文献情報
文献番号
200500971A
報告書区分
総括
研究課題名
インフルエンザ治療型単鎖抗体の開発に関する研究
課題番号
H16-創薬-085
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
浅沼 秀樹(東海大学 工学部・生命化学科)
研究分担者(所属機関)
- 山口 陽子(東海大学 工学部・生命化学科)
- 橋口 一弘(北里研究所病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
3,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
インフルエンザは表面抗原が変化するため、現行のワクチンでは防御が難しい。さらに近年、トリ由来の強毒株(H5型)のヒトへの致死的感染も確認されている。そのため変異株が流行した場合には症状の軽減、流行地域の縮小のために感染者の早期診断および治療が必要となる。本研究では昨年度より遺伝子技術を応用したファージディスプレイ法を用い、様々なインフルエンザウイルス抗原と結合性を有するファージ提示型単鎖抗体(scFv)ライブラリーの作製、およびscFvを用いた治療法の開発を目標としている。
研究方法
・ファージディスプレイ法を用いた抗PR8-scFvおよびFabの作製
scFvはVLおよびVHを、FabはそれにCH1およびCL遺伝子をベクターに組み込み、トランスフォーム後、ヘルパーファージで発現させる。それをインフルエンザ抗原でパニングを行った。
・交叉防御効果判定のための実験系の確立
ヒトインフルエンザウイルス株をマウスで馴化した。初期株をマウスに免疫後、馴化株を感染させ、完全な感染阻止を示した場合、抗原性の変化はないとした。この馴化株を用い、ワクチン接種マウスに感染させる実験系を構築した。
scFvはVLおよびVHを、FabはそれにCH1およびCL遺伝子をベクターに組み込み、トランスフォーム後、ヘルパーファージで発現させる。それをインフルエンザ抗原でパニングを行った。
・交叉防御効果判定のための実験系の確立
ヒトインフルエンザウイルス株をマウスで馴化した。初期株をマウスに免疫後、馴化株を感染させ、完全な感染阻止を示した場合、抗原性の変化はないとした。この馴化株を用い、ワクチン接種マウスに感染させる実験系を構築した。
結果と考察
ヒトscFvをインフルエンザ抗原でパニングを繰り返し行なった結果、陽性クローンが消失した。また、抗PR8ハイブリドーマより作製したscFvは完全な抗体と比較し、著しく結合力が低下した。このことから、scFvにすることにより、抗原との結合力が著しく低下することが示唆される。また、抗PR8-Fabも完全な抗体と比較すると結合力は低いが、部分的に抗ウイルス作用をあり、また変異株に対する交叉反応性も有していた。このことから、CH1およびCL分子を付加させることにより、部分的に結合力が増強されることが示唆された。
本年度は新たにヒトインフルエンザ2株の馴化に成功した。またその中でA/Pについて交叉防御効果の検討を行なったところ、PR8株とA/Y株の中間的な抗原性を発現していることが明らかとなった。またこの株を用いて交叉防御効果の判定を行なうことが可能であることも明らかとなった。
本年度は新たにヒトインフルエンザ2株の馴化に成功した。またその中でA/Pについて交叉防御効果の検討を行なったところ、PR8株とA/Y株の中間的な抗原性を発現していることが明らかとなった。またこの株を用いて交叉防御効果の判定を行なうことが可能であることも明らかとなった。
結論
scFvについては抗原との結合力の低下が著しく、陽性クローンのスクリーニングには大量のクローンを用いる必要がある。しかしFabにすることにより結合力が増強されるのであれば、こちらを使用することも視野に入れる必要がある。一方、ヒトインフルエンザ株の馴化および評価実験系の構築はできたため、本実験系を用いて今後scFvおよびFabの評価を行なう。
公開日・更新日
公開日
2006-05-15
更新日
-