腎不全の進展・増悪因子の解明と腎機能保護法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200500975A
報告書区分
総括
研究課題名
腎不全の進展・増悪因子の解明と腎機能保護法の開発に関する研究
課題番号
H16-創薬-090
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
増田 智先(京都大学医学部附属病院 薬剤部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
腎尿細管には、複数種の薬物トランスポータが局在し、効率的な解毒機構として機能する。高齢者を含めた腎機能低下患者では、薬物の腎排泄能の低下から薬剤性腎障害発症のリスクが潜在的に高い。尿細管分泌能の指標となる分子生物学的マーカーの不足から、予期せぬ副作用のために薬物使用の中止を余儀なくされる場合もある。本研究では慢性腎不全モデルラットを用いて経時的な腎病変の進展を分子レベルで明らかとし、尿細管トランスポータ群の分子的・機能的変動機構究明と腎機能保護因子の探索・特定を目的とした。
研究方法
慢性腎不全モデル動物として5/6腎摘出ラットを選択した。尿細管分節の単離は、模擬処置ラット(Sham)及び5/6腎摘出ラットの左腎を麻酔下で、コラゲナーゼ灌流後、冷却下実体顕微鏡下で尿細管分節の形態的特徴に着目し単離した。同様に抗腫瘍薬シスプラチン腎症モデルラットも用いた。遺伝子発現解析は、リアルタイムPCR法やDNAチップを用いた遺伝子発現解析を試みた。動物実験については、京都大学大学院医学研究科・医学部動物実験委員会に動物実験計画書を提出し、委員会による審査・承認の上で実施した。
結果と考察
腎不全進展の小腸への影響について調べた結果、殆どの遺伝子についてはSham群と同程度の発現量を示したが、39種類において2倍以上有意な発現上昇を、151種類で0.5倍以下の有意な発現低下を認め、遠隔臓器である腎臓の病変進展が小腸の遺伝子発現に影響を与えることが明らかとなった。Shamラット、5/6腎摘出1、2、4、8週間のラット残存腎由来近位尿細管を試料としてGene Chip解析を行った結果、5/6腎摘出24週目において100倍以上の発現上昇が95種、一方、1/100以下に低下するものとして82種の遺伝子が抽出された。シスプラチンによる腎毒性起点因子として有機カチオントランスポータに焦点を当てた。その結果、シスプラチンは近位尿細管特異的に発現するラット有機カチオントランスポータrOCT2(Slc22a2)に強く輸送されること、肝臓型であるrOCT1(Slc22a1)による輸送は弱いことを見出した。また、低用量のシスプラチン背部皮下投与は、BUN、クレアチニン、尿中アルブミンなどの糸球体機能マーカーには影響せず、尿中NAGの顕著な上昇を引き起こし、その毒性は近位尿細管特異的に発症することが示唆された。
結論
5/6腎摘出ラットをモデル動物として、尿細管上皮細胞特異的な遺伝子発現変動を捉えることができた。また、シスプラチンを輸送する腎トランスポータとしてrOCT2を特定することができた。

公開日・更新日

公開日
2006-04-05
更新日
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研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-02
更新日
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