遺伝子修飾による樹状細胞の機能強化に基づいた新規癌免疫療法の開発

文献情報

文献番号
200500983A
報告書区分
総括
研究課題名
遺伝子修飾による樹状細胞の機能強化に基づいた新規癌免疫療法の開発
課題番号
H16-創薬-099
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 直貴(大阪大学大学院薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、樹状細胞(DC)への遺伝子導入効率に優れるRGDファイバーミュータントアデノウイルス(AdRGD)ベクターを駆使することによって、抗アポトーシス分子遺伝子を導入したDCの免疫学的機能を解析し、優れた免疫賦活能を有するDCワクチンの創製に関する基礎的情報の収集を図った。
研究方法
抗アポトーシス分子としてBcl-xLとその活性増強変異体Bcl-xFNKを選択し、AdRGDベクターを用いてこれらの遺伝子を導入したDCのアポトーシス抵抗性ならびに免疫学的特性をin vitro培養系で解析した。また、抗原遺伝子を共導入したDCについて主要組織適合遺伝子複合体(MHC)class I分子を介した抗原提示機能、ならびにマウスにワクチン投与した際の抗腫瘍効果、抗原特異的細胞傷害性T細胞(CTL)誘導能、およびリンパ節移行性を評価した。
結果と考察
抗アポトーシス分子遺伝子を導入したDCでは、遺伝子導入していないDCと比較して、高いアポトーシス抵抗性、同程度の抗原貪食能、およびMHC分子/共刺激分子発現レベルの上昇が認められた。また、抗原遺伝子のみを導入したDCのMHC class I分子を介した抗原提示が遺伝子導入後4日目には著減したのに対して、抗アポトーシス分子遺伝子と抗原遺伝子とを共導入したDCでは高い抗原提示レベルが少なくとも8日間は持続することが確認された。そこで、このアポトーシス抵抗性DCワクチンをマウスに皮内投与した際の腫瘍免疫誘導能を評価したところ、抗原遺伝子のみを導入したDCよりも抗原特異的CTLを効率よく誘導し、ワクチン投与1週間後に攻撃接種した腫瘍の増殖をより強力に抑制できた。さらに、アポトーシス抵抗性DCワクチンは、従来のDCワクチンと比較して、投与部位から所属リンパ節への初期到達性に優れており、かつリンパ節内における生存期間も延長されていた。したがって、DCワクチンにアポトーシス抵抗性を付与することにより生体内安定性を向上させるアプローチは、細胞医薬としてのDCワクチンの生体内利用能の改善に繋がることが示された。
結論
抗アポトーシス分子遺伝子と抗原遺伝子を効率よく導入したDCワクチンは、アジュバント機能を長期間維持できる細胞医薬として、DC癌免疫療法の有効性を大幅に増強できる可能性がある。

公開日・更新日

公開日
2006-03-22
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-02
更新日
-