麻酔関連の医療事故を防止する方策を立案するための要因分析手法に関する研究

文献情報

文献番号
200501239A
報告書区分
総括
研究課題名
麻酔関連の医療事故を防止する方策を立案するための要因分析手法に関する研究
課題番号
H15-医療-002
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
武田 純三(慶應義塾大学医学部麻酔科)
研究分担者(所属機関)
  • 森田 潔(岡山大学医学部麻酔・蘇生学講座)
  • 津崎 晃一(慶應義塾大学医学部麻酔科)
  • 河本 昌志(広島大学医学部麻酔・蘇生科)
  • 長櫓 巧(愛媛大学医学部麻酔・蘇生科)
  • 前川 信博(香川大学医学部附属病院麻酔・救急医学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
麻酔中の患者の安全維持を確保する目的で,「安全な麻酔のためのモニター指針」を提唱し,「麻酔器の始業点検および定期点検」の基準を作成し,全国約800施設の麻酔科認定病院に麻酔関連偶発症のアンケート調査を毎年施行しているが,麻酔科認定病院や麻酔科学会員以外による麻酔関連インシデントも数多く報告されている。そこで,麻酔に関するインシデント全般を分析し、麻酔安全ガイドラインを導くことを目的とする。
研究方法
裁判判例調査や保険会社資料に基づくclosed claims study, (社)日本麻酔科学会が毎年施行している偶発症例調査,日本麻酔科学会認定病院約900施設を対象とする「誤薬」アンケート調査,全国の病院8,171施設を対象とするアンケート調査,手術室内における薬剤管理実態に関するアンケート調査をもとに,要因分析と提言やマニュアル作成を試みた。
結果と考察
偶発症例調査は,死亡率(対1万例)が6.78,麻酔管理が原因の死亡率が0.10で、出血性ショックおよび大出血・循環血液量低下が死因のほぼ半数が占めていることから,危機的出血に対応するためのガイドラインの策定に着手している。
手術室内薬剤管理アンケート調査では、麻薬性鎮痛薬は,症例ごとに薬局から直接受け取っている病院が36%,手術室で定数管理している病院が58%であった。薬剤師が常駐している病院は2%と前回調査と変化なく,薬剤管理の重要性の認識を広める必要性がある。
紛争解決事例の原因究明に関する研究では,旧式の医療機器(麻酔器)の使用,麻酔器の始業点検の不備,薬剤の投与間違い,かけ持ち麻酔,気管チューブの固定不良,緊急気道確保の不成功,硬膜外麻酔の合併症と後遺障害,の7項目が認められた。
肺血栓塞栓症や緊急気道確保対策,硬膜外穿刺,術中神経障害対策に対する麻酔管理マニュアルの作成,誤薬対策を含む薬剤管理マニュアルや術中モニターを含む麻酔関連機器マニュアル,ヒューマンファクターに関するマニュアル作成を行っている。
結論
麻酔関連インシデントに関わる要因が浮き彫りにされてきたが,これら要因間の相互作用や重み付けが不明である。電子麻酔台帳アプリケーションを全麻酔科認定病院に配布し、インシデント・アクシデントレポートの電子データ化を進め,解析精度の向上や解析時間の短縮を図っている。新たに加えられる予定である各種調査や既存調査におけるデータのさらなる蓄積が今後の解析に役立つと考える。

公開日・更新日

公開日
2007-10-03
更新日
-

文献情報

文献番号
200501239B
報告書区分
総合
研究課題名
麻酔関連の医療事故を防止する方策を立案するための要因分析手法に関する研究
課題番号
H15-医療-002
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
武田 純三(慶應義塾大学医学部麻酔科)
研究分担者(所属機関)
  • 森田 潔(岡山大学医学部麻酔・蘇生学講座)
  • 津崎 晃一(慶應義塾大学医学部麻酔科)
  • 河本 昌志(広島大学医学部麻酔・蘇生科)
  • 長櫓 巧(愛媛大学医学部麻酔・蘇生科)
  • 前川 信博(香川大学医学部附属病院麻酔・救急医学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本麻酔科学会では周術期の事故防止に向けて多方面からの積極的な取り組みを行っているが,認定病院や麻酔科学会員以外による麻酔関連インシデントも数多く報告されている。そこで,本研究では,麻酔に関するインシデント全般について,具体的かつ詳細な調査を実行し,その内容や原因,潜在素因などを分析することで事故防止対策をたてるための基本的方針と解析方法の検討を加え,今後の方策としての麻酔安全ガイドラインを導くことを目的とする。
研究方法
本研究では,麻酔関連インシデントを多方面から収集し,その包括的なデータベースを構築した。これらの情報源は,判例調査などに基づくclosed claims study(CCS),学会が毎年施行している偶発症例調査を主体とし,さらに,認定病院を対象とする「誤薬」アンケート調査,全国の病院を対象とする「手術室内モニター・麻酔器の使用実態」に関するアンケート調査,手術室内における麻薬性鎮痛薬や非麻薬性鎮痛薬・向精神薬,麻酔薬の管理実態に関するアンケート調査などを加え,これらの要因分析から具体的な提言やマニュアル作成を試みた。
結果と考察
本研究の主体となる偶発症例調査では,1999~2003年の5年間に対象施設延べ数が2,910施設,対象麻酔科管理症例数が5,223,174例に達し,危機的偶発症は12,954例が報告された。この内,8,096例は後遺症なく経過し,残りの4,858例では術中死を含む何らかの不幸な転帰を示した。また,原因が「全て」を含む場合の死亡率(対1万例)は6.78,麻酔管理が原因の死亡率は0.10であった。さらに,CCSによる解析結果として,事故原因の主な関連要因には,旧式の医療機器(麻酔器)の使用,麻酔器の始業点検の不備,薬剤の投与間違い(過量投与,誤投与),かけ持ち麻酔(並列麻酔), 気管チューブの固定不良,緊急気道確保の不成功,硬膜外麻酔(ブロックを含む)の合併症と後遺障害,の7項目が示された。
結論
本研究では,麻酔の安全に関わる提言・指針を作成する目的でCCSや判例調査,偶発症例調査,誤薬アンケート調査,薬剤管理アンケート調査,手術室内モニターアンケート調査を施行してきた。それぞれの調査からは,すでに麻酔関連インシデントに関わるいくつかの要因が浮き彫りにされてきたが,これら要因間の相互作用やそれぞれの重み付けが不明であるなど,具体的な提言や指針を生み出すための十分な情報データベースに成長したとは言い難い。新たに加えられる予定である各種調査や既存調査におけるデータのさらなる蓄積が今後の解析に役立つと強く期待される。

公開日・更新日

公開日
2007-07-31
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200501239C