寄生性原虫の生育に必須な脂質成分の代謝と輸送ならびに創薬探索に関する基礎的研究

文献情報

文献番号
200500979A
報告書区分
総括
研究課題名
寄生性原虫の生育に必須な脂質成分の代謝と輸送ならびに創薬探索に関する基礎的研究
課題番号
-
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
中野 由美子(国立感染症研究所寄生動物部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
赤痢アメ-バ症は腸管内寄生原虫の赤痢アメーバによって引き起こされる大腸炎、肝膿瘍を主症状とする感染症で、現行の感染症法では5類に分類されている。現在使用されている抗赤痢アメーバ症薬剤には催奇性、耐性株の出現の報告、シストキャリアーに効きにくいなどの問題点があるため、新規薬剤を開発することが求められている。本研究では赤痢アメーバの病原因子の一つである膜穿孔ペプチドアメーバポアの活性化に重要であることが報告されていたコレステロールの必要性とその細胞内での役割を解明することに焦点を置く。
研究方法
近年完了した赤痢アメーバのゲノムデータベースより、コレステロールの合成並びに外界からの取り込みに関連する遺伝子群を探索した。また現行の純培養と実験室株を用いてコレステロール依存的な培養系を確立した。上皮細胞への障害性、ならびに赤痢アメーバのもう一つの病原因子として重要なシステインプロテアーゼ活性への効果を検討した。
結果と考察
赤痢アメーバはde novoのコレステロール合成系の遺伝子群をメバロン酸経路、非メバロン酸経路ともに欠失しており、一方で、外界からの取り込みならびに細胞内でのコレステロール結合に関与する遺伝子群を複数コードしていることを明らかにした。コレステロール結合タンパク質群には赤痢アメーバ特異的なドメインを有するものがあるため、これらがアメーバに特殊な細胞機能を担っていると考えられる。また新たに確立した培養系によってコレステロールが赤痢アメーバの生育に不可欠な因子であることを証明した。さらに主要な病原因子であるシステインプロテアーゼの活性がコレステロールによって濃度依存的に活性ならびに抑制されることを発見し、アメーバポアを含む赤痢アメーバの病原因子の活性機序においてコレステロールが重要な鍵を握っていることを明らかにした。
結論
赤痢アメーバの生育は外界からのコレステロールに大きく依存しており、細胞内の赤痢アメーバ特異的なコレステロール動態をさらに明らかにすることで、新規抗アメ-バ症薬剤開発のための基盤を提供することが可能である。

公開日・更新日

公開日
2006-03-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-02
更新日
-