建築物室内汚染質のリスクアセスメント等に関する研究

文献情報

文献番号
199700103A
報告書区分
総括
研究課題名
建築物室内汚染質のリスクアセスメント等に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
入江 建久(信州大学教育学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成7(1995)年度
研究終了予定年度
平成9(1997)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
今年度の対象汚染質として、前回のアスベスト粉塵に引き続いて揮発性有機化合物(VOC)とHCHO(HCHO)を取り上げた。ここでは室内環境におけるリスクアセスメントの手法を確立するために、住居と校舎について夏季と冬季に実測を行い、汚染特性を解明するとともに、生活環境としてのアセスメントを行った。
研究方法
基礎調査として新築校舎では児童の使用する日中と窓やドアを閉鎖して換気回数を最低にして最高濃度が得られる夜間(温度補正などは行う)に分けて行った。測定方法:VOCは活性炭充填管に8時間通気し、溶媒抽出、キャピラリーガスクロマトグラフで定量し、個々のVOC,TVOCを測定した。 HCHOは5~8時間パッシブサンプラーまたはガス吸収管でサンプリングを行い、AHMT法で定量した。また、簡易測定法としてHCHO検知管法、熱線半導体式TVOC検知器の適用を試みた。
結果と考察
評価基準の検討:HCHOは厚生省のガイドライン0.08ppm(30分値)、TVOCはヨ-ロッパの研究委員会の提案値300μg/m3を選んだ。TVOCとHCHOのいずれがリスク全体を支配するか、経時変化特性などデータを積み重ねて検討する必要がある。
新築校舎の調査:同一室内における濃度レベルは竣工後の経過時間、温度湿度、換気によって異なることが確認された。日中のみの評価は対象教室において0.08ppmをクリアしたが、児童の日常の暴露条件を代表し、ほぼ妥当である。しかし、高温多湿の夏季、気象条件によっては窓を閉鎖する場合もあると考えられ、いずれの時間帯(30分)も満足することが、リスク下げることになると考えられる。TVOCについて今回の結果は竣工直後、昼間2mg/m3を示し、最大リスク条件と推察される夜間はこの3倍に達した。このことから竣工1ヶ月以上できれば2ヶ月以上経過後の入居が、リスク管理の上から望ましいことが明らかになった。
常時換気設備を持つ住宅:3戸の常時換気設備をもつ住居における調査では部屋中央、吸い込み口、吹き出し口の3カ所が比較された。濃度は外気<吹き出し口<部屋中央<吸い込み口の順に高くなると予想されたが、このようになった試料はVOC、HCHOとも夏季冬季を通して1回しかなく、気流が複雑であることが示唆された。従ってここでは部屋中央の値をとった。HCHOの夏季における値は0.01~0.04ppm、冬季は0.11~0.23ppmでガイドラインをクリアしていた。VOCの値は夏季260~300μg/m3、冬季820μg/m3であった。HCHOは夏冬ともガイドラインをクリアしていたが、TVOCは冬に部屋中央部でみるといずれも500μg/m3を超えていたが、ほとんどの人が苦情を訴える3mg/m3を超えることはなかった。なお、冬季の値は室内の発生源があるためと推察される。
測定法の検討:HCHOの8時間測定にはバッシブサンプラーが適し、検知管法は吸光光度法の結果と合致していた。熱線半導体法はTVOCの絶対値の測定には問題があった。
結論
濃度は同一室内においても竣工後の経過時間、温度湿度、換気によって異なることが確認された。一方、常時換気型の住宅でも、吸入口が常に最大値を示すわけではなく、サンプリング位置に留意しなければならないことが明らかになった。従ってHCHO、VOCそれぞれ、新築時、夏季、冬季などに留意して測定すると共に、アセスメントは通年の評価と共に、新築直後の短期間、季節毎に実施し、HCHOとVOCを合わせた(必要ならダニカビを含めた)総合的なものを指向すべきであり、今後の検討課題である。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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研究報告書(紙媒体)