医療安全防止対策の経済評価に関する研究

文献情報

文献番号
200501339A
報告書区分
総括
研究課題名
医療安全防止対策の経済評価に関する研究
課題番号
H17-医療-028
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
今村 知明(東京大学医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、第一に医療事故に関する民事裁判で必要となる経費および医療事故での民事裁判の現況を明らかにする。第二に諸外国における疫学的、社会科学的な研究の展開を整理し、わが国にとって必要な研究範囲を定める。第三に、CVMを用いて医療安全対策のWTPを測定する。
研究方法
自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準をもとに、医療裁判に必要となる経費を分析した。また、最高裁判所の資料等をもとに医療裁判の現況を調査した。
英文および和文の学術論文、書籍をレビューし、諸外国における研究の経緯を整理、大別する。結果などを参考として、二年次以降に本研究班で取り組む研究範囲を定めた。
WTPを測定するために被験者に対して、年齢、性別、世帯年収、私的医療保険への加入の有無、入院歴、現在の健康状態、健康に対する意識が質問された。範囲の異なる2つの仮想的な医療安全対策に関するテーマを用意し、評価の視点として事前的保険基盤評価と事後的利用者基盤を考えた。
結果と考察
医療裁判の現状として、一般的に通常民事事件における原告勝訴率が85%程度であるのに対し、平成2年以前の民事医療過誤訴訟事件における原告勝訴率は35%程度であった。近年、原告勝訴率は約50%程度まで上昇してきている。病院からすると何らかの賠償金を支払ったとみられるケースは全体の82%に達すると考えられた。
医療事故に関するマクロ的な分析に関しては、アメリカからの文献が圧倒的に多いと言える。アメリカで最も大きく発展したのは、医療事故の予防に関する臨床研究である。これらの蓄積は、AHRQによってまとめられるなどしている。アメリカでは紛争の抑制、新しい紛争解決の方法に関する研究も行われている。
WTPの調査では1,582名の回答を得た。事後的利用者基盤におけるWTPは、包括的医療事故対策の10%減少ケースで$11.43、50%減少ケースで$13.26、薬剤事故対策の10%減少ケースで$9.65、50%減少ケースで$10.77であった。
結論
アメリカで1990年台以降に増加している紛争解決に関連した研究について、わが国での研究が不足していることが明らかになった。医療事故防止プログラムに関するWTPを調査したが、結果に関しては包括的医療事故防止対策と薬剤事故対策間の差が小さいなどの問題が見られたので、調査方法を改善する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2007-06-25
更新日
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