HIV融合過程を標的とする耐性克服型新規治療薬の開発

文献情報

文献番号
200500994A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV融合過程を標的とする耐性克服型新規治療薬の開発
課題番号
H16-創薬-006
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
松岡 雅雄(京都大学ウイルス研究所感染免疫研究領域)
研究分担者(所属機関)
  • 藤井 信孝(京都大学大学院薬学研究科)
  • 千葉 卓男(秋田工業高等専門学校)
  • 大高 章(徳島大学ヘルスバイオサイエンス研究部)
  • 児玉 栄一(京都大学ウイルス研究所感染免疫研究領域)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
62,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
複数の抗HIV剤を組み合わせた多剤併用療法(HAART)は大きな成功を収めたがHAARTによってもHIVの駆逐は不可能であり耐性ウイルスの出現が治療上、大きな問題となっている。近年、融合阻害剤Fuzeon(T-20)は臨床において効果を上げているが皮下投与が必要であり患者に大きな負担がある。このため、より安価で強い活性を持つ経口投与可能な融合阻害活性を有する小分子化合物の開発は最重要課題である。本研究では融合阻害剤の開発とその耐性機構の解明を目的とした。
研究方法
1)ELISA法を利用した融合阻害剤スクリーニング系により新規に合成した小分子化合物のスクリーニングを行った。
2)融合阻害活性を有するペプチドの改良、非ペプチド化を行った。
3)融合阻害剤に対する耐性ウイルスを誘導し、その機構を解析した。
結果と考察
申請者らはC34に対する耐性ウイルスの誘導と解析を行い融合阻害剤に対する新たな耐性機序を明らかにした。ELISAを応用したHIV融合阻害化合物のスクリーニング系を確立し6個の有望な小分子化合物を同定した。千葉は小分子化合物を合成し、6剤(16年度)、2剤(17年度)が新たに細胞レベルで抗HIV効果を示すことを見出している。藤井、大高らは、gp41のC端側α-helix領域ペプチドC34を基に独自に設計したSC34およびSC34(EK)が、gp41のN端側α-helix領域の3量体構造に作用する融合阻害剤になることを見出した。SC34を低分子化することを試みたところC端側の12残基を削った22残基のSC22-2が顕著な抗HIV活性を有していることを見出した。このSCシリーズのGlu-GluとLys-Lysの繰り返しユニットに着目し、この部位のジペプチドミメティックを合成し、一連の部分的非ペプチド化化合物の抗HIV活性を評価した。その結果、いくつかの誘導体は顕著な活性を示した。
結論
今年度の研究により見出した融合阻害活性を有する小分子化合物をリードとして、より活性の強い化合物を創出していくことが可能となった。本研究で解明された融合阻害剤に対する耐性機序は今後の薬剤開発にとって有用な情報をもたらした。gp41標的型新規抗HIV剤の開発は、エイズ臨床の場での多剤耐性HIV克服型化学療法の構築に重要であり、HIV感染症のより安全なコントロールを可能にすると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2007-03-27
更新日
-