透析施設におけるブラッドアクセス関連事故防止に関する研究

文献情報

文献番号
200501319A
報告書区分
総括
研究課題名
透析施設におけるブラッドアクセス関連事故防止に関する研究
課題番号
H17-医療-007
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
山崎 親雄(社団法人日本透析医会)
研究分担者(所属機関)
  • 秋澤 忠男(昭和大学病院 腎臓内科)
  • 大平 整爾(医療法人社団恵水会 札幌北クリニック)
  • 鈴木 正司(社会福祉法人新潟市社会事業協会 信楽園病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
透析医療事故で最も頻度の高いブラッドアクセス関連事故について、平成17年1年間の頻度、原因、対策を全国調査し、併せて認知症など意識状態の低下した患者と同事故との関係から同事故防止のための方策を検討した。
研究方法
日本透析医会の1,051施設会員を対象に、平成17年に発生したレベル3(何らかの治療を要した)以上の抜針事故について全例調査した。また抜針事故防止策について、とくに認知症あるいは意識障害(不穏)のある患者での自己抜去、牽引抜去への対策を重点的に調査した。さらに、透析用ブラッドアクセスカテーテル事故、事故防止のための患者の協力についての実態についても、回答を求めた。
結果と考察
回収率は43.1%であった。レベル3以上の抜針事故は395施設から245件(100万透析に41.5件)報告された。事故の重篤度はレベル3が92.6%と大半を占めたが、「実害が生じ、その障害が長期にわたると推測される」事故が6.8%、「死亡に至った」事故も1件報告された。 また、入院あるいは入院の延長を20件に認めた。事故原因は自己抜去が52.3%を占め、牽引抜去(14.9%)を含めると、2/3が認知症や不穏が関係する可能性が高い事故であった。事故誘因では固定不備、認知症による抜針、認知症による体動、監視不備、意識障害による抜針、意識障害による体動などに分布し、認知症と意識障害を合わせると約半数に達した。多くの施設で複数の対策がとられていたが、常時あるいは5分以内毎の観察が可能であれば、抜針事故は減少する可能性が示唆された。ブラッドアクセスカテーテル事故は46件報告され、抜去事故が60%を占めた。原因は認知症、意識障害による体動が半数に迫っていた。「抜針事故を患者の協力で防げると思うか」の設問には90%の施設で肯定的に考えており、実際に協力を求めていた。また認知症に準じる患者が90%の施設に存在し、これらのうち75%の施設でこうした患者の事故を経験していた。患者に対する何らかの抑制は56%の施設で家族の同意が得られれば行う、と回答した。
結論
ブラッドアクセス関連事故中抜針事故はなお100万透析当たり41.5件みられ、1例が死亡した。その2/3は認知症や不穏が関係する可能性が高い事故で、これら患者に対する有効な対策の確立が、透析医療安全性の向上に不可欠である。

公開日・更新日

公開日
2007-06-27
更新日
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