薬剤排出トランスポーターの基質輸送メカニズムに関する研究

文献情報

文献番号
200500981A
報告書区分
総括
研究課題名
薬剤排出トランスポーターの基質輸送メカニズムに関する研究
課題番号
H16-創薬-097
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
田辺 公一(国立感染症研究所生物活性物質部第1室)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
真菌症治療薬の開発を目標として、病原真菌の多剤耐性に関わるATP binding cassette(ABC)タンパク質の生化学的、酵素化学的性質を明らかにする。
研究方法
(1) ABCタンパク質の発現に用いる出芽酵母株にsec6-4遺伝子変異を導入し、制限温度において分泌小胞を細胞内に蓄積するような変異株を作製する。この細胞株に病原真菌のABCタンパク質を発現させて、分泌小胞を調製する。調製された小胞を用いた薬剤排出アッセイ系を確立する。(2) Candida albicansのCdr1pとCdr2pのドメインを交換したキメラタンパク質を作製し、機能解析を行うことで、基質認識に関わるドメインを同定し、薬剤結合部位を決定する。
結果と考察
(1) Sec6pタンパク質の挙動およびsec6-4遺伝子変異について詳細に解析をすすめた。sec6-4変異を有するSY1株のSEC6遺伝子配列情報より、部位特異的変異導入と遺伝学的解析を行い、L633Pが表現型の本体であることを明らかにした。また、Sec6pもしくはSec6-4pをGFP融合タンパク質として出芽酵母に発現させて、局在を観察した。Sec6pは主に出芽根部分に局在し、温度上昇に影響を受けないが、Sec6-4pは37℃においては細胞内に蓄積するような局在を示した。この局在の変化が開口分泌における障害を引き起こしていると考えられる。(2) Cdr1pとCdr2pの各ドメインを交換したキメラタンパク質を出芽酵母において大量発現させて機能解析を行った。抗真菌薬や抗癌剤を含む種々の化合物に対する薬剤感受性試験の結果、膜貫通ドメインが基質特異性を決定していることを明らかにした。この結果は、これまでのABCタンパク質の基質認識機構の研究報告を指示するものであり、薬剤排出の動力源であるヌクレオチド結合ドメインの違いは基質認識には影響しないことを明らかにした。
結論
病原真菌の薬剤排出ポンプ、ABCタンパク質の酵素化学的解析を行うために、分泌小胞を用いた新規実験系を構築する。ABCタンパク質を含む膜タンパク質を分泌小胞に大量に発現させられる酵母株を構築できた。また、Candida albicansのCdr1pとCdr2pのキメラタンパク質を作製し、機能解析を行った。膜貫通ドメインが基質特異性を決定していることを明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2006-03-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-02
更新日
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