脳神経外科手術におけるヒヤリ・ハット事例、事故事例、訴訟事例の分析による手術治療安全対策ガイドライン作成に関する研究

文献情報

文献番号
200501341A
報告書区分
総括
研究課題名
脳神経外科手術におけるヒヤリ・ハット事例、事故事例、訴訟事例の分析による手術治療安全対策ガイドライン作成に関する研究
課題番号
H17-医療-030
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
児玉 南海雄(福島県立医科大学脳神経外科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 脳神経外科領域における手術に関連する医療事故が発生した場合には、予後に重篤な影響を与えることから、医療訴訟も少なくない。本研究では脳神経外科手術に関するヒヤリ・ハット事例、事故事例、訴訟事例についての情報を収集・分析することにより、脳神経外科手術における医療事故対策を構築することを目的とする。
研究方法
 主任研究者および分担研究者が所属する6施設およびその関連施設(各研究者において4病院)合計30病院を対象に、手術治療におけるヒヤリ・ハット事例(患者への実害のなかったもの)、事故事例(患者への実害のあったもの)、訴訟事例のデータを平成16年1月1日から平成17年12月31日までの過去2年間にわたり収集した。特にhigh risk手術として、脳腫瘍手術、脳動脈瘤手術、脳動静脈奇形手術、脊髄脊椎手術、血管内手術に焦点を絞り、事例の収集を行った。収集した情報の分析を各手術のエキスパートである分担研究者に依頼し、各疾患毎に『事例のまとめ』、『発生原因の分析』、『発生予防と再発防止の対策』に分けて検討した。
結果と考察
 主任研究者および分担研究者が所属する6大学および各大学の関連施設の合計30病院から合計146件の報告がなされた。内訳はヒヤリ・ハット事例が55件、事故事例が89件、訴訟事例が2件であった。また、手術別内訳は、脳腫瘍手術41件、脳動脈瘤手術34件、脳動静脈奇形手術4件、脊髄脊椎手術15件、血管内手術31件、その他の手術21件であった。
 今後は実害の基準を設定するとともに、実害の程度についても重症度分類を行い検討する必要があると考えられた。また、事故事例として報告されている中には、避け得ない偶発症として扱うべきものが多数含まれていた。今後は事故事例の定義を『患者への実害があり、明らかな過失・不注意・知識の欠如、によるもの』と、『患者への実害があるが、過失・不注意・知識の欠如、等の明らかな理由が見出せず、事前の予測が困難と思われた偶発症的合併症』の2つのsubgroupに分類し、再度分析する必要があると考えられた。
結論
 今回の情報収集・分析により、生命の危険まで存在したヒヤリ・ハット事例や実際に死亡に至った事故事例があることが明らかとなった。次年度は、これらの情報を再度分析し、さらに文献の収集を併せて行い、脳神経外科の手術に関する安全を確保するための対策およびそのガイドラインの策定を目標とする。

公開日・更新日

公開日
2007-06-25
更新日
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