療における診療ガイドラインの位置づけを明らかにする。
研究方法
①先行研究で開発したAGREE日本語版を用いた既存診療ガイドラインの評価、②患者団体を対象とした必要な医療情報の明確化と入手の状況、その中における診療ガイドラインの位置づけ、③診療ガイドライン作成者を対象にした作成状況の現況調査、④喘息を対称にした事例検討、などを実施した。
結果と考察
①AGREE調査票を用いた診療ガイドラインの評価では、AGREE調査票が日本でも利用が可能なこと、先行研究においてAGREE調査票日本語版を発表した2000年以降、診療ガイドラインの質に向上の傾向が認められること、が明らかになった。②3患者団体(関節リウマチ、悪性リンパ腫、炎症性腸疾患)の約4000人を対象にアンケート調査では、有する疾患により必要とする情報が異なること、十分な医療情報を入手できる仕組みが整っていないこと、関係者の努力にも係わらず診療ガイドラインは主要な情報入手源となっていないことが示唆された。患者が医療情報へ容易にアクセスできるような環境整備、および診療ガイドラインのあり方については今後の検討課題である。③診療ガイドライン作成者へのアンケート調査では、EBM手法は方法論的には確立しているものの、なお作成グループ間で大きな差異が認められること、特に組織体制、作成者の教育を、外部から専門家の支援に改善の余地が大きいことが示唆された。④喘息では、診療ガイドラインの作成にともない、死亡率や入院率の低下、医療費の減少、救急搬送の低下等が認められる。このような関連する広範な情報を得られる疾患は限定されるものの、診療ガイドライン導入の結果を実証的に示す治験は世界的にもほとんど報告されておらずきわめて貴重である。
結論
医療の質に対する関心の増大とともに、診療ガイドラインは、医療のプロセスレベルでの質を確保するためのツール、患者参加を促進するためのツール、地域の医療計画の策定および実施状況をモニターするツールへと役割を変えつつある。診療ガイドラインの役割に応じた利用環境の整備、作成者の支援が今後の課題である。

公開日・更新日

公開日
2007-10-09
更新日
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