ケミカルゲノミクスによる難治固形癌に有効な主要抗癌剤の薬効貢献分子の探索と発見された分子を標的とする次世代抗癌剤の開発

文献情報

文献番号
200500967A
報告書区分
総括
研究課題名
ケミカルゲノミクスによる難治固形癌に有効な主要抗癌剤の薬効貢献分子の探索と発見された分子を標的とする次世代抗癌剤の開発
課題番号
H16-創薬-079
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
西尾 和人(国立がんセンター研究所 薬効試験部)
研究分担者(所属機関)
  • 水上 民夫(長浜バイオ大学 バイオサイエンス学部)
  • 関島 勝((株)三菱化学安全科学研究所鹿島研究所 先端技術研究部)
  • 山田 康秀(国立がんセンター中央病院 第一領域外来部)
  • 大川原 正(熊本大学大学院 医学薬学研究部)
  • 福西 賢晃(住友ベークライト(株) 神戸基礎研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
16,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ケミカルゲノミクスの手法を用いてTS-1, 5FU等の主要抗癌剤の新規薬効貢献因子の探索、同定を行う。また臨床試験において、集積された臨床検体の遺伝子発現解析を実施し、5FU感受性因子および胃癌の治療標的遺伝子の探索、同定を行い治療標的へ応用する。
研究方法
(1)化合物ライブラリーの合成
リンカーを導入した誘導体化合物の合成を行った。
(2)抗癌剤固定化カラムによる結合蛋白質の分離と同定
AffiGel-10を用い5FU関連化合物を固定化し、各種がん細胞由来の結合蛋白質を溶出し、銀染色、LC-MSによる結合蛋白質の同定を行った。
(3)新規固定化担体の開発
PEG(Polyethylene glycol)を基材とした担体に無吸着性のポリマーをコートし新規担体を作製した。担体はmicro-BCA法による非特異吸着性、ER-alpha-Tamoxifenの吊り上げ系により評価した。
(4)遺伝子発現解析による5FU感受性因子の同定
5FUを用いた化学療法の適応となる進行胃癌症例を対象とし、マイクロアレイ(GeneChip)を用いて化学療法治療前後における臨床検体の発現解析を評価、解析した。また、治療前の胃癌部・胃非癌部の比較から癌細胞特異的発現を示す遺伝子を抽出した。
結果と考察
(1)化合物ライブラリーの合成
リンカーを導入した10種の抗がん剤誘導体の合成を実施した。
(2)抗癌剤固定化カラムによる結合蛋白質の分離と同定
5-FUの代謝活性体dUMP,FdUMPに特異的に結合する約60kDaの蛋白質を分離し、LC-MSによる同定を行った。
(3)新規固定化担体の開発
PEG系ポリマーのコートにより非特異吸着の減少した担体を得た。
(4)遺伝子発現解析による5FU感受性因子の同定
3月現在、計172検体の測定を終了した。胃正常部と癌部の発現プロファイルの比較から癌で有意に発現する約200の遺伝子を同定した。その中の新規遺伝子AについてsiRNAや抗体作製等による生物学的機能および腫瘍マーカーとしての可能性を検討した。幹細胞マーカーとしての報告がある遺伝子Bは胃癌検体でも発現亢進が確認された。胃癌関連のリガンド刺激により、TGF-betaと遺伝子Bとの関連が明らかになり、治療応用への研究も進んでいる。
結論
5-FU代謝活性体に対する新規薬効貢献分子を分離した。また、臨床検体の集積、測定を終了した。発現解析から癌細胞特異的な新規遺伝子Aを特定し、治療応用への可能性を検討中である。既知の幹細胞マーカー「遺伝子B」は胃癌でも発現が見られTGF-betaシグナル制御下にあることを初めて明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2006-04-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-02
更新日
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