創薬基盤としての公共的ヒト組織バンクを中心とした肝組織・細胞の研究利用システムの構築

文献情報

文献番号
200500965A
報告書区分
総括
研究課題名
創薬基盤としての公共的ヒト組織バンクを中心とした肝組織・細胞の研究利用システムの構築
課題番号
H16-創薬-075
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
絵野沢 伸(国立成育医療センター研究所移植・外科研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 安原 一(昭和大学医学部第二薬理学)
  • 青木 達哉(東京医科大学外科学第三講座)
  • 鈴木 聡(特定非営利活動法人エイチ・エー・ビー研究機構)
  • 片岡 一則(東京大学大学院工学系研究科マテリアル工学)
  • 大塚 英典(独立行政法人物質・材料研究機構人工臓器材料)
  • 小林 英司(自治医科大学臓器置換研究部)
  • 竹澤 俊明(独立行政法人農業生物資源研究所生体機能研究グループ)
  • 落谷 孝広(国立がんセンター研究所がん転移研究室)
  • 大和田 哲男(株式会社アビー)
  • 小林 弘幸(協和発酵工業株式会社)
  • 吉村 勉(エーザイ株式会社)
  • 山田 泰弘(田辺製薬株式会社)
  • 澤田 雅弘(株式会社トランスパレント)
  • 榎本 康弘(日本農産工業株式会社)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
公共的ヒト組織バンクを中心に据え、創薬に向けた肝組織・細胞の研究利用システムの構築を、臨床現場での組織提供、バンクにおける保存、創薬用培養デバイスまで総合的に研究する。
研究方法
手術摘出肝のバンク提供システム構築では、院内スタッフの協力体制、インフォームド・コンセントの在り方、検体保存や処理法について検討した。組織・細胞の保存についてラット・ヒト肝を用い、保存液や凍結法を検討した。培養デバイスでは、細胞アレイとゲル薄膜の条件検討と改良を行った。幹細胞からの肝細胞様細胞分化ソースとしてヒト脂肪組織間葉系細胞を用いた。社会調査として市民の意識調査を行った。米国のヒト肝細胞研究利用状況の調査を行った。
結果と考察
従来より提唱している二段階インフォームド・コンセントは、医療・研究者側の視点では順調に機能している。しかしながら、説明者が医師である以上、患者の従属関係が必ずしも改善できない可能性が指摘された。保存ではCelsior液が保存に優れ、CAS凍結の有効性が確認された。凍結保存液に長鎖オリゴ糖のマルトヘプタオースを添加するとトレハロースに匹敵あるいは優る生細胞率および培養後生存率の改善が見られた。解凍後にI型コラーゲン表面で培養すると、さらに生存率が上昇した。新規培養基材のI型コラーゲン硝子化ゲル薄膜を用いたサンドイッチ培養は肝細胞機能維持に良好な結果を示した。細胞アレイの表面分子の改良によって、スフェロイド形態が良好に保たれるようになった。細胞アレイを用いた凍結ヒト肝細胞の初代培養実験では、多くのCYP分子種において、単層培養より高い活性が長期間維持されることがわかった。ヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞がHIFC分化誘導システムによって肝細胞様に分化誘導されることがわかった。市民アンケートでは多くの人が、移植不適合臓器の研究転用に関して賛成の考えを持っていた。
結論
提供医療機関においてコーディネーター的立場の者が必要と考えられた。肝細胞・肝組織の長期保存法の確立では、解凍細胞の培養時に細胞マトリックスや他細胞を組み合わせることによって、細胞生存率の上昇が見られたことから、研究分野における凍結肝細胞の流通は、総合的体系化によって、さらに改良可能と考えられた。外科手術の低侵襲化に伴い、摘出検体は小片化している。欧米で行われている移植不適合臓器の研究利用をわが国でも将来的に導入すべきと考える。

公開日・更新日

公開日
2006-05-15
更新日
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研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-02
更新日
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