文献情報
文献番号
200500996A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV-1制御遺伝子を標的とした新規抗ウイルス剤開発
課題番号
H16-創薬-009
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
酒井 博幸(京都大学ウイルス研究所)
研究分担者(所属機関)
- 土方 誠(京都大学ウイルス研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
この研究課題では新規抗ウイルス剤の標的として、ウイルス固有の遺伝子であるVprとNefに着目している。これらの遺伝子機能を阻害する化合物を同定することで、効果的な抗HIV活性を持つプロドラッグが開発されると期待できる。
研究方法
Vprによる染色体不安定性亢進機構の解析:細胞にVpr発現系を導入し光顕下での細胞の観察、およびFACSによる解析を行った。
VprとNPM相互作用の解析: 相互作用の解析にはGST-pull down法を用いた。局在は蛍光顕微鏡で観察した。
AXINに関する解析: アポトーシスはAnnexinVとDNAの断片化により評価した。
NefとVpuの変異体導入によるウイルス感染性低下機構の解析: 細胞にHIVの感染性クローンを導入し、そこから産生されたウイルスの感染性を評価した。
VprとNPM相互作用の解析: 相互作用の解析にはGST-pull down法を用いた。局在は蛍光顕微鏡で観察した。
AXINに関する解析: アポトーシスはAnnexinVとDNAの断片化により評価した。
NefとVpuの変異体導入によるウイルス感染性低下機構の解析: 細胞にHIVの感染性クローンを導入し、そこから産生されたウイルスの感染性を評価した。
結果と考察
VprとNPMのin vitroとin vivoでの結合性を前年度に確認している。この相互作用にはVprの中心領域とNPMのC末領域が関与していることを、GST-pull down法で確認した。また、NPMは単独発現では核内、および細胞質中のcentrosomeに局在するが、Vprとの共発現により核膜周辺に蓄積することが観察された。CV1細胞ではVprの発現によりG2/M期細胞周期停止の他にアポトーシスが誘導されるが、アポトーシスを逃れた細胞では多核化や巨核形成が認められる。NPMを過剰発現させることで、これらの効果が低減した。一方NPMをRNAiで発現抑制すると、Vpr単独発現に比べると程度は弱いが、核の異数化やアポトーシス誘導が確認された。
本年度はVpr-AXIN相互作用の生理的意義を検討し、Wnt経路の活性化が、T細胞の活性化と同時に、VprによるG2/M期細胞周期停止とアポトーシス誘導を解除することを見いだした。
VpuのC末欠失変異体はCD4の発現抑制能を欠き、この変異体を発現させた細胞に野生型HIV-1を導入すると、CD4の発現抑制が顕著に阻害され、さらにウイルス粒子の感染性が低下した。
本年度はVpr-AXIN相互作用の生理的意義を検討し、Wnt経路の活性化が、T細胞の活性化と同時に、VprによるG2/M期細胞周期停止とアポトーシス誘導を解除することを見いだした。
VpuのC末欠失変異体はCD4の発現抑制能を欠き、この変異体を発現させた細胞に野生型HIV-1を導入すると、CD4の発現抑制が顕著に阻害され、さらにウイルス粒子の感染性が低下した。
結論
Vprによる細胞増殖性への影響の一部が、NPM機能阻害による可能性が示された。また、AXINに関しては、T細胞活性化時にVprの効果を負に制御するレギュレーターである可能性を示した。さらにVpuやNefによるCD4発現抑制が、ウイルスの感染性維持に重要であり、有望な抗ウイルス剤の標的であることが示された。
公開日・更新日
公開日
2007-03-27
更新日
-