産科領域における医療事故の解析と予防対策

文献情報

文献番号
200501316A
報告書区分
総括
研究課題名
産科領域における医療事故の解析と予防対策
課題番号
H17-医療-004
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
中林 正雄(社会福祉法人恩賜財団母子愛育会総合母子保健センター愛育病院)
研究分担者(所属機関)
  • 岡村 州博(東北大学医学部産婦人科)
  • 平松 祐司(岡山大学医学部産婦人科 )
  • 金山 尚裕(浜松医科大学産婦人科)
  • 野田 洋一(滋賀医科大学産婦人科)
  • 齋藤 滋(富山大学産婦人科 )
  • 朝倉 啓文(日本医科大学産婦人科)
  • 田邊 清男(東京電力病院産婦人科 )
  • 川端 正清(同愛記念病院産婦人科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本邦では中小施設における分娩が高率であるため、病診連携、母体・新生児搬送システム等の整備が必要だが、現状は十分ではない。医療事故実態調査により産科領域の事例を抽出し、事故原因の解析をするとともに、産科オープンシステムが医療事故防止に及ぼす効果を検討する。
研究方法
日本産科婦人科学会周産期統計「妊産婦死亡調査(2001-2004)」、日本産婦人科医会「産婦人科医療事故報告制度(2004)」を解析した。
結果と考察
「産婦人科医療事故報告制度」(診療所が主体)より、全国から116事例が収集された。産科領域の母体死亡9例、胎児・新生児死亡30例、新生児脳性麻痺(CP)12例であった。母体死亡の原因は常位胎盤早期剥離(早剥)、肺塞栓症が多く、胎児・新生児死亡の原因は双胎、胎児ジストレス、臍帯因子が多かった。「妊産婦死亡調査」(周産期センターが主体)では、全国の周産期医療施設における約20万分娩の中から、母体死亡34例が収集された。母体死亡の原因は悪性腫瘍合併妊娠、出血、PIHが多く、その70% 以上が緊急母体搬送であった。
産科オープンシステムが医療事故防止に及ぼす効果を検討するために、産科オープン病院化モデル事業を開始した3自治体(東京都、宮城県、岡山県)の実施責任者と、本モデル事業の順調な運営を議論した。都市部ではセミオープンから開始することで無床診療所医が妊婦健診に積極的になり、そこからオープンへの進展が期待された。東北地方では産科医が少なく、病院・医師の集約化、病・病連携によるオープンシステムの有用性が示された。地方都市(岡山市)での運営は、当面は大学病院または県立病院で開始することが現実的と示された。
結論
施設規模による医療事故の実態の相違が示唆され、今後の二次調査により予防対策の検討が期待される。本邦では、中小診療所における分娩が高率であるため、母児の安全性確保のためには、妊婦のリスク評価、リスクに応じた分娩施設の選択、ハイリスク妊婦の周産期センターへの集約化が必要である。
産科オープンシステムは、ハイリスク妊娠の集約化と同時に診療所医師の生涯研修システムとしても有用である。今後は、地域の特性に合った産科オープンシステムの施行により産科医療の標準化、ハイリスク妊娠の早期発見・周産期センターへの集約化が推進され、医療事故の防止につながるものと期待される。

公開日・更新日

公開日
2007-07-18
更新日
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