吸血昆虫唾液腺生理活性物質の特性解明と創薬への応用に関する研究

文献情報

文献番号
200500977A
報告書区分
総括
研究課題名
吸血昆虫唾液腺生理活性物質の特性解明と創薬への応用に関する研究
課題番号
H16-創薬-093
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
伊澤 晴彦(国立感染症研究所 昆虫医科学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、吸血性昆虫や吸血性ダニの唾液腺に含まれ、動物の血液や血管系あるいは皮下組織に特異的に作用する新規生理活性物質を網羅的に探索し、それらの分子構造・活性特性・作用メカニズムを解明し、これら有用活性分子を新規な医薬の素材として開発・利用することを目的とする。
研究方法
病原体媒介ベクターとして重要な吸血性節足動物(蚊・サシガメ・マダニ)を研究材料とした。まず、様々な吸血生態を持つ各種吸血性節足動物の唾液腺遺伝子の大量解析を行い、遺伝子構造を指標にした唾液腺発現遺伝子の分類・整理を行い、唾液腺に含まれる生理活性分子を包括的に解析した。次に主要なものに対して組換え蛋白質を作製し、これらを用いて活性特性を調べることにより、血液・血管系に作用する新規生理活性分子を同定することを試みた。
結果と考察
それぞれの吸血昆虫・ダニから数百から数千個の唾液腺cDNAの塩基配列を決定した。これら唾液腺cDNAデータベースの解析から、各生物種の唾液腺特異的な分泌型蛋白質が複数同定された。これら遺伝子のほとんどは構造的に新規な蛋白質をコードしており、吸血時におけるそれぞれの唾液腺分子の特異で新規な生理活性が予想された。これまでの解析により、トロンビン活性阻害・カリクレイン-キニン系阻害・血小板凝集阻害など多様な新規生理活性分子が複数同定された。これら活性分子は唾液腺に蓄えられ、吸血時に唾液と共に宿主に注入され、動物体内で起こる不都合な生体反応を阻止する役割を持つと考えられた。
結論
これまで行われてきた活性を指標にした生理活性分子の精製に比べて、本研究での遺伝子大量解析手法では、少ない初期材料から効率的に多種多様な生理活性候補分子を得ることができた。また、一部生理活性のスクリーニングを行ったところ、血液・血管系に特異的に作用すると考えられる新規生理活性分子が複数同定された。今後、新規活性分子と標的分子の具体的な相互作用部位とその結合様式の特性を明らかにしていく予定である。

公開日・更新日

公開日
2006-03-22
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-02
更新日
-