臓器移植患者の小腸及び肝組織を用いた遺伝子機能解析に基づくテーラーメイド免疫抑制療法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
200500963A
報告書区分
総括
研究課題名
臓器移植患者の小腸及び肝組織を用いた遺伝子機能解析に基づくテーラーメイド免疫抑制療法の確立に関する研究
課題番号
H16-創薬-072
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
乾 賢一(京都大学医学部附属病院 薬剤部)
研究分担者(所属機関)
  • 高田泰次(京都大学大学院 医学研究科 移植免疫医学)
  • 田上昭人(国立成育医療センター研究所 薬剤治療研究部)
  • 加賀山彰(アステラス製薬株式会社 創薬推進研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
40,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肝移植後の術後管理には、カルシニューリン阻害薬タクロリムスやシクロスポリンを中心に小用量のステロイド薬の併用を基本としているが、有用な分子生物学的マーカーの不足から投薬量の設定は困難であった。本研究では、生体肝移植術時に切除される小腸組織と移植肝生検組織の一部を用いて、P-糖タンパク質やCYP3A遺伝子群の発現レベルの数値定量化と遺伝子多型情報などを利用し、患者一人ひとりの術後経過に従ったタクロリムスの投与設計法の確立を目的とする。
研究方法
使用するヒト組織検体は、生体肝移植術中に切除される小腸組織の一部と、病理検査用に採取される移植肝生検組織の一部とした。RNA、ゲノムDNA の抽出を行い、小腸及び肝臓におけるMDR1、CYP3A4、5、7、43のmRNA発現レベルを測定した。本研究計画は、京都大学医学研究科・医学部医の倫理委員会の審査を受け、研究科長より承認を得ている。なお、患者個々のインフォームド・コンセントについては、肝臓移植前における説明と同時に担当医から十分な説明(約1時間程度)を行い、後日同意書(同意または拒否・撤回)をコーディネーターに提出するというシステムで実施している。
結果と考察
術時小腸MDR1 mRNAレベルは、タクロリムス初期用量設定のための有用なバイオマーカーであること、さらに、術時の移植肝/患者体重比(GRWR)が初期用量の指標となることを確認した。次に、CYP3A5の役割について調べた結果、移植肝及び患者小腸何れにもCYP3A5*1が検出された患者群では、移植肝及び患者小腸の両方にCYP3A5が欠損する群(*3/*3)と比較して、術後35日間を通してタクロリムスの用量が高いこと、術後経過に従った用量漸増の傾きの高いことが判明し、術前検査におけるドナー及び患者のCYP3A5 SNP解析は、肝移植後のタクロリムス体内動態の個人差を説明するための分子情報であることが示された。さらに、生体肝移植直後の患者に対しては、一般的な1日2回投与よりも1日1回投与の方がトラフ濃度の無意味な上昇を防ぐことができ、良好な臨床経過となる傾向が認められた。従って、タクロリムスを中心とした免疫抑制療法では安定しない症例に対しては、1日1回のシクロスポリン投与という選択肢を提供することができた。
結論
肝臓移植時に得られるヒト組織を用いた遺伝子情報の術後管理への有用性について、明確にすることが出来た。さらに、遺伝子多型情報の有用性、PBMCを用いた薬効評価による個々の免疫抑制剤の特徴について詳細に理解することが出来た。

公開日・更新日

公開日
2006-04-12
更新日
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研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-02
更新日
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