化学テロ災害時の医療機関での検査体制充実に関する研究

文献情報

文献番号
200501308A
報告書区分
総括
研究課題名
化学テロ災害時の医療機関での検査体制充実に関する研究
課題番号
H16-医療-042
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
屋敷 幹雄(広島大学大学院医歯薬学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
東京地下鉄サリン事件を契機に、化学物質の関与した中毒や事件が急増している。化学災害に対する知識と技術を習得させ、継続的に危機意識を植え付けていく必要がある。本研究では、情報を集約し、化学テロ災害時に採るべく方策を検討する。さらに、簡易検査や機器による分析結果が十分に精度管理された状態で実施される検査体制の構築を目的とする。
研究方法
1)市販キットと呈色反応を用い、生体試料中化学物質検査の実地講習会を実施する。
2)毒劇物分析機器が配備された救命救急センターの分析技術者を対象とし、薬毒物分析の実態調査および分析精度調査を行う。
3)救命救急センターの分析担当者を対象とした分析に関する実務講習会を実施し、実戦可能な技術指導を行う。
結果と考察
1)市販キットと呈色反応を用い、生体試料中の化学物質13種類の推定を行った。いずれも30分程度で結果が得られるため、薬毒物検査体制の構築に役立っていると考える。
2)調査対象186施設のうち、参加を希望した施設は81(43.5%)であった。回数を重ねることで技術レベルの向上が見られるが、分析値の扱い方や分析精度についての知識を周知する必要があると考える。
3)症例の情報と迅速検査の結果から、中毒起因物質を推定せ、それぞれの起因物質に適した前処理を行い、GC/MSで同定した後、HPLCで定量した。

種々調査した結果、薬毒物の関与した中毒患者から得られた尿や血清を対象にし、中毒起因物質を分析するうえでの精度管理指針やガイドラインはなかった。今後、生体試料中の薬毒物分析を念頭においた精度管理を行っていくうえで分析法の標準化が課題となる。
結論
本研究成果により、救命救急センター等に配備された機器を有効に活用し、化学テロ災害に対処可能な分析体制の構築の足がかりが認められた。しかし、サリンなど化学兵器の分析は無理であり、日頃経験する薬毒物分析での経験を重ね、本研究を継続的に実施する必要がある。また、全国の主要となる高度救命救急センターなどにおける薬物分析レベルを向上・維持するだけでなく、国民の健康維持や医療費の削減につながり、厚生労働行政に資するところは大きい。さらに、病院業務内での協力体制の確立、救命救急に携わる施設長や医師の分析に対する意識改革とともに、厚生労働省が実施している機能評価項目の一つとして、薬毒物中毒症例に対する適切な処置の追加が強く望まれる。

公開日・更新日

公開日
2018-06-07
更新日
-

文献情報

文献番号
200501308B
報告書区分
総合
研究課題名
化学テロ災害時の医療機関での検査体制充実に関する研究
課題番号
H16-医療-042
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
屋敷 幹雄(広島大学大学院医歯薬学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本邦においても内閣官房を中心にテロ災害に関しての情報集約や発生時の対応策が盛んに検討されている。しかし、実際に治療を行う末端の医療機関において、テロ災害に関する危機感は全く感じられない。本研究は、化学テロ災害時に科学的な根拠に基づいた治療が施されるような医療機関での検査体制を構築し、国民の健康管理に資することを目的とする。
研究方法
1)過去3年間(平成13~15年度)に厚生労働科学研究費補助金を受けて実施した薬毒物分析サーベイ時の対応状況をもって化学災害に関する意識調査を実施する。
2)市販キットと呈色反応を用い、生体試料中化学物質検査の実地講習会を実施する。
3)薬毒物検査の精度管理
救命救急センターの分析技術者を対象とし、化学物質を特定するために、薬毒物分析の実態調査および分析精度調査を行う。
4)医療機関における原因化学物質の特定に関する機器分析講習会を実施し、実戦可能な技術指導を行う。
結果と考察
1)現時点では、化学災害に直結しているとは言い難いが、日頃の積み重ねが重要であり、緊急時に対応できることが期待される。
2)いずれも30分程度で結果が得られるため、現場での検査にも利用可能であり、各医療機関での薬毒物検査体制の構築に役立っていると考える。
3)平成16年度は79(44.1%)施設が、平成17年度は81(43.5%)施設が参加した。数年間調査を継続しているが、積極的に参加する施設と消極的な施設の線引きができているようである。
4)症例から中毒起因物質を推定し、分析機器で確認、定量する、筋道立てた薬毒物分析ができることを期待して、平成17年度には機器分析講習会(フォローアップ)を実施した。今後もこのようなサポートが必要であるとの意見が強かった。

種々調査した結果、生体試料中の中毒起因物質を分析するうえでの精度管理指針やガイドラインはなかった。今後、生体試料中の薬毒物分析を念頭においた精度管理など、分析の標準化などが課題となる。
結論
本研究成果により、救命救急センター等に配備された機器を有効に活用し、化学テロ災害に対処可能な分析体制の構築の足がかりが認められた。しかし、サリンなど化学兵器の分析は無理であり、日頃経験する薬毒物分析での経験を重ね、本研究を継続的に実施する必要がある。また、本研究の成果は、国民の健康維持や医療費の削減につながり、厚生労働行政に資するところは大きい。さらに、救命救急センター等の機能評価項目の一つとして、薬毒物中毒症例に対する適切な処置の追加が強く望まれる。

公開日・更新日

公開日
2018-06-07
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200501308C

成果

専門的・学術的観点からの成果
化学災害に対処可能な迅速検査の系統的活用法えを整備できた。また、分析実態調査を重ねることで技術レベル(分析技術、精度)の向上が見られ、定量を実施している施設も増加し、配備機器の有効活用が認められた。
臨床的観点からの成果
本研究成果により、化学災害に対する意識の向上が認められた。また、迅速検査キットならびに救命救急センター等に配備された分析機器を有効に活用し、化学テロ災害に対処可能な分析体制の構築の足がかりが認められた。
ガイドライン等の開発
種々調査した結果、薬毒物の関与した中毒患者から得られた尿や血清を対象にし、中毒起因物質を分析するうえでの精度管理指針やガイドラインはなかった。生体試料中の有害物質の分析という観点から、ダイオキシン分析についての暫定マニュアルが存在するにすぎない。本成果は、生体試料中有害物質の分析の指標となることが期待される。
その他行政的観点からの成果
本研究の成果によって、全国の主要となる高度救命救急センターなどにおける薬物分析レベルを向上・維持するだけでなく、国民の健康維持や医療費の削減につながり、厚生労働行政に資するところは大きい。
その他のインパクト
救命救急センターの機能評価項目の一つとして、化学災害(特に薬毒物中毒症例)に対する適切な処置実施判断の追加の参考資料となることが期待される。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
日本中毒学会総会にて発表
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2018-06-07
更新日
-