ヒト組織提供医療機関としてのバンクシステム効率化と研究資源高度化に関する研究

文献情報

文献番号
200500972A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト組織提供医療機関としてのバンクシステム効率化と研究資源高度化に関する研究
課題番号
H16-創薬-087
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
小林 真一(聖マリアンナ医科大学薬理学)
研究分担者(所属機関)
  • 小林 英司(自治医科大学分子病態治療研究センター臓器置換研究部)
  • 熊井 俊夫(聖マリアンナ医科大学薬理学)
  • 浅原 利正(広島大学大学院先進医療開発科学講座外科学)
  • 後藤 雄一(国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第二部)
  • 西野 一三(国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第一部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
14,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、日本人のヒト組織を適切にかつ十分量採取・保存・管理し、ヒューマンサイエンス研究資源バンク(HSRRB)へ提供するための効率的なシステム構築の検討を行う。また神経・筋疾患の筋芽細胞および生検筋標本を研究資源として用い、創薬の有効性・安全性についての研究を推進させることを目的としている。さらにバンク事業に関する意識調査を企画・実施する。
研究方法
本研究は各施設とも「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」に則している。昨年度試行したシステムについて見直しを行い、意識調査を行った。初代肝細胞を単離した。肝細胞をHSRRBへ提供する準備を行った。各施設でのICの現状を討議、検討した。
新たに凍結保存される検体と、凍結保存された細胞を再融解した検体の筋芽細胞の割合を検討した。HSRRBへ提供するため、生検筋レポジトリーの総検体数および年間検体数を明らかにした。
結果と考察
本年度は、聖マリアンナ医科大学病院で同意の得られた肝組織15検体をHSRRBに提供した。小腸を含めると現在までに75検体をHSRRBに提供している。病理医にもバンク事業の意義について理解が浸透した。この事はHSRRBへのヒト組織提供量にも顕著な効果をもたらしている。ランフォード培地群でCYP3A4蛋白発現が維持された。スタッフおよび組織を提供していただいた患者ともにバンク事業の必要性を認識していた。広島大学病院で専任のCRCを配置し、CRCによるIC取得を開始した。
新たに85検体の筋芽細胞の樹立を行った(総数708検体)。筋芽細胞の割合が少なく、線維芽細胞の割合を減少させることが必要である。2005年1年間での凍結筋検体増加数は、505検体(凍結筋総検体数9300検体)であった。本システムは早急な事業化と人員の確保が必要である。今後HSRRBへの提供を推進していきたい。
結論
1)患者15例の切除肝をHSRRBへ提供した。2) 肝細胞初代培養を施行した。3) ヒト組織研究利用システムが整い、またHSRRBへ肝細胞の提供を開始する段階に至った。4)ヒト組織の研究資源化における各協力施設の現状と今後の対応を検討した。5)筋芽細胞を樹立させることで充実したリソースとなる。6)生検筋デポジトリーの整備と効率的活用がなされた。7)これら筋芽細胞、生検筋デポジトリーのHSRRBへの提供を検討する。

公開日・更新日

公開日
2006-04-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-02
更新日
-

文献情報

文献番号
200500972B
報告書区分
総合
研究課題名
ヒト組織提供医療機関としてのバンクシステム効率化と研究資源高度化に関する研究
課題番号
H16-創薬-087
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
小林 真一(聖マリアンナ医科大学薬理学)
研究分担者(所属機関)
  • 小林 英司(自治医科大学分子病態治療研究センター臓器置換研究部)
  • 熊井 俊夫(聖マリアンナ医科大学薬理学)
  • 浅原 利正(広島大学大学院先進医療開発科学講座外科学(第二外科))
  • 後藤 雄一(国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第二部)
  • 西野 一三(国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第一部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
薬物の反応性には動物種差と人種差があり、医薬品の開発に日本人の組織を利用した研究が重要である。本研究は、日本人の組織を適切かつ十分量採取し、ヒューマンサイエンス研究資源バンク(HSRRB)へ提供するためのシステム構築を目的とした。また神経・筋疾患の筋芽細胞および生検筋標本を研究資源とし、質の確保をはかるとともに、創薬における有効性・安全性の研究を推進させることを目的とした。
研究方法
本研究は「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」に則している。1)HSRRBへヒト組織を提供するシステム構築:①切除肝組織から有効に肝組織を採取するシステム及びインフォームドコンセント(IC)取得におけるコーディーネーター(CRC)のあり方について検討した。②初代肝細胞の培養条件を検討し、他施設の肝組織との比較を行った。2)研究資源高度化の検討:①筋芽細胞を樹立し、HSRRBへ提供する体制を検討する。②HSRRBへ提供するために生検筋レポジトリーの現状を明らかにした。3)本研究を促進するためのシンポジウムと意識調査を行った。
結果と考察
1)2年間で肝組織32検体がHSRRBに提供された。他に小腸を含めると現在までに75検体がHSRRBに提供された。2)肝組織採取システムの効率化がはかられ、HSRRBへのヒト組織提供にも顕著な効果をもたらしている。3) CYP3A4蛋白発現を維持した初代培養法が確立できた。4)担癌患者の非癌部肝組織でp53蛋白やMDR-1 mRNAが発現していた。5)ICにおけるCRCのあり方について現状と問題点について検討した。6)肝細胞の提供を開始する段階に至った。7)166検体の筋芽細胞の樹立を行った(総数で708検体)。8)凍結筋検体増加数は912検体であった(総数で9300検体)。9) 第25回「臨床薬理シンポジウム」と第78回日本薬理学会でシンポジウムを実施した。またヒト組織バンク事業についてアンケート調査を実施したところバンクの必要性を認識していた。
結論
1)聖マリアンナ医科大学病院で手術を受けた患者75例の組織をHSRRBへ提供した。2)肝細胞初代培養を施行した。2)切除肝にはp53やMDR-1 mRNAが発現していた。3)HSRRBへ肝細胞の提供を開始する段階に至った。4)コメディカルスタッフとIC取得について検討した。5)筋芽細胞を樹立させた。6)生検筋デポジトリーの整備と効率的活用がなされた。

公開日・更新日

公開日
2006-04-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500972C

成果

専門的・学術的観点からの成果
担癌患者由来の肝組織では非癌部分もp53蛋白が多く発現しており、担癌患者より得られた肝組織での研究は癌関連蛋白の発現に注意する必要がある。肝初代培養細胞については薬物代謝酵素活性を維持した長期培養を行い、薬物代謝酵素CYP3A4活性の低下を克服し、CYP3A4活性を5日間保持した細胞を得ることが出来た。また神経・筋疾患の患者から提供された筋芽細胞は総数で708検体、凍結筋検体増加数は9300検体保存された。
臨床的観点からの成果
手術により摘出した日本人の組織の一部を適切にかつ十分量研究者にヒト試料として提供するため保存・管理し、ヒューマンサイエンスヒト組織公共バンク(HSRRB)へ提供するための合理的システムを構築し、また臨床試験コーディネーター(CRC)を導入したインフォームドコンセント(IC)のあり方、病理医も含めた組織の採取効率化を検討して全国の各医療機関でも構築が可能な組織や細胞の質を確保したヒト組織提供機関としてのモデルシステムの基盤の整備に着手することができた。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
平成16年第25回日本学術会議薬理学研連「臨床薬理シンポジウム」で「ヒト組織の研究利用体制の構築と研究応用」というメインテーマで熊井が「ヒト組織提供機関の現状」を発表した。また、第4回HSRRB技術講習会で分担研究者の西野が「ヒト生検筋組織の研究資源化とその利用」を講演した。平成17年第78回日本薬理学会で「ヒト組織の研究応用と基盤整備」というシンポジウムを企画・実施し、分担研究者全員がそれぞれ各自のテーマを発表した。

発表件数

原著論文(和文)
2件
中谷祥子、小林真一他、臨床薬理. 熊井俊夫、小林真一他、聖マリアンナ医科大学雑誌.
原著論文(英文等)
11件
Asahara T, et al, Journal of Gastroenterology. Nishino I,et al, Neurology
その他論文(和文)
3件
中谷祥子、小林真一、日本薬理学会雑誌. 若林正,小林英司他、再生医療
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
9件
熊井俊夫、小林真一他、第26回日本臨床薬理学会年会. 小林英司他、日本生命倫理学会.
学会発表(国際学会等)
3件
Nishino I, Goto Y,et al,The 1st Congress of Asian Society for Pediatric Research
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
8件
浅原利正、第11回北海道肝胆膵セミナー

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
中谷祥子、櫻井史穂子、小林真一 他
ヒト組織を研究利用するための課題:公共ヒト組織バンクへ組織提供する医療機関としての取り組み
臨床薬理 , 36 (6) , 297-303  (2005)
原著論文2
中谷祥子、小林真一
ヒト組織を研究利用するための基盤整備
日本薬理学雑誌 , 126 , 391-398  (2005)
原著論文3
Noguchi S, Fujita M, Nishino I et al.
Gene expression analyses in  X-linked myotubular myopathy.
Neurology , 65 , 732-737  (2005)
原著論文4
Yan C, Tanaka M, Nishino I et al.
A New Congenital form of X-linked autophagic vacuolar myopathy.
Neurology , 65 , 1132-1134  (2005)
原著論文5
Ibarra C, Wu S, Nishino I et al.
Malignant hyperthermia in Japan: mutation screening of the entire ryanodine receptor type 1 gene coding region by direct sequencing
Anesthesiology  (2006)
原著論文6
Wu S, Ibarra C, Nishino I et al.
Central core disease is due to RYR1 mutations in more than 90% of patients
Brain  (2006)
原著論文7
Yohei Kirino, Yu-ichi Goto, Yolanda Campos et al.
Specific correlation between the wobble modification deficiency in mutant tRNAs and the clinical features of a human mitochondrial disease
Proceeding of National Academy of Science , 102 (20) , 7127-7132  (2005)
原著論文8
若林正、絵野沢伸、小林英司
法学者と共に考えるヒト由来研究試料に関するインフォームド・コンセント
日本再生医療学会雑誌 , 4 (2) , 296-306  (2005)
原著論文9
丸山英二、絵野沢伸、小林英二 他
インフォームド・コンセント及び、代諾をめぐる諸問題と政府指針
日本臓器保存生物医学会雑誌 , 12 (1) , 65-72  (2005)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-